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人の旅がうらやましいときは

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

最近ここに書くのをすっかり忘れていたような気がするが、「メモリークエスト2」の方も少しずつ進めている。
一昨日は候補者2名にお会いし、詳しい話をうかがった。

依頼の内容はともかく(あとでウェブにアップされます)、私が惹かれたのはお二人ともすごい旅好きで、
いろんなところを旅したり住んだりしていること。

最初の依頼者Nさんはドイツに留学後、ご主人の仕事でモンゴル、中国(北京)、フィリピンに3年ずつ住んでいるという。
「モンゴルに行ったのは1994年。自由化されて間もない頃で何もかもがめちゃくちゃだったけど、人は親切だし、自然環境はいいしで、
子供を育てるのには最高だった」なんて話を心底羨ましくなった。

次の依頼者Oさんは大学時代から旅好きで、2年前も仕事を辞めて、世界一周の旅に出たという。
2年間行く予定が途中アフリカでマラリアと肝炎を併発したため、8ヶ月で帰国してしまったが、今はなぜかサッカーが大好きになり、
サッカーイベント関係の仕事に就き、2014年のブラジルW杯に向けて「下見」に行く予定だとか、まあ、もう好きなことだけやって生きているという風情である。これまた羨ましい。

私があまりに「羨ましい」とか「いいなあ」なんてことばかり言っているので、依頼者の方々も同席した編集者も呆れ顔だった。
端から見れば、私は旅ばかりしているように見えるかもしれないし、好きなことだけをやっているようにも見えるだろう。

しかし私自身では満足から程遠い。
海外に長期で住みたいし、仕事と無関係で自由気ままに旅をしたい。
しかも、今はなぜか妻のほうがミャンマーに3週間一人旅に出かけてしまった。
「田舎を自由気ままに旅する」という。
それはまさに今私がやりたいことなのだが。

私は犬の面倒を見なければならないので海外へ行くのは無理。
しかたないので犬を連れて国内を2週間ばかりぶらぶらすることにした。
原稿を書かねばならないので、パソコンと資料をもって(しかも犬も連れて)移動するという情けなさだが、
人の旅を羨んでいるよりはマシだろう。
予定ではまず福島へ行き、それから南三陸や気仙沼に足を伸ばし、そのあと浜松などを経由して四万十に行くぐらいで我慢しようと思っているが、
実際にはどうなることかわからない。

そうそう、「謎の独立国家ソマリランド」更新しました。
第2章その2は「天変地異に要注意」です。

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Comment

  1. 匿名 より:

    『・・・浜松などを経由して・・・』に反応してしまった、浜松育ち無職44歳の女性です。
    先日、日本橋丸善レジ前の平積みで『辺境中毒!』を買い、心眼がハートマークになってしまいました。解毒のすすみつつあったラオス帰りの頭に、再び毒が回るのを痛感しております。
    食らわば皿まで~の心境で、高野さんの本をネットで14冊注文してしまいました。ご著書が届くのを楽しみにしています。
    ところで「浜松でおいしいウナギを食べよう」と計画中でしたら、お止しになったほうがよいですよ。毎年白焼きを送ってくれる実家の父から「今年はモノが良くないから送らない」と連絡がありました。老婆心まで、ご報告いたします。

    • 高野 秀行 より:

      14冊も拙著をお買いいただいたのですか。ありがとうございます。嬉しい反面、初っ端でがっかりされたらどうしよう…という気持ちにもなります。あと13冊もあるわけだし。

      犬連れなので、そもそもレストランや食堂には入れないですし、高級なウナギには縁がありません。ちょうどよかったというべきでしょうか。

      • 浜マツコ より:

        マドさん連れだとキャンプ・自炊なのでしょうか?
        ごはんのお供には、舞阪町の「しらす釜揚げ」がイチオシです。
        炊きたてホカホカごはんに、ごはんと同量(←ココがポイント!)の「しらす」をふわりとのせてハフハフかき込みます。
        しょうゆも塩も不要です。
        『メモリークエスト』第3話の「ツナ飯」ほどの腹応えはないかもしれませんが。
        浜松の海っぺりで、おかずに悩んだ際にお試しください。

  2. 西森 より:

    最近、高野さんの本にはまりまくりです。今も手元にミャンマーの柳生一族ですd(^_^o)
    ぜひ、高知へ起こしください。仁淀川町というなかなかにいい田舎あります。Blogに書いてます。

    • 高野 秀行 より:

      どうもありがとうございます。仁淀川町、ずいぶん山深いところなんですね。ニホンカワウソ絶滅でニュースになってしまいましたが…
      今回は時間的に無理なので、次回のお楽しみということで。

      • 西森 より:

        ほんと、いつも楽しく読ませてもらっています~。
        ブータンから始まり、アヘン、ムベンベ、柳生一族、ワセダと読み進んでいるところです!カワウソの話題は同じ高知県内の話題ですが仁淀川町のことではないですが、日本最大のニホンオオオカミの頭骨が今も保存されているのが仁淀川町です。土佐の辺境と言えるかも!?平家伝説、勝頼落人伝説など山深い地に残っている町で、もちろん機会があればご案内しま~す。

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    • あ、そうだったんですね。名監督の知られざる一面を描いているし、著者ご本人の青春記風でもあり、『嫌われた監督』を彷彿させました。落合夫人とサッチー夫人もよく似てるし(笑)いや、面白かったです。 https://t.co/66kmDl74FN ReplyRetweetFavorite
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    • 単行本を一冊書くのはエベレスト登山にも似ている。頂上に近づけば近づくほど一歩進むのが辛くなる。でもようやく『イラク水滸伝』本文の最終稿を書き終えた。あとはエピローグと参考文献、写真のセレクト、地図の作成、ゲラ校正、専門家への確認……頂上までまだけっこうあるな…。 ReplyRetweetFavorite
    • 文庫1位が久生十蘭!そそられる!! https://t.co/OWK4Bvakwo ReplyRetweetFavorite
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    • RT : 崩れたとき生きるすべがなくなる。はずれたものを生息する余地をとっておくこと。中心と周縁。クリエイティビティはいかにして生まれるのかについては、秩序にあわない変なものを見つけ、探しにいく勇気、変なものをみつける臭覚のことなど。理系文系の枠を超… ReplyRetweetFavorite
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