*

米軍による驚くべき支援

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

28日(月)調布市被災者支援ボランティアセンターの手配で、被災地の特養老人ホームに物資を届けるという仕事があったので、参加した。
20トントラック1台、小型トレーラー1台、ハイエース1台に荷物を積み、私たちボランティアはマイクロバスでついていく。
東北道は快適で、暖かい日差しで車内はぽかぽかし、なんだか遠足に行くよう。
ボランティアの参加者は、平日だけあって、学生か変わり者のどちらかという感じ。
全部で18人しかいないのに、その中に「クリケットを日本で最初に始め、今は指導と普及活動をしている」という人、
「ケイリンの指導と普及に努めている」という人、
「知的障害者のためのスペシャル・オリンピックの陸上と競泳の指導と普及活動をしている」という人がいて、
まるでマイナー・スポーツの指導と普及のために宮城の被災地へ行くようだった。
サービスエリアは水も食料も潤沢で、まるで何事もなかったかのようだが、
たまに新幹線と交わるところでは、新幹線の電柱が何本も傾いているのが見え、
新幹線の復旧は遠いのが見てとれた。
東北道を下りると、ガソリンスタンドに車がものすごい列をつくっている。
3キロか4キロは並んでいたのではないか。
途中のサービスエリアでは燃料とおぼしきドラム缶を大量に積んだ自衛隊の車両を見かけたが、なかなか全体には行き渡らないようだ。
目的地は宮城県の黒川郡。
行ってみればこぎれいなホームで、被害もごく軽かったらしい。
そこに荷物を下ろし、あとは小さい車で激甚な被害を受けた他のホームに運ぶという。
結局、本当の「被災地」には行けずじまいで残念だったが、
しかたない。
代わりにといったらなんだが、災害支援の経験が深い調布市議会議長(一緒に荷物を運んでいた。調布はすごい!)や防衛省の職員(ボランティア参加者)などの話がなかなか勉強になった。
防衛省職員の人によれば、米軍と自衛隊はともに空から食料の配給を行っているが、
やり方は全然ちがうと言う。
「自衛隊は前もって『これから行きますよ』とアナウンスをして、ちゃんとヘリで下まで下りて、直接住民に「はい」と手渡す。
でも米軍は現地にいきなり行って、ヘリの爆風で住民が逃げたところに、上からどさっと地面に落として帰って行く。
『その方が効率がいい』って彼らは言うんです」
なるほど、さすがアメリカン。ドライで合理主義だ。
しかし、こんな方法をアジアの戦地でとったら、決して好感は持たれないだろう。
さらに驚いたのは米軍の配給食料に「真空パックの巨大な生肉」があったという話。
(これはその職員の人の独自情報か一般に出回っている話か知らない)
被災地には十分な燃料がないし、仮に燃料があったとしても、調理の仕方もわからないし、道具もない。
被災者の人たちは「こんなもん、どうしろっていうんだ?」と戸惑ったらしい。
アメリカ人は現地の人のことを何も考えていないと誰かが批判したら、
「そんなことはない。われわれも日本人のことをちゃんと考慮して、肉と一緒に醤油を投下している」と答えたとか。
どうもアメリカ人は、日本人は醤油さえあれば万事OKと思っているらしい。
前日のタイ人による仏像支援もそうだが、支援にもお国柄はちゃんと出るようで、
暇があれば是非研究したいところである。

関連記事

no image

今までいちばんビビッたのは…?

上智対談講義第3回目はミャンマーで辺境専門旅行会社を経営する金澤聖太師範。 (極真空手の猛者なので私

記事を読む

R-40本屋さん大賞ノンフィクション・エッセイ部門で1位(改訂版)

ワンテンポもツーテンポも遅れてしまったが、一昨日発売の「週刊文春」誌上で発表された 「R-40本屋

記事を読む

no image

羨ましい病

ニューギニア、アマゾン、ナイル、モンゴル、タイ、カンボジア…と世界中の辺境に単身で飛び回って、巨大

記事を読む

no image

『猛き箱舟』をうっかり再読

いろんな仕事がたまっているのに、船戸与一の大作『猛き箱舟』を読んでしまった。 西サハラを舞台にして

記事を読む

no image

ムベンベは捕獲されていた!!

『怪獣記』刊行に先駆けて、「サンデー毎日」と、 取次ぎ会社・日販のPR誌「新刊展望」のインタビューを

記事を読む

no image

ミャンマーがまた…

ミャンマーがまた大変なことになっているようだ。 というか、自然災害でも戦争でも こんなに被害が出たの

記事を読む

no image

「移民の宴」ソマリ篇?

長生きはするものである。 かつてレトルトカレーを「めんどくさい」という理由で温めずに食っていた

記事を読む

no image

「メモリークエスト」第2部開始!

前代未聞の珍企画「メモリークエスト」がいよいよ第2部に突入した。 一年間で集まった26の依頼のうち、

記事を読む

no image

前回はブチ切れて、すみません。

よくよく見たら、前回の記事はなぜか途中でブチ切れているではないか。 石川さんと読者の方、すみません

記事を読む

no image

顔写真なしでよかった

『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)の 全作業が終了した。 今回、講談社文庫に初めて入る

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑