*

うなドン

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

日曜日、和光大学で教えているロバート・リケットさんという人と下北沢で会う。
リケットさんは南三陸のフィリピン女性のことが知りたかったようで、
私のほうは欧米系の在日外国人情報がほしかった。
互いに情報交換していたのだが、興味の対象やアプローチの方法がとても似ていることに気づき、楽しいひとときだった。
6月末に和光大学で講演を行うことを引き受けた。
        ☆         ☆        ☆

相変わらず読書が進まない日が続いているが、青山潤さんにいただいた『うなドン』(講談社)はすぐに読んでしまった。
講談社エッセイ賞を受賞した『アフリカにょろり旅』の姉妹編で、今度はインドネシア、
タヒチ、マラッカ海峡が舞台。
「うなドン」とは飯のことではなく、「うなぎのドン・キホーテ」のこと。
その名のとおり、恥も外聞もかなぐり捨てて、ひたすらうなぎに突進していく。
あまりの「蛮勇」ぶりに「ちょっとこれは…?」と思うところもあるが
(特に毒を川に流すのはどうか)、
それでも、単なる学部卒で、海外青年協力隊くずれの若者が、学歴もなく、英語も得意でなく、とても才能だけでは太刀打ちできないと知り、誰もやらないうなぎ18種全部のサンプル採集という力業で事態を打開しようと決心、
ほとんどハチャメチャ、でたらめに動き回ってうなぎ取りに人生をかける姿は
ぐっとくる。
そして今や青山さんは東大准教授。
私もやってることは似ているが、「うなぎ」みたいな一つの線がないから
いつまでたってもあらゆる面で素人のままだ。
刺激を受けると同時に「いいよなー」と羨ましくもなった。

関連記事

no image

かたつむり考試院

前回のブログに読者の方からのコメントにより、 「三畳記盗作疑惑」の全貌が明らかになったが、まあ、愉快

記事を読む

no image

2009年の小説ベスト1

ここんところ仕事で行き詰っているのに、いや、だからこそ、 大作の小説を読んだ。 アミタヴ・ゴーシュ

記事を読む

no image

アジア未知動物紀行<第3弾>

「小説現代」(講談社)で不定期連載中の「アジア未知動物紀行」。 第1弾はベトナムの猿人フイハイ、そ

記事を読む

no image

「中国人の本音」

人気ブログ「大陸浪人のススメ」の管理人で、それを書籍化した「中国人の本音 中華ネット掲示板を読んで

記事を読む

no image

踊るダルビッシュの謎

斉藤祐樹が日本ハムに入団したため、以前にも増してダルビッシュ有のニュースが多い。 で、思い出したの

記事を読む

ミャンマーの歌と踊りのイベント@上智大学

         

記事を読む

no image

無許可チムスルウォンとは何か

『腰痛探検家』の韓国語版(パク・スンヒ訳、Bookie出版)が刊行されたらしい。 韓国で本を読

記事を読む

『恋するソマリア』装丁公開

ついに1月26日刊行の『恋するソマリア』(集英社)がAmazonでもカバーと詳細情報がアップされ

記事を読む

no image

レベル7の衝撃をふたたび

高野秀行プロデュースの大野更紗「困ってるひと」がついに最終回を迎えた。 このウェブ連載の反響は驚くば

記事を読む

no image

見知らぬ超名作

 日頃から世間とのタイムラグというかズレを感じているが、「フラガール」には本当に驚かされた。 「フ

記事を読む

Comment

  1. りゅう より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1) AppleWebKit/534.24 (KHTML, like Gecko) Chrome/11.0.696.60 Safari/534.24
    初めまして、りゅうと申します。タイへ行ってからタイにさらに興味を持ち、そこで手にしたのが「極楽タイ暮らし」でした。それからはタイというより高野さんの本(タイにもさらに魅力を感じました)に興味がいき、色々と読ませて頂いてます。どれも本当に面白くて心が温まります。また、アジア新聞屋台村で終盤に高野さんがエイジアン的に生きようと決心された時の話を読んだ時は自分も決して他人事ではなく、今の生き方について考え直すことが出来ました。  これからも応援しています!本もたくさん読ませて頂きます!今は異国トーキョー漂流記を注文中です!早く読みたい!
    ではお身体に気をつけて頑張って下さい!日記と関係なくてごめんなさい。。

  2. go より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N03B(c500;TB;W24H16)
    こんにちは。
    高野さんの講演会、行ってみたいです。関西では講演なさらないのでしょうか。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年7月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑