*

ワンの大地震

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

バンコクで大洪水、そしてトルコ東部のワンでは大地震が発生。
私にとって思い入れが深く、知人友人が何人もいる地域で立て続けに天変地異である。
とくにワンが日本の新聞の一面に載るなど考えられなかったことだ。
私はワンに3回も行っている。
最初に行ったときは、単なる家族旅行だったが、真夏なのに降雪に出くわし、
同行していたジャーナリスト兼ドライバーのイヒサンの手でトルコの新聞に出てしまった。
2回目はワン湖に棲むという謎の未確認動物ジャナワール調査のため、カメラマンの森や
学生の末澤と訪れた。
今回、地震の被害の大きかったエルジシュでも目撃談を集めたりしていた。
このとき、私は謎の黒い物体を目撃してしまい、またしてもイヒサンの手で
トルコの新聞に大きく載ってしまった。
この経緯は「怪獣記」(講談社文庫)に詳しく書いている。
3回目は去年の11月。つまり約1年前。
森、末澤、それからSPA!の編集者・織田君という4名で、ユーフラテス河を見に行った。
ユーフラテス河の最長源流はワンのそばを通っているのだ。
このときは、ワン行きで初めて何も起こらずトルコの新聞にも出ないで終わった。
ただ、ひじょうに寒く、東京の真冬並みの気温だったと記憶する。
いま、屋外で夜を過ごすのは相当に厳しいにちがいない。
ワン周辺は昔から天変地異の多いところらしく、それが怪獣伝説を生んできた側面があるのだが、大地震になると、新聞ネタでは済まない。
3回の訪問でお世話になったり、話をしたりした人は膨大な数にのぼる。
中には被災した人もいるだろう。
イヒサンと、その相棒であるガイドのエンギンの安否については、
メールを出したが、まだ返事がなく、わからない。
おそらく電気が止まっているのだろう。
生命力あふれる彼らは大丈夫のような気がする。
イヒサンはたぶん、例によってワン湖周辺の被災地を駆け回り、レポートしまくっているだろう。
いっぽう、エンギンは得意の英語とコーディネーター力を生かし、
海外からの救援隊やマスコミのガイド・通訳にあたっているだろう。
少なくともそう信じたいところだ。
写真・上:夜明けのワン市街  写真・下:ワンで出会った美人女子高生

関連記事

no image

ブータンは4月

2月にブータンに行く予定だったが、向こうの事情やこちらの事情などで 4月に延期になった。 それまでゆ

記事を読む

no image

顔写真なしでよかった

『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)の 全作業が終了した。 今回、講談社文庫に初めて入る

記事を読む

no image

新婚2ヶ月ではありません

こんな時期に不思議なのだが、『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)が 重版になった。 王

記事を読む

no image

超オススメのこの本とこの雑誌!

来週の土曜日(3月4日)から20日まで、ソマリランドとソマリアに行くことになっている。 たかだか二

記事を読む

no image

友だちは反政府ゲリラだけ…

チェンマイにいる。 4年ぶりだが、驚くほど街が変わった。 見知っている建物がない。 だから自分がどこ

記事を読む

no image

気仙沼産かじき

土曜日、スーパーに買いだしに行ったら、気仙沼産のかじきの切り身が売っていた。 しかも半額。 買ってき

記事を読む

no image

混沌とするタイのお化けワールド

ついに『謎の独立国家ソマリランド』の見本があがってきた! パネルも本の装丁もむちゃくちゃか

記事を読む

no image

人生管理

春風亭昇太師匠が暮れに体調をくずしたと聞いたので、 「健康管理もファンサービスのうちですよ」と言った

記事を読む

no image

シャングリ・ラは実在した!

探検部の後輩・角幡唯介の開高健ノンフィクション賞受賞作品 『空白の五マイル』(集英社から刊行予定)の

記事を読む

no image

岡崎市のクライミングジムPlay Mountain

早大探検部時代に一緒にムベンベ探査を思い立ち、副隊長として参加した高橋洋祐から 「岡崎市でクライミ

記事を読む

Comment

  1. けんじり より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_6_8) AppleWebKit/534.51.22 (KHTML, like Gecko) Version/5.1.1 Safari/534.51.22
    怪獣記は愛読書の一つです。
    イヒサンよりもエンギンよりも、
    そのごっついべっぴんの女子高生のほうが心配です。

  2. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    「怪獣記」は、僕も大好きな作品です。神秘的な地に暮らすパワフルな彼らも、この作品の大きな魅力のひとつです。イヒサン・アビそしてエンギンが無事だといいけど…

  3. koikea より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; YTB730; GTB7.1; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; .NET4.0C; CIBA; InfoPath.3; AskTbTKR/5.8.0.12304)
    バンコクのペちゃん(おじいさんが上院議長だった、元新聞屋台村の手が悪かったタイ人/現在は旅行会社社長)の家が洪水に会い、避難しているとか。パオちゃんの家のあたりはすでに水が引いているとのことです。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年3月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031
PAGE TOP ↑