*

舟を編む

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


何とは言わないが、ひどい小説を読んでしまい、
「とにかく上質な作品で口直ししたい!」と本屋の棚を彷徨っていたところ
三浦しをん『舟を編む』(光文社)を発見。
辞書編纂編集部で辞書を作る話——という設定にいたく感銘を受けた。
辞書の作られ方や内情もわかったし、文章は期待どおり上質で、とてもよい口直しになった。
でもせっかくこんな素晴らしい設定で、登場人物もキャラがそろっているのだから
もっと長い話にしてほしかったなあ。
全三巻でもいいくらい。
いや「大渡海」(この小説で作られる辞書)と同じ分量でもよかったのに。
      ☆        ☆        ☆
先週も忙しかった。
月曜は西葛西のインド人コミュニティの原稿をひとまず終える。
火曜日は甲府の在日タイ人とブラジル人と日本人を描いた映画「サウダーヂ」を見てから、
錦糸町のロシア料理を食べに行った。
次回の「移民の宴」はロシアなので、下見。
グルジア産ワインとボルシチがうまかった。
木曜日は朝から晩まで、まる一日アブディンがスポーツ外科で
診断・検査・リハビリを行うのにつき合う。
終わった後は疲労困憊したが、さすがにアブディンは中東・アフリカ情勢に詳しい。
なんといっても地元人だし、その地域の「国際紛争学」を研究者なのだから当然だけど。
おかげで、イスラム諸問題、一連の「アラブの春」の舞台裏、ソマリとスーダンの似たところなど、「えっ、そういうことだったの?!」という話の連発で、
恐ろしくタメになった。
これまでアブとはバカ話しかしてなかったけど、もっと早くからこういうふうに使えばよかったのだ。
土曜は午前中はソマリの友人に会う。
モガディショ出身の彼にソマリランドの政治システムを説明したら、
「それは合理的だ。素晴らしい!」と驚いていた。
 夕方は青学大教育学部の後援会。
「野宿野郎」の人たちが何人も紛れていて異彩を放っていた。
こう書いてみると、忙しいと言っても純粋に自分のやりたいことしかやっていない。
幸せなことだ。

関連記事

no image

サドゥはバカか

インドにはサドゥと呼ばれる「聖者」がいる。 ヨガをしたり、瞑想したり、 大麻を吸ったり、すっぽんぽ

記事を読む

no image

マンセームー脳人間、読書界へ進出!

学研「ムー」的なものに脳が染まってフリーズしてしまうという恐ろしい状態、 それが「慢性ムー脳人間」。

記事を読む

no image

新刊ラマダン

「在庫一掃読書では本は減らない」という指摘を友人から受けた。 なるほど、それもそうだのだけど、 新

記事を読む

no image

「クロ高」英語版届く!

私が熱狂的な「クロ高」ファンだということは意外に知られていない。 クロ高とは、少年マガジンで連載し

記事を読む

no image

手がもぞもぞ

ジュンク堂新宿店で上映会+サイン会。 ここで本を見たり買ったりする以外に自分が何かするというのは な

記事を読む

no image

FUTONと焼酎

事情があって中島京子の作品を読み返しているが、 『FUTON』(講談社文庫)はあらためて素晴らしい

記事を読む

no image

悪いのは飛蝗か

「本の雑誌」9月号を読む。 特集は翻訳ミステリ。 私は全く知らなかったが、飯田橋に「ブックスサカイ

記事を読む

no image

イギリスにもタマキングがいた!

書くのがだいぶ遅くなったが、今年最初に読んだ本は早くも今年最高の本になる可能性がある。 ダグラス・

記事を読む

no image

王様のブランチ

妻は早起きして一昨日から通っている浦安市の災害ボランティアに出かけていたので、 9:30にひとりで「

記事を読む

no image

今日から「預言」はやめる

 高島俊男先生の『お言葉ですが… 第11巻』を読んでいて、驚いた。  「預言が『神の言葉を預かる』と

記事を読む

Comment

  1. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    やりたいことして忙しい、大いにうらやましい。ところでソマリランドの政治システムって、どんななんですか?民主主義+資本主義にそろそろ限界が来てるような感じなので、是非とも小耳に挟みたいんですが。

  2. ミジンコ より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.0; Trident/5.0)
    高野さんの忙しい一週間というのは月、火、木、土、の四日間しかない。
    「世界が生まれた朝に」のマンクンクのようだ。

コシチェイ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年3月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31  
PAGE TOP ↑