おすすめ文庫王国2012
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
本の雑誌の杉江さんと久しぶりに打ち合わせ。
私と杉江さんはとかく仲が良く、読書の好みもそっくりのように思われているかもしれないが、
実際はそうでもない。
昨日も杉江さんが「おすすめ文庫王国2012」をくれたので、早速年間ベストテンを見た。
で、つい大声を出してしまった。
「ええっ、どうしてこれが×位なのよ?
杉江さんが勧めてたから俺も途中まで読んだけど、あんな下手くそな小説ないよ。
杉江さん、表紙に騙されてんじゃないの?」
「そんなことないですよ! それを言うなら高野さんがブログで勧めていた
「××××」、あっちの方がひどい。
人間が全然書けてない」
まるで浦和サポと柏サポが今季のJリーグを討論しているみたいに
緊迫した空気がドトールに流れた。
あとで、ドトールの店長が「大丈夫ですか? 難しい話になっていたみたいですが」と心配していたくらいだ。
もっとも、その後本題に入ると、私たちの意見は100%一致していた。
これからまた杉江さんと仕事をするのだが、ひじょうに楽しみである。
杉江さんが帰ったあと、文庫王国を読みふける。
実は私はこれが本の雑誌の定期刊行物の中でいちばん好きだ。
単行本の年間ベストも気になるけど、文庫のベストはもっと重みを感じる。
単行本のときは見過ごされていたけど実はすごいんだという本や文庫書き下ろしの傑作も
各種ベストテンにどんどんランクインしてくるからだ。
ざっと見た中では、
エンタメ・ノンフ、ベストテン(東えりか選)の
春風亭柳昇「与太郎戦記 ああ戦友」(ちくま文庫)
斉藤一九馬「歓喜の歌は響くのか 永大産業サッカー部創設3年目の天皇杯決勝」(角川文庫)
国内ミステリ、ベストテン(宇田川拓也選)の
1位 長岡弘樹「傍聞き」(双葉文庫)
この3冊は今すぐ買って読みたい。
誰だってここに書かれた紹介文を読めばそう思うはず。
では書店に行ってきます〜
関連記事
-
炎のドトール執筆日誌
「もうダメだ!」と叫んで家を出たのが去年の夏だった。 原因はインターネット。 常時接続なので、原稿を
-
ドリアン系の作家たち
私が中島義道先生や町田康の本を面白いと書いて、なんだか意外だったようだが、 ほんとうに両方とも好き
-
高野本の未知なる領域
ここ最近最も驚くべき、かつ(それが本当なら)実に嬉しいことがあった。 大竹まことのゴールデンラ
-
酒浸りなのかと言われても…
私の数ある悩みの一つは、初対面の人に「これが私の書いた本です」とさっと渡せるような本が一冊もないこと
-
3月〜4月の講座とトークイベント
3月から4月にかけて、私が出演するイベントのご案内です。 3月23日(月)19:30〜 ジ
- PREV :
- 「旅行人」最終号
- NEXT :
- 正月には柳昇師匠がよく似合う