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沖縄発!プロとお手伝いによる地場映画

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

私の家を民宿(兼居酒屋)と勘違いしている沖縄の友人がいる。
ずうずうしい男なのだが、やっていることはすごくおもしろい。
沖縄発の沖縄映画を撮っているのだ。
今までにも沖縄を舞台にした映画はいくつもあり、おもしろいものも少なくないのだが、どうしても本土の人間が撮るため、「イメージの沖縄」になってしまう。
三線が出て、カチャーシャ踊って、能天気で…というやつだ。
「そういうのもいいんだけど、沖縄はそれだけじゃない。もっとリアルで深い沖縄のおもしろさを映画にできないか」
 そう思った友人は映像仲間を集めて「琉球カウボーイズフィルムス」という映像集団を結成した。
 沖縄人による内側からの映像を本土に向けて発信しようという新しい試みだ。
沖縄というところはおもしろい土地柄だ。
本土と感覚がちがうので、たとえばテレビのCMも東京でつくったものは沖縄ではけっして受けないんだという。
だから、沖縄では大企業でもわざわざ沖縄向けのCMを沖縄のプロダクションに委託することが多い。
私の友人はスタッフ三、四人のちっこい個人プロダクションなのだが、NTTドコモやNHK沖縄のCM(NHKの場合はCMじゃなくて「広報」とでもいうのか)をつくっている。
ほかの土地ではまず考えられない話だ。
だから、沖縄には優秀で、かつ沖縄的センスのあるCMディレクター、CGデザイナー、ミュージッククリップのディレクターなど、さまざまなクリエーターが育つことになった。
琉球カウボーイズフィルムスは、そんなCMディレクターで映画と沖縄をこよなく愛する人たちの集まり−−なんて麗しい話のわけもないが、友人の言葉をそのまま信ずればそういうことになる。
現在はスポンサーや上映場所を探しながら短編映画を作製しているから、まあ、インディーズの一種ではある。
だが、最初に完成された映画「マサーおじいの傘」を見て驚いた。
ものすごい可能性を秘めているのだ。
ストーリーは荒削りだが、なにしろ監督がCM製作者だから映像のレベルは一般の商業映画と比べてもまったくひけをとらない。
それから、役者がいい。


オーディションを行って役者を選んでいるというが、「顔」も「顔つき」も本土の役者とちがう。まず、わざと沖縄らしい顔の人を選んでいる。
本土にはちょっといそうもないような、不思議な顔立ちの美少女とか、眉の濃いいかにも南方系という雰囲気の子どもたちとか。
顔つきもちがう。
今の日本の子役は幼いときから「子役」の訓練を叩き込まれているので、
子どもの顔ではなく「子役の顔」になっている。
将来芸能界でやっていこうと思えばどうしてもそうなるのだろうが、
プロっぽい顔つきでプロっぽい台詞をしゃべる子役には白けることも多い。
琉球映画はその点、その場限りの個性しか求めてないので、子どもが子どもらしい。
あるいはそう思わせるように製作サイドがつくっている。
また沖縄は芸能王国なので、役者でなくても、コメディアンやミュージシャンなど芸達者な人たちがたくさんいる。
彼らはきちんとした演技指導を受けなくても、何が受けるか本質的にわかっているので、役者として十分通用してしまう。
しかもすごくいい役者として。
映画の作り方も独特だ。
映像も凝っているし、登場人物は多いし、老若男女が何十人も登場するシーンもある。
いったいいくら金がかかってるんだろう、この金はどこから来てるんだろう、助成金か何かあるのかと思うのだが、訊いてみると、「みんな、ボランティア」という。
プロ、アマ問わず、役者もスタッフもボランティア。
雨のシーンは地元消防署の協力を得て水を大量に撒き、ロケには地元自治体が全面的に協力する。
ボランティアというより「手伝い」の感覚に近い。
地元の人たちが家の引越しでも手伝うかのように映画つくりを手伝っているのだ。
こういう撮り方をしていると、どうやっても土地の個性というのが自ずから出てしまう。わざわざ「沖縄っぽく」という演出をしなくても、沖縄っぽくなってしまうのだ。
商業映像を製作するプロの能力と、ナチュラルな土地と人材。
「イランのキアロスタミみたいな映画を撮りたい」と友人は言うが、
ほんとうにできそうな気にさせられる。
少なくとも、そんな地場映画を作れるのは、日本では沖縄だけである。
今、琉球カウボーイズフィルムスは三本の短編を製作中だ。(一本はすでに完成されている)それをまとめて上映したいが、なかなか映画館でかからないだろうから、
沖縄のイベントに絡めた上映会もやりたいといっている。
あ、言い忘れたが、うちに何日も泊まりこむずうずうしい友人は井手裕一といい、統括プロデューサー、つまり最高責任者である。
すごくいいやつなので、もし、この純沖縄映画に興味がある方は是非ホームページをのぞいて見てください。
http://www.ryukyucowboy.com/
お手伝い(ボランティア)も募集しているから、興味がある方はどうぞ。
(写真:映画「清明(シーミー)」のロケ風景。ぜんぶ「お手伝い」の人たち)

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Comment

  1. AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X; ja-jp) AppleWebKit/312.8 (KHTML, like Gecko) Safari/312.6
    隊長!(そう呼ばせて頂いている)
    これ以上ないお褒めのお言葉、ありがとうございます!
    短編3本立てですが、ホントにどれも超個性的でぶっ飛び面白いですから!楽しみにしててくださいね!
    って、映画プロデューサーはどこまでも図々しいのでした!!

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    • 発酵こそ真のトラディショナルにして、オーセンティックでローカルなグレートアートだと、なぜかカタカナで思うんだけど。信じない人は小倉ヒラク君の『日本発酵紀行』を立ち読みしてほしい。写真を見るだけでわかると思う。 ReplyRetweetFavorite
    • 南信長さんが書評で進めていた相澤いくえさんの美大生漫画『モディリアーニにお願い』(小学館)をときおり読んでいる。青春ものとしてもクリエーターものとしても面白いのだけど、全く別次元の感想が頭から離れない。それは「どうして美大には発酵学科がないんだ?」ってこと。 ReplyRetweetFavorite
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