*

究極の野菜はフグ野菜

公開日: : 最終更新日:2014/01/20 高野秀行の【非】日常模様

2014.01.19hisamatsu今年も年初から忙しくなかなか読書の時間がとれないけれど、
読んだ本は当たりが多く、充実している。

その一つが、久松達央『キレイゴト抜きの農業論』(新潮新書)
有機農家が「日本の農薬は安全」と断言しているのにまず驚いた。
著者は続けて「安全と安心はちがう」と述べる。
本人が茨城県土浦で農業を行っており、原発事故以降に深刻な影響をこうむっており、
放射能汚染についても「土浦の野菜は安全だが消費者は安心ではない」ととてもフェアな見方。

で、本人がたどりついた結論は「フグのような野菜をつくりたい」。
フグは毒があり、毎年何人かは命を落とす危険な食べ物なのに、そのおいしさにつられて
みんなは食べてしまう。
つまり、どんなに危なくても食べたくなるような野菜が究極の野菜なのだ――。

安全と安心を論理的に説明しておいて、この飛躍。すばらしい。

本書は「~であるべき」という正論が一切出てこないので、私のように正論や建前が苦手な人間には
ほんとうに嬉しい。

私も「読むと危険だがそれでもつい読みたくなってしまう」ようなフグ本が書きたいです。

関連記事

『移民の宴』重版。ついでにお詫びと訂正

先日、読者の方からこんなメールをいただいた。 「過日、御著「移民の宴」を拝読いたしまし

記事を読む

no image

白骨になっても大丈夫

先日山形に行ったとき、山形大法医学教室の梅津和夫先生にDNAの検査をしてもらった。 口の中に綿棒を突

記事を読む

no image

ダチョウ力

J-WAVE「Classy Cafe」という番組の収録。 いつものようにナビゲーターの質問にてきとう

記事を読む

no image

アマゾンの謎

 「極楽タイ暮らし」が手元になくなってしまった。  この本は一般書店では入手しにくいので、ネット書

記事を読む

no image

コンゴ・ジャーニー

友人の訃報があっても、日常は容赦なく動いている。       ☆       ☆       ☆

記事を読む

no image

エンタメノンフ的野球論

野村克也『あぁ、監督』(角川Oneテーマ21) 近年、二度目のブームを迎えている野村監督が ボヤ

記事を読む

no image

トラックバック?

トラックバックというのがどうもイマイチよくわからないのだが、チャレンジしてみたくなった。 というの

記事を読む

no image

熊の爪跡

「台風の爪跡」とか「戦争の爪跡」とか、 よく「爪跡」という言葉を目にするが、じゃあ、実際の爪跡はど

記事を読む

no image

野口英世は史上最強の日本人探検家!

高野秀行公式サイトへようこそ。  ここでは私の日常模様を書くことになってるのだが、私の日常は「飲む、

記事を読む

no image

butan no bukkyou

Zenkai no shasin no bijo wa watashi no zonka-go(bu

記事を読む

Comment

  1. 極楽蜻蛉 より:

    高野さんの集英社文庫版は何故か旅先の沖縄のブックオフで、それも100円の棚でよく見かけました。ホテルに戻って読み始めると止まらなくなって・・・。そんなこんなで、文庫版はほぼ全部買い揃えました。もちろん100円で買ったものばかりではありません。

    私は福岡県のとある高校の数学教師で、図書館で主に選書を担当しているので、高野さんの本は新刊が出ると大抵入れてます。こっちは無料で読んでしまうので大変申し訳ない。

    今も角幡さんとの対談を読んでました。ブログを書かれてるとのことだったので、ちょっとお邪魔を。

    ここ数年では、イスラム飲酒紀行と移民の宴が気に入ってます。ソマリランドも興味深かった。

    また楽しい著作を期待してます。

    • 高野秀行 より:

      拙著ご愛読ありがとうございます!

      ただ今、小倉におります。
      楽しみにしていた角打ちは台風のため、早めに店じまいして、あちつけませんでしたが、立ち飲み屋と寿司屋は期待以上の雰囲気と味で、大満足中です。こんなに酒飲みに優しい町はそうそうないんじゃないでしょうか。惜しむらくは仕事でなかったらもっと楽しく過ごせたのに…。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年4月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  
PAGE TOP ↑