天国再訪
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
東京はたいへん暑いそうだが、チェンマイは依然として涼しい。
ふと、思い立ち、6,7年ぶりにチェンマイ大学に立ち寄る。
変わり果てたチェンマイで、ここだけは驚くほど何も変わっていない。
私が15年くらい前に住んでいた外国人教師用の寮もそのまんま。
ネコ顔をした、タイ人には珍しいくらい無愛想の管理人のおばさんもそのまま。
「ぼくのこと、覚えてますか?」と訊いたら、
「覚えてるよ、もちろん」と微笑んだ。笑い顔など見たことがないので、それが少し不気味だった。
私はこの寮でかなり目立つ騒動を引き起こしていたから、たった一年しかいなくても覚えているのだろう。もしかしたら、その騒動を思い出して、にやっとしたのかもしれない。
学生の女の子たちも相変わらずかわいい。
チェンマイは飯はうまいし、暮らしやすいし、こんなカワイイ学生たちに「センセイ」と慕われ(陰でバカにされていたが)、今思えば天国のようだ。
しかし、当時はこれが怖かったのだ。
時間が止まったような幸福感が。

私が住んでいた寮の玄関口。今、日本人の先生が4人住んでいるという。
関連記事
-
-
講談社ノンフィクション賞を受賞しました
今日、タイの時間で3時過ぎ、チェンマイ大学の裏門前(通称「ランモー」)を通過中に驟雨にあい、 移動
-
-
天下一とはすでにプロレス
好村兼一『伊藤一刀斎』(上・下、廣済堂出版)読了。 『行くのか武蔵』(角川学芸出版)がよかったので
-
-
猫又とペシャクパラング
TBSラジオの「安住紳一郎の日曜天国」という番組に出演。 アフガニスタンのペシャクパラングについて話
-
-
長井健司、ミャンマーに死す
毎日このブログではお気楽な話題を提供していたが、 ミャンマー情勢は緊迫の一途をたどっていた。 私のと
-
-
ユーフラテスの旅の落とし穴
昨日やっとこワンに飛んだ。 延々とつづく茶色の香料として山岳地帯を見下ろし、 「こんなところで河下り
-
-
『西南シルクロード』がなぜか増刷
驚いたことに、『西南シルクロードは密林に消える』(講談社)が重版(増刷)になった。 刊行当初からさっ
- PREV :
- 友だちは反政府ゲリラだけ…
- NEXT :
- 帰国、暑い、その他


