*

思い出探しに来たわけじゃないけれど

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

現在、チェンマイに滞在中。

バンコクにいると、どうしても「これがタイだ」と思ってしまうのだが、
こっちに来るとそれが錯覚だと気づく。

こちらも近代化はしているが、バンコクとは桁外れにのんびりしている。

ただし、旅行者の数は異様に多い。
旧市街とその周辺は明らかにタイ人より外国人のほうが多い。
ゲストハウス、レストラン、カフェ、レンタバイク屋、マッサージ、旅行代理店が切れ目もなく続き、
もはや「タイの古都」というテーマパークみたいだ。
旅行業と無関係な人はみんな郊外へ移ってしまったのかもしれない。

とはいうものの、緑がふんだんに残り、車の騒音より鳥のさえずりのほうがよく聞こえるのだから、
いい場所にはちがいない。
これまた20年前に行ったバリのウブドを彷彿させる。

昨夜は郊外にあたらしくできた巨大なフラワーパークみたいなところへ行き、
ミャンマー・ショーを見た。
観光目的ではなく、ミャンマー人のNGOが主催したミャンマー文化普及啓蒙活動の一環みたいなものらしいが、
タイ人でなく本場の人たちが出てくるので、見応えがあった。
ビルマ族はもちろん、シャン、カチン、カレンなどのダンスや、その他の少数民族のファッション・ショーなどあったが、
中でもシャンの踊りは独特で際立っていた。

巨大な孔雀みたいな羽根をつけた女性の踊り(写真)と、男性二人がかぶりものに入って踊る獅子舞に似ているが顔が獅子でなく、なんと「鹿」、つまり鹿舞い。

孔雀の踊り(?)を踊ったのは、シャン州出身で現在チェンマイ大学の学生。
なんと彼女は20年前私が親しくしていたシャン人で独立運動家だった友だちに英語とシャンの伝統文化を習っていたという。

いつの間にか、私たちの周りにはシャンの人たちが集まり、たいてい何かしらの知り合いで
わきあいあいとタイ語とシャン語で話をしていたが、
ごく普通にSSA(シャン州軍)というゲリラ名が出てくるからさすがだ。

ソマリアのプントランドでは身内の誰かしらが海賊をやっているように、チェンマイ在住のシャン人の間では身内や友だちの誰かしらが
反政府活動をしていたり、ゲリラ関連の仕事をしていたりする。
断っておくが彼らはタイでは違法なことには手を染めておらず、みんな、ごく普通の人たちだ。

そういうことまでが20年前と変わらず、なつかしさでいっぱいになったいたのだった。

関連記事

no image

ダメ男子ロマン大作

「人のやらないことをする」がモットーの私は、 これまで盆と正月とGWだけはせっせと働き、 そのほか

記事を読む

no image

事実上は本日発売だった!

『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)がいよいよ昨日発売になった。 本の雑誌社に行

記事を読む

no image

『犬部!』

明日7日、妻・片野ゆかの新刊『犬部!』(ポプラ社)が発売される。 犬部とは、北里大学獣医学部に実在

記事を読む

no image

判断能力の急激な低下

うーん、参った。 内澤さんの話、何も問題なかったのか。 これでは私がただ赤っ恥をかいただけではない

記事を読む

no image

前世マラソン

朝から深夜までかかって、横浜、東京都西多摩郡檜原村、新宿区の三ヶ所で 前世を見てもらう。 「未確認思

記事を読む

no image

西原理恵子『できるかな クアトロ』

私が「解説」を書いた西原理恵子の『できるかな クアトロ』(角川文庫)が届く。 漫画部分は例によって

記事を読む

no image

スットコランド日記

宮田珠己ことタマキングが「web本の雑誌」で連載している 「スットコランド日記」(毎週月曜更新)を読

記事を読む

no image

スーダン寿司

スーダン人の盲目の友人、というか最近では「出来の悪い弟」みたいな感じになっている アブディンから電話

記事を読む

no image

また見つかったらしい

友人に教えてもらって知ったのだが、インドネシアでまたシーラカンスが見つかったようだ。 漁師の手に抱

記事を読む

no image

変身写真館

日曜日のアブディンとのタンデム日帰り旅の写真が届いた。 撮影は併走してくれた友人のワタル社長。 こ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑