*

「移民の宴」ソマリ篇?

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様


長生きはするものである。
かつてレトルトカレーを「めんどくさい」という理由で温めずに食っていた私が、
(ていうか、今でもたまにそうしている)
「クロワッサン」の「うち味レシピ」というコーナーに登場、
オリジナル・レシピを披露するなんてことになった。
昔の私を知る者は唖然だろう。

種を明かせば、その連載を書いているのが内澤副部長であり、
まあ、きっとイロモノ的に登場させてもらったのだ。

てなわけで、今日は内澤さん、編集のIさん(この人も前からよく存じ上げている)、カメラマンの3方がうちにやっていた。

取材スタッフが台所を取り囲む風景は、『移民の宴』取材で見慣れた光景だが、
その真ん中で包丁を握るのが他ならぬ私…というのが強烈すぎる違和感だった。

幸い、内澤さんが料理とは直接関係のないことを次から次へと話しかけてくれるので、
取材を意識せずに済んだ。
あと、「唐辛子の種の取り方はこうやるのよ!」と見かねた内澤さんに教えてもらうなんて一幕も。

取材に来た人に料理の基本を教わっている料理人も珍しい。

2時間弱かけて、なんとかかんとか料理は完成。

メニューは;

東ブータンの「エゼ」、ソマリの骨付きヤギ肉スープ「マラク」、そして同じくソマリの羊肉と野菜の香草炒め「スカール」。

おまけに、タイのジャスミン米で作った卵チャーハン。

日本のメディアでソマリ料理が紹介されるのはおそらく史上初だろう。
せっかくなので、ソマリ人のアブディとサミラの兄妹も呼び、楽しく賑やかに宴会。

といっても、なにしろ「世界で最も危険な町・モガディショ」から来た人たちだから、
相変わらず話は想像外の展開を見せる。

例えば、サミラが2008年にイエメンに行ったことがあるという話が出たとき。
「その頃、イエメンって安全だった?」と内澤さんが訊いたら、
「モガディショを出たらどこも安全」とサミラがさらりと答えたものだ。

日本人はみんなして「どっひゃー!」だった。

もっとも、取材陣は先にお帰りになったあとでアブディたちは「今日会ったあなたの友だちは日本人っぽくなかったね。
特にあの女の人。只者とは思えなかった」と語っていた。
どうやら、初対面のソマリ人にも内澤姐御の特異なキャラはわかったようだ。

残りの料理をタッパーに詰めて兄妹に渡すと、彼らは満足そうに帰って行った。
まったくどっちが日本人でどっちがソマリ人なのかわからない。
私のほうが移民みたいだ。

今日の料理と宴会の様子は、3月25日発売の「クロワッサン」850号で読むことが出来るそうです。

関連記事

no image

最終的にはパッション

宮田部長の『だいたい四国八十八カ所』(本の雑誌社)が重版になったそうだ。 このすさまじい出版不況下

記事を読む

no image

世界はまだまだ広く、日本人にもスゴイ人たちがいる

まずはお詫びから。 『謎の独立国家ソマリランド』で2ヵ所誤りが見つかった。 正確に言えば、知

記事を読む

内側から見た「やくざ」

最近イースト・プレスの本が面白い。 まあ、知り合いの編集者が増えて新刊を送ってきてくれるせいも

記事を読む

no image

知らぬが大福

先週の火曜日、本の雑誌の杉江さんがうちに来て打ち合わせ。 妻が不在なので心おきなく杉江さんと談笑、特

記事を読む

no image

今月のエンタメノンフ文芸部はすごい

今月は宮田珠己部長の「日本全国津々うりゃうりゃ」(廣済堂出版)と 内澤旬子副部長の「飼い喰い」(岩波

記事を読む

no image

怪物は江川と鶴田だけ

松井優史『真実の一球 怪物・江川卓はなぜ史上最高と呼ばれるのか』(竹書房)という本を書店の店頭でぱ

記事を読む

「猿になりたい」

本日発売された『マンガがあるじゃないか わたしをつくったこの一冊』(河出書房新社)。 ヤマザキマリ

記事を読む

no image

『虐殺器官』の衝撃

つい先週、『天地明察』(角川書店)を読み、「今年日本の小説でこれ以上のものは読まないだろう」と思っ

記事を読む

no image

漫画探偵、登場!

浦沢直樹の担当編集者やプロデューサーを務め、 リチャード・ウーなる筆名で異色在日外国人漫画「ディア

記事を読む

no image

角幡唯介はノンフィクション界の村上龍

昨日は東北から帰った直後だったせいか、いつになく「正論」を述べてしまった。 現地に一週間ほど行って「

記事を読む

Comment

  1. たなかふみ より:

    初めてコメント致します。
    移民の宴、第三章をひとまず読んでいるとちゅうですが、涙が出そうになりました。
    私の夫も外国人で、色々と思うところがありまして…。
    子育ての合間を縫っての読書で、いつ読了するかわかったものではありませんが、もう興味深い本だということが第三章の途中で分かりましたので、今から楽しみです。
    今後もブログを拝見いたします。ご活躍に期待しています。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

  • 2020年12月
    « 3月    
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑