*

夢のようなアジアの列車旅

公開日: : 最終更新日:2013/04/12 高野秀行の【非】日常模様

おかげさまで『謎の独立国家ソマリランド』は先週、日本経済新聞と東京(中日)新聞の書評で取り上げてもらった。売上げも好調をキープしているようだ。

また、それとは無関係と思うが、『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)と『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)がそれぞれ増刷になった。
ムベンベは10年かけて7刷に達した。
発売2年くらいはどうにもならなかったのだが、地道に部数を伸ばしている。

少しずつソマリ取材大赤字の穴埋めが進み、私としては大変嬉しい。

☆                ☆                    ☆

ノンフィクション作家・木村元彦氏の古い友人で、実は私と一緒にソマリランドや西サハラに行った宮澤の学生時代の友だちだということもわかった木瀬貴吉さんという編集者が、
最近新たに「ころから」という出版社を立ち上げた。
この出版大不況のおりに大した蛮勇である。

その「ころから」第一弾は米屋こうじ『I Love Train アジア・レイル・ライフ』という写真集。

インド、ミャンマー、タイ、台湾、中国などアジア諸国の鉄道を撮影したものだが、
常に現地の人たちの眼差しや暮らしぶりが写っていてとてもいい。
この写真集を見ると、別に旅好きではなくても鉄道好きではなくても、その土地に行って列車に乗りたくなること請け合いだ。
私も「列車を乗り継いでユーラシアを横断したら楽しいだろうな…」とつい妄想してしまった。

巻末にサムネイル写真とキャプションが付けられるという、とても丁寧な作りになっており、
読者としてはその辺も嬉しい。

「ころから」第2弾はファーティマ松本『サウジアラビアでマッシャアラー! 嫁いでみたアラブの国の不思議体験』
1967年生まれの埼玉県人の女性がサウジアラビア人と結婚し、現地で8人の子供を産んで育てた(現在も育てている)という
びっくりするような話。

構成や記述にいろいろ難点はあるものの、まあ、とにかくサウジに長く暮らした日本人の書いた本など他にないので
貴重だ。
とくに、ダンナがイトコを第二夫人として娶ってしまう場面はおそろしい。

当然そんなのはイヤ。しかし拒否したら、自分はサウジ育ちの子供8人連れて埼玉に帰らねばならない…。
男が複数の妻と結婚できる社会は、女性にとってものすごい恐怖&嫉妬との戦いであることを本書で実感した。

こちらも本の作りはとても丁寧だ。

関連記事

no image

『猛き箱舟』をうっかり再読

いろんな仕事がたまっているのに、船戸与一の大作『猛き箱舟』を読んでしまった。 西サハラを舞台にして

記事を読む

no image

くどくどかぱらぱらか

比較的調子よく来ていたブータン原稿がうまくいかなくなってきた。 逃避の意味合いもあって、ある作家の

記事を読む

no image

おすすめ文庫王国2012

本の雑誌の杉江さんと久しぶりに打ち合わせ。 私と杉江さんはとかく仲が良く、読書の好みもそっくりのよ

記事を読む

no image

楽しい南米

ペルーのマリオ・バルガス=リョサがノーベル文学賞を受賞した。 私が親しみ、著作を何冊も読んでいる作

記事を読む

no image

うちの子は中華学校に入れたい

最近、「移民の宴」の取材があまりに頻繁で、 週に3,4回、編集の河井さんとカメラマンの森清と一緒に

記事を読む

no image

一度は行って見たい国

渋谷のトルコ料理店で若いユニークな女性2名と飯を食った。 一人は昨年まで大学院でアフリカのエリトリア

記事を読む

no image

元首相になりたい

福田首相が一昨日、突然辞任した。 次は麻生太郎が首相になるらしい。 それ以来、「みんな、どうして首相

記事を読む

no image

三沢光晴DVD-BOX

10月上旬のバングラ行きまでに片付けなければいけない仕事が山ほどあるが、 そんなときにかぎって、三

記事を読む

no image

多忙で読書が進む

テレビの仕事は別に辛くないが拘束時間の長さが問題だ。 一方で移動時間と待ち時間が異様に長いので 皮肉

記事を読む

no image

とんだハプニング

やっと仕事の山が峠を越えようとしていたとき、ハプニング。 一昨日の夜中(もしくは昨日の未明)に突然、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年12月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑