山口晃「親鸞」書籍化を熱望!
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高野秀行の【非】日常模様
『ヘンな日本美術史』(祥伝社)を読んで以来、山口晃に嵌ってしまったとブログやツイッターに書いたところ、
私が今連載をしている「Fole」という、みずほ総研の会員誌の担当編集者Mさんからメールが届いた。
それによれば、Mさんも山口さんが大好きで、「Fole」の表紙の装画も一年頼んだことがあるという。
うち、4回はなんとオリジナル!
鼻血出そうだ。あの山口晃に自分の趣味で作品を頼んで描いてもらうなんて!!
中でも東京タワーの絵は山口晃大画面作品集にも収録され、クリヤファイルにまでなっていて(上)、
もはや代表作の仲間入りだ。
羨ましさ余って、そのMさんを誘い、横浜そごう美術館で行われている展覧会に行ってしまった。
山口さんの人ととなりや仕事ぶりなどを根掘り葉掘り訊ねてファン心理を満足させたのもさることながら、
なにしろ展覧会がよかった。
正直な話、誰か特定の個人の展覧会など行ったのは生まれて初めてじゃないかと思うのだが、
なにより本物は画面が大きいうえ、書籍未掲載の作品が多数並べられており、
かぶりつきで2時間以上夢中になってしまった。
よかったものはたくさんあったし、その感想もいろいろあるのだが、
時間もないし、ここでは「親鸞」について、一言。
五木寛之が地方紙で『親鸞』(現在は講談社文庫で読める)を連載したときの挿絵を山口さんが描いていて、
それがどうにもこうにも素晴らしい。
二十人くらいの別人の、それもみんな腕の立つ画家やイラストレーターが順番で描いているんじゃないかというほど
回ごとに作風を変え、洒落っ気と凄みがたっぷり。
これ、物語のどういう場面で使われたのかとても知りたい。
この素晴らしい挿絵をぜひ書籍化してほしい。
各絵には細かくキャプションを入れて、五木先生の『親鸞』のどの場面に対応するのかも記す。
そうすれば、絵だけでなく、二度楽しめる。
展覧会で絵を見てるだけで楽しめたが、「私たち結婚しました。これから二人で仏道を歩み…」なんていう通知はがきの絵など、
いったい何の場面のことなのか知りたくて知りたくて悶絶してしまう。
五木先生もよく怒らなかったなと感心する(怒ったかもしれないけど)
五木先生『親鸞』の売上げにも直結するので、ぜひ講談社で出してくれないだろうか。
もちろん他社でもいいのだが、とにかくいまや国民的画家・山口晃と五木先生のコラボですよ。
私からの切なるお願いだ。
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Comment
高野さん。私も山口さんの大ファンです。その親鸞ですが、7月1日から完結編がスタートしますよ。私も毎回楽しみです。仏教の観念的な内容を、視覚的に見事に表現していて驚きます。東京地域では東京新聞で読めます。では。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/release/CK2013051002000110.html
すみません、コメントを見逃してました。
『親鸞』の続篇をやるんですか?!
もう7月1日から「東京新聞」を購読しますよ。ああ、楽しみ。
はじめまして、高野さん。私も山口さんが大好きです。東大出版会の「UP」という雑誌に、山口さんが「すゞしろ日記」というマンガを連載されているので、たまに図書館で閲覧したりもしてます。(書籍にもなっています)
京都の「えき美術館」でこの展覧会を観て、まったく高野さんと同じ思いをし、同じことを考えたので、うれしさのあまりコメントしてしまいました。私も山口画伯の「親鸞」が出版されることを、切にお願いいたしております。
展覧会、一昨日までだったんですねー。ショック。