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草思社倒産

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

草思社が事実上、倒産した。
あれだけコンスタントにベストセラーを出し、
一時は幻冬舎と並んで新聞で紹介されたりもした会社がだ。
私の『アヘン王国潜入記』(原題は『ビルマ・アヘン王国潜入記』)は、
私が草思社に持ち込んで編集者に読んでもらい、やっと出してもらったものだ。
以後、しばらくはときどき顔を出し、その都度同社の新刊をもらって帰った。
その中に三浦しをんの『格闘する者に○』もあった。
意外なことに三浦しをんは草思社デビューなのである。
(もっともそれは売れなかったらしく続編は同社から出なかった)
草思社は雑誌を出していない。もちろんマンガもやってない。文庫もない。
単行本だけだ。しかもノンフィクション中心。
どこの編集者と話しても同じことを言うが、今、単行本(特に文芸)の売れなさ加減はハンパでない。
私の『怪獣記』だって、ここだけの話だが、初版たった5000部がいまだに重版がかからない。
あんなに話題になり、本の雑誌年間ベストテン6位になっても同じだ。
近い将来、単行本は今の2割くらいに減るような気がする。
出版界はもうすでに大変なことになっているのだ。
草思社はその前触れの一つにすぎない。
まあ、私たち書き手は質のよいものを地道に書き続けるより他に生き残る道はないのだが。

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Comment

  1. マツキ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
    新風舎も倒産しましたね。

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    • 単行本の原稿が終わったら急に本が読めるようになった。まだエピローグ書いてないから気を許す段階じゃないんだけど。でも久しぶりに読書の喜びを味わっている。 ReplyRetweetFavorite
    • 今まで野村監督に特に興味がなかったんですが、加藤さんの本を読んで、すごく好きになりました。人間味にあふれた策士というところ、でも言うことは決して奇をてらわないとか。あと、やっぱりサッチー、スゴい(笑) https://t.co/FrRQVs2IX8 ReplyRetweetFavorite
    • あ、そうだったんですね。名監督の知られざる一面を描いているし、著者ご本人の青春記風でもあり、『嫌われた監督』を彷彿させました。落合夫人とサッチー夫人もよく似てるし(笑)いや、面白かったです。 https://t.co/66kmDl74FN ReplyRetweetFavorite
    • 先月から自分の単行本原稿が佳境に入り、読書が全くできなくなっていた。他人の文章が頭に入らない。なんだけど、今日一息ついたあとで、なぜか加藤弘士著『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)を一気読みしてしまった。あまりにも自分の仕事と関係がなかったのがよかったのかも。 ReplyRetweetFavorite
    • 単行本を一冊書くのはエベレスト登山にも似ている。頂上に近づけば近づくほど一歩進むのが辛くなる。でもようやく『イラク水滸伝』本文の最終稿を書き終えた。あとはエピローグと参考文献、写真のセレクト、地図の作成、ゲラ校正、専門家への確認……頂上までまだけっこうあるな…。 ReplyRetweetFavorite
    • 文庫1位が久生十蘭!そそられる!! https://t.co/OWK4Bvakwo ReplyRetweetFavorite
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