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本の雑誌はみんなの実家なのか

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

2013.11.13honnozasshiツイッターでつぶやいたので重複するようだが、昨日久しぶりに本の雑誌を読んだ。
 いつも買おうと思いつつ、気づくともう店頭にないというパターンを繰り返していたのだ。

 まずページを開くのはエンタメノンフ文藝部のツートップのエッセイ。
宮田部長も内澤副部長も、なんだか文章がのびのびしている。
お二人の文章は他の雑誌や新聞、単行本でも目にするし、
十分おもしろいのだが、本の雑誌だと、なんだか実家に帰ってくつろいでいるような文章だ。

内澤さんのは「スーツをめざせ!」。
私の受賞式のために衣装を見繕ってくれたルポである。
のっけから「なにしろ高野さんは、宮田さんに勝るとも劣らない残念な服を着る男」
「いつ会っても訳がわからないというか、形容しがたい残念感と怪しさに包まれている」
と内澤節全開。

しかし、それでもジュンコ・ウチザワ先生は私のために衣装選びに全力を注いでくれる。
なんと朝日新聞の書評委員会議で知り合ったいとうせいこう氏までアドバイスを求めたというのでたまげた。

今回は私も寄稿している(だから本の雑誌が家に届いたのだ)。
図書カード3万円分で本を買いまくるという企画。神保町のアジア文庫でタイ・ミャンマー本をメインにアジア本をどっさり買い込みつつ、昔チェンマイで出会った知人の話とかタイ犬連れ旅の話とか雑談をてきとうに書いている。
この文章もまた、全力でリラックスしている。
たしか実際に書いているときも、ほとんど一筆書きのようで、原稿は一瞬で終わったように記憶する。

なんだろう、本の雑誌のこの「実家感」。
これくらい脱力して書いたら、今、苦戦しているソマリランド続篇ももうちょっとうまく書けるんじゃないかと思ったのだった。

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Comment

  1. 天野 より:

    ソマリランド続篇!

    適当に期待してます!

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    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
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