*

クリント・イーストウッドとモン族

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


一年ぶりにTSUTAYAでDVDを借りて、観た。
ウチザワ副部長がかつてブログで絶賛していたクリント・イーストウッドの
「グラン・トリノ」。
頑固で超保守の白人老人が、インドシナ難民(モン族)二世の若者と
友情を育むという話。
「アメリカの本質」をエンタメのパッケージにきちんと収めた
ひじょうに良質な作品だった。
「ザ・ラスト・カウボーイ」という題名でもよかったのではないか。
ところで、映画のストーリーとは関係なく、
「モン族」がアメリカでこんなことになっているのかというのに驚いた。
モン族は中国では「苗族」、タイでは「メオ」などと呼ばれているが、
自称はHmong(モン)。
ラオスでは70年代、CIAに協力させられ、ケシ栽培=アヘン生産を行ういっぽう、
反共産ゲリラ用の兵士にされた。
そのため、ラオスの共産党政府から弾圧を受け、
大量の難民がタイに出た。
やがて、モン難民は欧米にも出て行った。
私がチェンマイにいたとき、モン族を研究する人が二人いて、
一緒に難民がつくった村に行ったこともあるが、
アメリカやフランスで育ったモンの男性がよく嫁探しに訪ねてくるという話を聞いた。
欧米では、女性はあっという間に新しい環境になじみ、
アメリカやフランスの価値観になっていくのに、
男は古いモンの気質や習慣が抜けないため苦労し、
また欧米化したモン女性と結婚できなくて
わざわざ教育も受けていない「古き良きモン」を探しに来るといっていた。
そういえば、別の機会に知り合いになった安井清子さんという東京外大でモン語を教えている人がいるが、
たしかアメリカまでモン難民のその後を追いかけていたと聞いたことがある。
今度会ったら、「グラン・トリノ」で描かれるモンはどれくらい現実に近いのか
訊いてみたい。

関連記事

no image

酒に呑まれる

エンタメノンフ文芸部分会(?)で 内澤旬子副部長と、上野界隈で飲む。 まずガード下の屋台街で、豚メイ

記事を読む

no image

ボロボロのデビルマンみたいなやつ

月曜日、ヒストリーチャンネルの取材が終わったあと、 探検部の現役学生3名と飯を食う。 うち二人はニュ

記事を読む

no image

また「テレビみたい」と言われるんだろう

日曜日の朝刊のテレビ欄で知ったのだが、 「ウルルン」の後番組として「地球感動配達人」とかいう番組がは

記事を読む

no image

マリンダは馬じゃない

(右絵:斜め後ろから見た、走り行くマリンダ) マリンダはどんな形をしているのか。 レース中であり、し

記事を読む

no image

朝青龍ミステリー

木村理子『朝青龍 よく似た顔の異邦人』(朝日新聞出版)を読む。 スポーツ選手に密着したルポものでは

記事を読む

no image

「王様のブランチ」撮影

『世にも奇妙なマラソン大会』(本の雑誌社)がTBSの「王様のブランチ」にとりあげられることになり、今

記事を読む

no image

ブックストア談は凄い!

「異国トーキョー漂流記」を大売りだししているユニークな書店「ブックストア談・浜松町店」へ行き、御礼

記事を読む

no image

なぜか今、コソボ

突然だが、明日から約2週間、旧ユーゴスラビアのコソボに行くことになった。 といってもコソボだけ

記事を読む

no image

ワット・パクナム日本別院

「おとなの週末」で始まる連載記事の取材で、 成田にあるタイ寺院「ワット・パクナム日本別院」を訪ねた。

記事を読む

no image

活字野球

この前のmixiイベントに月刊「野球小僧」(白夜書房)の編集長が来ており、 その後、野球小僧を4冊

記事を読む

Comment

  1. 義理の弟 より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 SH02A(c100;TB;W24H16)
    モン族といえば、Van Pao将軍のラオス政府転覆未遂事件が思い出されます。二年くらい前の話ですが、元CIAのアメリカ人が協力して武器を運ぼうとしていましたね。

義理の弟 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年12月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑