*

幻の旅人、復活!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


「旅行人」2010年上期号が届いたので、じっくり読む。
いつにもまして、マニアックな現地情報と美しい写真が満載で、
たいへんに満足。
「旧ユーゴ」の特集もよかったが、なんといっても今回の目玉は、
幻の旅人・小島剛一氏による「漂流するトルコ」だろう。
18年前に刊行された名著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)の続編である。
私が蔵前さんに紹介したことで実現した連載なので
わが事のように嬉しい。
トルコでの凄まじい拷問(性器や肛門への電気ショックなど)も衝撃だが、
フランスの警察も、当時は平気で拷問(三日三晩警棒で殴ったり警棒を肛門に突っ込んだり)をやっていたという記述に慄然とする。
孤高の天才、小島さんの途方もない語学力、民族学の知識、さらに日本語の文章の切れ味も
前作よりさらに磨きがかかり、ほとんどハードボイルド・サスペンスの世界だ。
こんな日本人の書き手がいることに感謝したい。
しっかし、「旅行人」はいまや年2回しか発行されず、したがって「連載」第2回目は
来年の6月ということか。
いくらなんでもそれは酷だ。
早く単行本にして読ませてくださいよ、蔵前さん。

関連記事

no image

『虐殺器官』の衝撃

つい先週、『天地明察』(角川書店)を読み、「今年日本の小説でこれ以上のものは読まないだろう」と思っ

記事を読む

no image

モンスタークエスト

今週はいろいろと忙しい。 月曜日は、ワセダで、アメリカの衛星放送局ヒストリーチャンネルの「モンスター

記事を読む

no image

紳士の日記

「紳士の日記」を標榜するバンコク発の月刊風俗誌「G-Diary」の100号記念永久保存版が送られて

記事を読む

no image

再結成?

携帯が鳴り、着信記録を見ると「公衆電話」。 いったい誰かと思ったら、探検部の後輩で、ワセダの三畳時代

記事を読む

no image

本の雑誌年間ベスト1

本の雑誌1月号が届く。 恒例の年間ベストテンの1位はあの新人の快著。 しごく納得。 あの秘境ノンフ

記事を読む

no image

アジワンが売れていた

高野秀行フェアをやっている丸善ラゾーナ川崎店を見に行った。 おしゃれな店のレジのすぐ脇でちゃんと展

記事を読む

no image

チェンマイに行きます

二日前、チェンマイにいる知人が病気で重篤な状態にあるという知らせを受けた。 ビルマ(ミャンマー)の反

記事を読む

no image

ダチョウ力

J-WAVE「Classy Cafe」という番組の収録。 いつものようにナビゲーターの質問にてきとう

記事を読む

no image

新企画持ち込みについて<関係者各位>

以前より私のところにはあちこちの出版社やテレビ制作会社・テレビ局より企画が持ち込まれているが、今年に

記事を読む

no image

サハラから八王子へ

やっとサハラマラソンの原稿が終わった。 どういう形になるかわからないが、本の雑誌の杉江さんに渡してお

記事を読む

Comment

  1. 蔵前仁一 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.1.6) Gecko/20091201 Firefox/3.5.6
    高野さんのおかげで、小島さんの原稿を掲載できて、まことにもって感謝にたえません。私も年2回の連載なんて、世界広といえどもうちだけなんじゃないかと思ってますけど、まあ、しょうがありません。でも、2回の連載のあとで、後は全部書き下ろしで単行本になりますので、お楽しみに。いつ出るかはまだわかりませんが、うーん、来年だといいなあ。高野さんも、うちの安い原稿料で書いて下さいね。

  2. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; WOW64; YTB720; GTB6.3; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30618)
    そうなんですか。
    ぜひ来年出してくださいね。
    私も来年は旅行人で書けると思いますよ。

  3. 蔵前仁一 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.1.11) Gecko/20100701 Firefox/3.5.11
    高野さん、ついに発売日が決定しました。
    『漂流するトルコ』続「トルコのもう一つの顔」小島剛一著
    9月5日発売 定価:本体2000円+税 四六判352ページ
    よろしくお願いします!

  4. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; en-US) AppleWebKit/533.4 (KHTML, like Gecko) Chrome/5.0.375.125 Safari/533.4
    楽しみですね!
    発売が近づいたら、あらためてお知らせします。

高野秀行 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

PREV :
寿司と酒
NEXT :
平凡妄想
no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑