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ノビシロマン

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

水泳に行くと、仲間というか先輩の方々から「高野さんはいいね、ノビシロがいっぱいあるね」と言われる。
先輩方によれば、私は、「クロールが力みすぎ」で、平泳ぎは「両足の蹴りがそろってない」、バタフライは「手が顔より先に水面に落ちている」、バックは「肘がおちている」、
しかもクイックターンができない。
「だからノビシロがいっぱい」ということなのだが、
それは単に「すごくヘタクソ」なだけではないか。
なにしろ、極端なことを言えば、泳ぎが全然できない人がいちばんノビシロがあるのだから。
それでもヘタクソでなくて、「ノビシロがある」と言われると嬉しくなるから不思議だ。
ノビシロというのは十年前にはなかった言葉で(だから辞書にも載っていない)、
おそらく封筒などの「糊しろ」と「伸びる」がごっちゃになってできた新しいスラングだと思う。
いい言葉ができたものだ。
今度「ノビシロマン」というエッセイを書くか。
永遠にダメな人間の日常を描いた非感動大作である。
ちなみに「カツゼツが悪い」のカツゼツも昔は聞かなかった言葉で、
これも辞書にはない。
(少なくとも私の持っている二十年前の広辞苑にはない)
たぶん、放送業界か芸能界の用語なのではないかと推測している。

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Comment

  1. 小林 純 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_5_8; ja-jp) AppleWebKit/531.21.8 (KHTML, like Gecko) Version/4.0.4 Safari/531.21.10
    カツゼツ(滑舌?)については、年配の人が知らないので、おかしいなと思っていました。やっぱりそうだったのか。
    でも高校生だった33年前にスカイセンサー(古い)でエアチェックした桂米朝師の噺のまくらに
    「カツゼツなんていいますな。」
    という台詞がありました。あれは当時、最新の先端をいく言葉だったんでしょうか?

  2. 歌川 より:

    AGENT: SoftBank/1.0/821SC/SCJ001 Browser/NetFront/3.3 Profile/MIDP-2.0 Configuration/CLDC-1.1
    話はちょっとそれます…
    テレビで聞いた受け売りです。とある人はずっと「糊しろ」を「糊、しろ」と勘違いしていたそうです。
    なんて命令的なんだと。
    そんな話を思い出しました。

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    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
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