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サッカーの合間に

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


井田徹治『生物多様性とは何か』(岩波新書)を読む。
新聞記者だけあって、著者はかなりよく整理して書いてくれているが、
それでもまだすごくわかりづらい。
生物多様性の範囲があまりに広いからだろう。
このわかりづらさをわかりやすく整理したい!という強い欲求にかられる。
山田先輩とのサッカー合宿が続いているが、ときおりその合間に「環境」についても
意見を交わしている。
先輩はかつて国連から名指しで「手伝ってください」とご指名がかかるほどの環境活動家で
植林やアグロフォレストリーの専門家でもある。
先輩は環境NGO「ナイルの会」というのを立ち上げ、私が雑用全般をやっていた。
一緒に何度もナイル川諸国、とくにルワンダに行った。
先輩は今の地球温暖化対策はおかしいという。
「温暖化が指摘されて久しいけど、いっこうにペースは落ちていない。
確実に温暖化が進んでいる。
なのに、これ以上温暖化が進んだら大変だ、大変だというばかりで、『温暖化がさらに進んだらどうするか』という対策はさっぱりだ。
温かい気候に適した作物を選んで植えるとか、温暖化で被害を受ける人たちの生活を考えるとかもっとそっちのほうにカネと労力を使うべきじゃないのか」
言われてみれば、そうだ。
地震にしろ台風にしろ、どんな天変地異でも、「もし来たら…」の備えは必要だ。
だいたい、温暖化の原因も「二酸化炭素説が有力」なだけで、別の原因の可能性だって
なくはない。
ただ、一心不乱にCO2削減をしているだけでは、もし別の原因だった場合、完璧にアウトである。(CO2自体も減ってないけど)
先輩は言う。
「人類は自然界の一員なんやから、それに従うしかないときもあるやろ」
まあ、サッカーの合間にそんな話もしているわけである。

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  1. LP より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; en-US) AppleWebKit/533.4 (KHTML, like Gecko) Chrome/5.0.375.70 Safari/533.4
    既にご存知かもしれませんが、ビョルン・ロンボルグという経済学者が、「今の温暖化対策は費用対効果で全く合わない。」という主張をされてます。
    またその多額の費用を使えば、もっと実行可能な対策があると提言されてます。
    将来の温暖化が起こる事を受け入れて、何をすべきかを考えているという点で、山田先輩の意見に近いのではないでしょうか。
    地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す [単行本]
    ビョルン・ロンボルグ (著), 山形 浩生 (翻訳)

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    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
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