魔術的リアリズムのブラジルサッカー
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様

アレックス・ベロス『フチボウ—美しきブラジルの蹴球』(ソニーマガジンズ)は
実に面白い本だった。
サッカーのことしか書かれていないのに、これほどブラジルのことがよくわかる本はない。
ブラジルのサッカーがテクニック重視なのは、昔白人と黒人が接触するのを嫌がったため
(下手に白人に触れると報復されたという)じゃないか、あるいは足技のみの格闘技「カポエイラ」に
影響をうけたのではないかなんて書かれている。
カポエイラは、黒人奴隷が両手を縛られた状態で闘うために編み出したと伝えられている。
なるほど、サッカーは両手が縛られた状態に似ている。
そのほか、ブラジルのサッカー協会にあたる組織の腐敗ぶりがすさまじい。
ナイキと10年で1億6千万ポンド(現在のレートでざっと350億円)という途方もない金額で契約したのにもかかわらず、その金がどうなったのかよくわからないという。
呪術合戦もアフリカより激しいみたいだ。
相手チームに呪いをかけるためにピッチに蛙を埋めたり、その呪いをとくために、ピッチを全部トラクターでほっくりかえして蛙を探したりしているという。
とてもノンフィクションを読んでいるという気がしない。
ガルシア=マルケスの小説にずっと近い。
これでまた一歩、真のサッカーファンに近づいたと言いたいが、
実際にはサッカー云々よりブラジルファンになりそうである。
☆ ☆ ☆
千葉県松戸にある難民のシェルターを訪ねた。
ミャンマー、ギニア、コンゴ(旧ザイール)、コソヴォの人たちと話をする。
たいへんに刺激的だ。
今後、ここと交流を深めることとする。
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