ふがいない僕は空を見た
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
窪美澄(くぼ・みすみ)『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)を読む。
最初の「ミクマリ」という短篇で「女による女のためのR-18文学賞」という新人賞を受賞し、
そのあと続きを連作の形で書いたらしいが、
驚嘆のおもしろさだった。
これが新人なのだろうか。
今年読んだ小説の中ではベスト1だ。
世の中にはまだまだすごいやつがいる…。
☆ ☆ ☆
いつものようにドトールで仕事をしていると、向かいの席に座ったおじさんに
若者がつかつかと近寄った。
若者はおじさんにびったり顔をつけるようにして、何か言っている。
はじめ、私はおじさんがどこかの大学の先生で、若者が教え子の学生なのかと思った。
だが、どうやらちがうらしい。
おじさんは困惑している。赤の他人のようだ。
この時点で私には彼らの話し声はよく聞こえなかった。
すると若者は突然、ポケットからトランプを取り出して大きな声で言った。
「マジック、いいですか? マジック」
ドトールでトランプ手品を強要している若者。
あまりのシュールさに目が点になった。
だが、よく聞くと、日本語に訛りがある。
私は彼にこっちへ来いと声をかけ、「どこの人?」ときいたら「台湾」
「学生ですが今は夏休みでマジックの練習をしています」
なんでも昨日は原宿の道端でやっていたらしい。
「店の中で他のお客さんをマジックに誘うのはダメだよ」と言ったら、
「え、日本ではダメなんですか」と驚いていた。
台湾ではいいらしい。
ていうか、どうしてマジックなのかさっぱりわからないまま、若者は去っていった。
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エントリーに全然関係ありませんが、その後のワ国の状況を、現地に行った中国人が書き込んだ掲示板の内容を、日本語に訳した物が、安田峰俊さんのブログに載ってますよ。
http://blog.goo.ne.jp/dongyingwenren/e/7d61ab5168ff4134706cd7d24c940c83
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; .NET CLR 1.1.4322)
エントリーに関係ありますが、自分も手品や知恵の輪を見せたがって、
よく周りの人に敬遠さえれています。
さすがに全く知らない人にはしませんけどね。