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シリア入国

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

昨日、トルコのユーフラテスから離れて、
シリア領に入った。
エンギンともお別れ。
彼は私の『怪獣記』をトルコ語に翻訳したいというので、OKしておいた。
クルド関係の部分が要注意だよと言ったら、
「そんなの、てきとうにごまかすよ」と笑っていた。
トルコとシリアの国境は旅行者がほとんど来ないらしく、
バスもなければ両替屋もない。
国境貿易の長距離トラックが何十、何百と並んでいるだけ。
そのトラックの隙間にザックをぶつけながら歩き、
たった一台だけあったタクシーに乗って、アレッポに出た。
タクシーをてきとうに降りたら、どこに自分たちがいるのかわからなくなり、
古い遺跡のような町を石造りの建物にザックをぶつけながら、歩く。
日が暮れ、オレンジ色の電灯が金物に反射する光がまぶしい。
中東はあちこち行ったが、ここがいちばん「アラビア」の風情を残しているような気がする。
私の同行者は三人とも風邪をひいている。
町が埃っぽいせいもあるんだろう。
もっとも織田君は元気いっぱいで、観光に邁進し、
末沢は新品のカメラが壊れてしまったため絵を描き始め、それぞれ活動している。
森清は具合がよくなさそうだ。
彼の元気を取り戻すいちばん手っ取り早い方法は、
いい写真が撮れそうな場所へ行くこと。
明日からユーフラテス河の旅再開なので、きっと元気になるだろう。
ちなみにシリアでは基本的にgmailとfacebookを政府が禁止しているそうで、
「たまにラッキーだと見れるときがある」とか。
シリアは人はいいけど、政府は独裁で世襲。そんなの北朝鮮とシリアだけだ。
でもgoogleの検索はできるのだから、意味はよくわからない。

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  1. 天野 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; YTB720; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.04506.648; .NET CLR 3.5.21022; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 1.1.4322; YJSG3) chromeframe/7.0.517.44
    シリアはyoutubeも禁止ですよ。
    今年1月の話ですので、今は知りませんが。

  2. 天野 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; YTB720; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.04506.648; .NET CLR 3.5.21022; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 1.1.4322; YJSG3) chromeframe/7.0.517.44
    それと、ネットカフェに行ったらパスポート要求されました(ダマスカス)。
    wifiのあるホテルに止まるのなら問題ないでしょうが。
    (2泊3日のシリア旅行で5回シリア人に騙された天野より)

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    • 素晴らしい本でした!アウトサイダー青春記としても傑作ですね。こんなふうに一つの言語と真摯に深く向き合えるなんてマジで羨ましい。あと、やっぱり本当に凄い人や作品は制度の外(辺境)から出てくることを再認識しました。 https://t.co/JHWcSBWzfA ReplyRetweetFavorite
    • で、今気づいたんですが、「千葉ルー」の著者名を間違えてました。「斎東鉄腸」と書いてしまったけど、「済東鉄腸」でしたね。失礼しました。訂正します。 ReplyRetweetFavorite
    • 「千葉ルー」で思い出したのだが、私の知人は「千葉に何年も住んでいて日本語も話す言語研究者で今は故郷に帰っているルーマニア人」だった。彼女も「千葉ルー」だな。済東鉄腸さんのことを知っているかも。 ReplyRetweetFavorite
    • ハックは奴隷じゃなかったですね。すみません、間違いました。 https://t.co/S39LyxaidJ ReplyRetweetFavorite
    • 斎東さんはもっぱらネットやSNSを利用してルーマニア語を習い、「ひたすら現地で実践」という私の語学とは真逆に見えるが、そのやり方は手に取るようにわかる。ネットを通していながら、斎東さんも「現場主義」なんだと思う。 https://t.co/406lKPRFVW ReplyRetweetFavorite
    • 発売当初からずっと気になっていた話題作、斎東鉄腸著『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話』通称「千葉ルー」(左右社)をようやく読んだのだが、予想を上回る興奮と感動にとらえられた。言語と文学をこんな… https://t.co/CbvWvyPHWa ReplyRetweetFavorite
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