*

藤波辰爾の驚くべき腰痛秘話

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


『藤波辰爾自伝』(草思社)がなぜか版元から送られてきたので、
即読んだ。
 あまりにも意外性のない告白がかえって意外なくらいの不思議な自伝だが、
いちばん驚いたのは藤波が三十代半ばで深刻な腰痛に陥り、1年3ヶ月も苦しんだというくだり。
 横になっても痛みがひどいのでソファで睡眠はソファにすわってうつらうつらするのみ、
満腹になっても神経が圧迫されて痛むから食事も満足にとれず、
壁をつたってトイレに行ってもズボンを一人で脱げないから奥さんに手伝ってもらう…。
 もちろん、ありとあらゆる治療法を試していて、そうなのだ。
私とは比較にならない悲惨さで、本人が「自殺も考えた」というのがよくわかる。
 
 治った経緯がこれまた驚き。
 どうやら本人にも一体何の治療が効を奏したのかよくわかっていないようだが、
(もっとも藤波の人生というのは本人にも理由がわからないことだらけである)
腰痛が改善の兆しを見せたと同時に、藤波本人がお産でとりあげたウィリーという愛犬がみるみる衰弱、
その犬の死(4歳)とともに腰痛は全快してしまったという。
「ウィリーが僕の痛みを取り除いてくれたのだとしか思えない」と藤波は語っている。
まるでスティーブン・キングの小説みたいな話だ。
腰痛はまったくもって摩訶不思議である。

関連記事

no image

これからちょっとソマリランド

本日より約1年4ヶ月ぶりのソマリランド行きである。 帰国は今月の26日の予定。 おや、と思わ

記事を読む

no image

法隆寺の謎

武澤秀一『法隆寺の謎を解く』(ちくま新書)を読む。 インドの聖地を歩いて回った建築家が建築学と空間

記事を読む

no image

ヒマラヤのイエティは神戸で飼育されていた!?

最近、さまざまな未知動物について調べているが、 私が知らなかったことがすごくたくさんあり、 驚きの毎

記事を読む

no image

漂流するトルコ

小島剛一『漂流するトルコ』(旅行人)をついに読んだ。 もともとは私が小島先生に「(名著『トルコもう

記事を読む

no image

楽しい南米

ペルーのマリオ・バルガス=リョサがノーベル文学賞を受賞した。 私が親しみ、著作を何冊も読んでいる作

記事を読む

no image

日本冒険界の奇書中の奇書

(昨日からのつづき) 「冒険家の藤原さん」で「イリアン」といえば、思い出すのは峠恵子の「ニュー

記事を読む

no image

新刊ラマダン

「在庫一掃読書では本は減らない」という指摘を友人から受けた。 なるほど、それもそうだのだけど、 新

記事を読む

no image

フリーランスの志士

家に攘夷モノがないか探してみたら、藤沢周平『回天の門』(文春文庫)に気づいた。 千葉道場きっての剣

記事を読む

no image

純文学とエンタメのあいだ

三崎亜紀『廃墟建築士』(集英社)を読む。 『となり町戦争』『バスジャック』を読んだときにも思ったが

記事を読む

no image

書店員の書いたプロレス&格闘技ミステリに感涙

大阪の書店でトークイベントを行ったとき、すごく変わった人に出会った。 書店員なのだが作家でもあ

記事を読む

Comment

  1. KOW より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB6.6; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    藤波の腰痛は「あー、これは本当にダメかも」と
    当時のプロレスファンが思っていたくらい重症でしたよね。
    あと一時期、斜に構えたプロレスファンの間では
    (具体的にいうと吉田豪系のファン)
    藤波ゆかりのものを手に入れると呪われるという
    蛭子さん並の負のオーラがネタにされていました。
    いやまさか、ガチだったとは……。

  2. spanner より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X; ja-jp) AppleWebKit/312.9 (KHTML, like Gecko) Safari/312.6
    ボクも腰痛持ちなので、腰痛探検家とあわせて読みたくなりました。
    試合中にボデイスラムでマットに叩き付けられて、腰をさする藤波さんの姿が思い出されます。
    ところで高野さん、朝j-wave出てました?
    声になじみがないので聞き流していましたが、インタビュー後の別所さんのコメントで、あれっ!?もしかしてってなりました。

  3. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    「もっとも藤波の人生は本人にも理由がわからないことだらけである」と云う下り、サイコーです!まさに「無我」。

コシチェイ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年11月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
PAGE TOP ↑