電話で追及される
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
ルワンダ人の友人、カレラから電話がかかってきた。
以前、私が環境NGOを手伝っていたとき、ルワンダの首都キガリで知り合った。
それからもう八年がたつ。
カレラは頭のきれる、陽気で、やたらせっかちな男で、太陽発電の技術者のかたわら、
山に木を植える環境保全活動をずっと行ってきた。
初めて会って、彼のプロジェクトサイトを訪れたとき、
「早くしてくれよ、時間がないじゃないか」「もっとてきぱきできないのか」などと言われて、ほんとうに驚いた。
私たちがアフリカの人たちにそういうことはよくあるが、
アフリカ人から言われることはなかったからだ。
同行していたアフリカ歴二十年の先輩も「こんなやつは初めてだ」とたまげていた。
彼は今、フランスのマルセイユにいる。
一昨年、フランス企業の研修でフランスにやってきたまま、もうルワンダに帰ろうとしないのだ。
「いまルワンダ国内の状況はひじょうにわるい」という。
12年前に虐殺された側であるツチ族が復讐をはじめているとカレラは言う。
カレラとしては、この機会にフランスへ移住し、家族も呼び寄せたいと考えているようだ。
現在は難民申請中で不法滞在ではなく、最低限の衣食住は確保されているが、
労働ビザがないので、何もすることができないという。
だから、私にメールをごんごん送ってくるが、フランス語で文章を書くのが
難儀なので放っておくと、今度は国際電話がかかってきて、
「どうしてメールの返事を寄こさないんだ?」とフランス語で追及される。
フランス語なんて完璧に忘れているのでこちらも相当難儀である。
フランスでは今、移民の規制が強化されていて、
彼の難民申請はかなり厳しいらしい。
フランス政府よ、カレラに早く難民の認定をしてやってほしい。
「追及」の電話を受けるのは私としても辛いのだから。
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