*

エル・ニーニョ

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

レイモンド・チャンドラー『リトル・シスター』は、訳はいいんだけどいかんせん原作がぐちゃぐちゃの失敗作。
次に買った明石散人『東洲斎写楽はもういない』は20年前の文庫をそのまま新刊単行本にしたというふざけた企画にまんまとひっかかってしまったうえ、初っぱなから意味がとれない文章だらけで、珍しく頭に来て読むのを止めた。
で、口直しに中島京子『エルニーニョ』(講談社)を読む。
21歳の若い女の子が同棲していたDV男から金を盗んで南国(九州)に逃走、
そこで同じく何者かから逃げているフィリピン人とのハーフの男の子(7歳)に会い、
二人で逃走しつつも、地元の人々との触れあいを通して癒されていくロードムービー…。
なんてあらすじを説明すると陳腐だし、他に何も仕掛けらしいものはないのだが
これが実にいい。
ナカキョーの淡々とした名人芸が冴えわたっている。
柄にもなく「浄化」という言葉が浮かんでしまった。
すさんだ心を浄化させたければ本書を読むことをお勧めする。

関連記事

no image

やさしい日本語

以前一緒にミャンマー新聞をつくっていて、今は難民認定を受けているミョウさんと 8年ぶりくらいに会う。

記事を読む

no image

猫又とペシャクパラング

TBSラジオの「安住紳一郎の日曜天国」という番組に出演。 アフガニスタンのペシャクパラングについて話

記事を読む

no image

『アジア新聞屋台村』続編?

以前、アジア各国の新聞を発行しているエイジアンという不思議な新聞社で働いていたことがあり、その顛末を

記事を読む

no image

まだやる気なのか?

集英社に行き、ムベンベ映画化を目論む映画監督アベ・ユーイチ氏とプロデューサーでネルケピクチャーズ役員

記事を読む

no image

名探偵なき大巨篇ミステリ

最近小説が読めなくなっていると前に書いたが、 とくにミステリはダメだ。 なにしろリアルでは原発や放射

記事を読む

no image

不思議で贅沢な春の晩

以前、コンゴ(旧ザイール)の障害者バンド「スタッフ・ベンダ・ビリリ」を日本に呼び、 そのライブに私

記事を読む

no image

イスタンブールは遠い…

再び成田空港に行き、今度はちゃんと飛行機が飛んだ。 が、ドバイに着いたものの、日にちがずれたためイ

記事を読む

no image

元「たま」の石川浩司氏とトークイベントのお知らせ

元「たま」のランニングこと石川浩司氏とイベントを行うことになりました。 前に何度もイベントを企

記事を読む

no image

私の名は紅

前から気になっていたケン・フォレットの世界的ベストセラー『大聖堂』を読み始めたのだが、 物語はとく

記事を読む

no image

謎の独立国家ソマリランド大吟醸拾年古酒

仕事場にしている「辺境ドトール」は昭和の世界だ。 店長夫妻が常に店におり、私たち常連の客と交流

記事を読む

Comment

  1. 吟遊主人 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_6_5; ja-jp) AppleWebKit/533.19.4 (KHTML, like Gecko) Version/5.0.3 Safari/533.19.4
    ご活躍を遠くから嬉しく眺めております。高野さんの本だけは、イワユル普通の本屋で買って読んでます。大むかし秩父(だったと思う)で少し遊んでもらったことあります。もし三重県津市近辺に来る機会がありましたら、気楽に寝られる物置小屋がありますので、失礼な対応でよければ高野さんの日本の宿百賤に入れておいて下さい。お体に気を付けてこれからも楽しい作品を世に送り出してください。期待しています。

  2. 主人 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_6_5; ja-jp) AppleWebKit/533.19.4 (KHTML, like Gecko) Version/5.0.3 Safari/533.19.4
    上記URLが違っていたようです。すいません。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑