予選リーグ第一節G組

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フランス(0) – (0)スイス

なんとなくタイプが似ている両チーム。予選リーグでも引き分けに終わり、まだ決着が着いていないだけに注目していましたが、おもしろかったどうかというと疑問が残りました。それにしても、イエローカードの多い試合でしたねぇ。
フランスは、欧州諸国で活躍する多くのタレントを抱えていますが、そのほとんどはベテラン級の選手。おのおのの能力はきわめて高いのですが、ナショナルチームになった時に決定力があるかというと、そうとも言い切れません。たしかに、ジダンのパスセンスやアイデア、アンリの独特なリズム感等、目を見張るものがありますが、チームとしてのサッカーがおもしろいかというと、そうでもありませんでした。華麗でハイレベルのサッカーなんですが、なぜか感動がありません。よもや日韓大会の二の轍を踏まないとは思いますが…。
逆にスイスは若手中心で、小気味よい場面が何回もあり、決定的なシーンが印象に残りました。しかし、前半は攻撃に押され気味、後半は守備を崩せず、なかなか良さを発揮できませんでした。またもや決着が着かなかったを是と見るか否と見るかといったところに、勝ち抜けのキーワードがあるような気がします。

韓国(2) – (1)トーゴ

連日の試合観戦による寝不足が、ここになってたたってきました。この試合、22:00からだというのに、半分寝ながら見てしまいました。。。

韓国は相変わらずの精神力の強さで、先行されたにも関わらず逆転し、見事に勝ち点3をもぎとりました。まぁ、元々韓国は勝つだろうと信じて疑わなかったので、順当と言ったところでしょうか。それにしてもこの不屈の精神力、日本も見習ってほしいもんです。
トーゴは初出場なので注目はしたいのですが、あまりぴんときませんでした。今年に入ってからの監督交代劇等で、実際のW杯対策期間は1ヶ月ほどしかなかったようですね。第2節以降に期待したいところです。
このグループは、はっきり言ってあまり興味がないんです…(4カ国のファンの方々スンマセン)。大方の予想はフランスと韓国だとは思いますが、ここはあえて、韓国が筆頭、次いでスイスにしておきます。

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予選リーグ第一節F組

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日本(1) – (3)オーストラリア


んんー…。やはり落胆は隠せません。あとはクロアチアには必ず勝つ、ブラジルにも最低最悪引き分けしかなくなりました。負け方としても、ラスト5分で3点も入れられての逆転負けという、あとを引くような重い負け方なので、もう今日のことは完全に切り捨てて次節に臨むしかないでしょう。
日本の内容はけっこうよかったと言ってはいましたが、僕は開始早々から「おいおい、大丈夫かなぁ」と気が気でなりませんでした。スタミナを温存するためか、前半20分間の動きが緩慢だったこと。高さのある相手の封鎖のために、三都主が攻撃上ほとんど機能していなかったこと。そして、日本のサッカーがどういうものかが、はっきり出ていなかったこと。これらが敗因ではないかと思います。
 やはり強国と言われるチームは、たとえ勝てないとしても、確固たる自国のサッカーを持っています。また、初出場であっても何が何でも勝ちにいくという、強烈な精神力を持っているチームもかなりいます。日本は、そのいずれもが中途半端だったような気がしました。
 ただ、過去を振り返っても、サポーターをハラハラさせながら最後の最後で奇跡を起こすというシチュエーションが何回もあったのは確かです。神風とは言いませんが、大和魂で精一杯応援しましょう!
オーストラリアは、32年ぶりなのでほとんど初出場といってもいいと思いますが、試合巧者だし、暑い中でも崩壊しないサッカーをすることに長けています。これはひとえに、ヒディンク・マジックのおかげかもしれませんね。それと、やはり高さが半端じゃないことが身にしみてわかりました。高けりゃいいっていうもんじゃありませんが、意外に動きはキビキビしていて、フットワークも軽いのが強みです。
 日本にとっては、勝利をもぎとっていったにっくき敵ですが、王者ブラジル・鉄壁クロアチア相手にどこまでいけるか。けっこう興味津々です。

ブラジル(1) – (0)クロアチア


当然、F組所属の各国民は大注目していたと思いますが、予選第一戦でブラジルがどこまで本気を出すかがかなり疑問だったので、僕は流しながら見ていました。

ブラジルはやっぱりブラジル。今更言うまでもなく、きら星のようなスターがあふれるタレント軍団です。でも、勝ってあたりまえっていう不文律があるので、あまり楽しめませんでした。「なめとんのか、わりゃー!」と思えるくらい動かないし。ブラジルが本気を出すのは、トーナメントからなのかな。
 でも、ブラジルファンの方々には申し訳ありませんが、気が付いたら準々決勝敗退ってことも充分考えられます。今回はヨーロッパが舞台になっていることもあり、僕はなんとなくブラジルの優勝はないと思っています。
クロアチアは、フランス大会のとき、初出場にしてフランス・ブラジルに次ぐ第3位という、輝かしい奇蹟を成し遂げたチームです。しかも、両国をさしおいてスーケルという得点王も輩出しています。今回は内容的にあまり感動はありませんでしたが、その堅い守備はやはり健在ですね。
 日本と同じF組でなければ、チェコやスウェーデンと同じくらい応援していたと思いますが…。
W杯には大番狂わせはつきものです。何が起こるかわからないというのは、今大会ですでにいくつも証明されています。ただ、ことブラジルに関しては、予選リーグについてだけいうと順当と言わざるをえません。このグループは、日本人の誰もが「勝ち抜けはブラジルと日本」と信じてやまないと思いますが、世界的な目で見ると、やはりブラジルとクロアチアなのでしょう。しかしながら、日本だけは、大番狂わせを有効に使わせてもらって、勝ち抜けすることを願ってやみません。

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予選リーグ第一節C組

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アルゼンチン(2) – (1)コートジボアール

正直言って、アルゼンチンのサッカーはあんまり興味なかったので真剣には見ていませんでしたが、けっこうおもしろい内容でした。
アルゼンチンは、意外と組織的で堅実なサッカーだと思いました。特に守備に関してはその意識が高く、決定的な場面も何回かありましたが、攻守の切り替えが早く、スッと戻ってきてはゾーンを作って穴を開けさないといった徹底ぶりは、ブラジルには見られない面だと思います。GKの奮闘にも救われましたね。
 あと、クレスポ・リケルメ・サビオラの動きはもちろんいいんですが、左SBのソリンが至る所で非常に効いてると思いました。
コートジボアールは、初出場とは言え、ヨーロッパ各地で活躍する選手を多く抱えたタレントの宝庫です。あわや得点かといったシーンも数多く、しなやかというよりは強靱な肉体の強さにはホレボレします。特にドログバは、一人で5人に囲まれながらもラストパスを出すというシーンも見られましたね。
 後半はコートジボアールの方が押していたし、崩して崩して得点という点では、むしろコートジボアールの方に分があったと思います。

セルビア・モンテネグロ(0) – (1)オランダ

「攻撃のオランダvs守備のセルビア」と言われる中でのキックオフ。セルビアは、僕の大好きなストイコビッチがいた旧ユーゴからの流れがあるし、オランダは超攻撃的な集団。この試合も非常に楽しみにしていました。結果的にもとてもおもしろい試合だったと思います。
オランダは、ピッチをタッチラインギリギリのところまで広〜く使って、ダイナミックな展開をしていました。特に前半は、攻撃になった瞬間に、いったいどこから湧いてくるのって思えるほどすぐにスペースに入り込んできて、前衛が常にW型かM型になるようにポジションニングしていました。おかげで、守備に定評のあるセルビアもついていけませんでしたね。フリーキックの多彩さも見所の一つでした。
 後半はロッベンの孤軍奮闘という感じではありましたが、ドリブル突破だけではなく、もう少し人に預ければ得点になったのに、という場面もありました。でも、とにかくおもしろいサッカーです。
セルビア・モンテネグロは、ファンタスティックでもあった旧ユーゴのサッカーを一新し、組織的な守備中心のカウンター攻撃に一新したようです。しかし、3トップで超攻撃的なオランダにあっては、カウンターはもちろん、中盤の組織力もなくなっていました。
 後半は幾分持ち直して、トップからプレッシャーをかけられるようになりましたが、全体的に翻弄されたといった感じでした。
いやー、このグループはわかりません。それぞれに特徴のあるサッカーをするし、今回破れたチームも致命的な弱点があるというわけではありません。はっきり言って、相手国との相性とか戦術のぶつかり合いでどうにでもなるといった、まさしく死のC組です。希望的には、オランダとセルビアに勝ち抜けてもらいたいんですけどね。

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予選リーグ第一節B組

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イングランド(1) – (0)パラグアイ


キックオフ直後のオウンゴール+パラグアイの正GK交代劇で、イングランドの圧倒的リードで進むと思われましたが、膠着状態が長引いて、全体的にピリリとしない試合でした。予選リーグは「いかに多くの勝ち点を獲得するか」「いかにしてトーナメントで苦しまない対戦相手と当たるようにするか」という大前提があるということを、あらためて知らしめしたような一戦でした。見てる方は、いつでもアグレッシブなプレイを見たいですけどね。
前半途中までは、さすがにイングランドの中盤という場面も多く、逆サイドへのフォローも申し分ありませんでした。最終ラインの守備は完璧だし。しかし30分以降80分くらいまでは、パスミス・集中力の欠如が目立っていました。
 全体的に穴は見あたらないのですが、決定力ということを考えると、タレントが揃っているだけに物足りなさが否めません。ベッカムはもちろんですが、左サイドのJ.コールの動きがもっともっと生きればなぁ思いました。
パラグアイは、開始直後の大ピンチもなんとか耐え、最後までしぶといサッカーをやっていました。後半は、ほとんどパラグアイ主導で、確かに攻めあぐねてはいましたが、バルデスを中心に果敢な攻撃をしていたと思います。
 チラベルト引退後でも、試合巧者というか、したたかなサッカーが健在という感じでしょうか。

トリニダード・トバゴ(0) – (0)スウェーデン


鉄壁の守備の上に、破壊力も抜群のスウェーデン。そして独立以来40年の悲願でW杯初出場を果たしたトリニダード・トバゴ。開始前から非常に楽しみにしていた一戦でしたが、予測も付かないサッカーの難しさが顕著に表れた一戦でした。
強豪スウェーデンは、3回目出場となるラーションと、長身ながら非常に器用なイブラヒモヴィッチの2トップに加え、ユングベリ・ウィルヘルムソンの両翼から次から次へ繰り出す波状攻撃は脅威。さらに縦パス・サイド攻撃・早いパス回しと、見所は充分です。4バックの守備に穴はなく、中盤の底にいるリンデロートが整え、その上のスベンションが組み立て、前線4人へ送るという、組織的にも完成されたものをもっています。しかしながら今回は、相手の必死の守備に翻弄され、点を奪うことができませんでした。細かいパスも多いので、暑い中では体力的な消耗が激しいのが唯一の弱点かもしれません。でも、好きなチームだけに、今後も大きな期待をしています。
トリニダード・トバゴは、一流のサッカーとは言い難いかもしれませんが、非常に強い精神力を感じました。相手を研究しつくし、がむしゃらな守備で「勝てないにしても絶対に点を入れさせない」サッカーに徹していました。キックオフ前の国歌が流れるとき、全員が晴れやかで自信に満ちあふれた顔をしていたことが、すでにこの試合を象徴していたのかもしれません。後半で一人少なくなったにも関わらず、初出場にして勝ち点1もぎ取ったことは、大きな収穫になったことでしょう。結果だけではない、サッカーという90分間のドラマにこみあげるものがありました。

強豪2カ国はふがいない内容に終わりましたが、まぁ順当にイングランドとスウェーデンが抜けるでしょう。ただ、トリニダード・トバゴは大番狂わせをするまでには至らないと思いますが、心情的に応援したくなりました。

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予選リーグ第一節A組

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ドイツ(4) – (2)コスタリカ

すんばらしい開幕試合でしたねー。点の取り合いもさることながら、それぞれのサッカーの特徴が出てて、ワクワクしながら観戦できました。
ドイツは、司令塔バラックが不在でしたが、国民の熱気と願いが乗り移ったようなゴール4本、どれもすごかった。特に1・4本目のミドルシュートは、「東欧のマラドーナ=ルーマニアのハジ」の無回転超ロングシュートを彷彿させるものがありました。クローゼの1点目も、素早い連携によるもので気持ちよかったし。
 守備は、欠点がそのまんま出たようなラインどりの甘さで2失点しましたが、まだまだ試合は続くので、改善されればと思ってます。
かたやコスタリカは、身体能力の高さと一瞬のスキを逃さない動物的なカンで、めまぐるしく動いていました。シュート数はわずか4本なのに2得点という、べらぼうな得点能力値もすごい。
 負けたとは言え、決して悪いサッカーをしていたわけではなく、次が非常に期待できる内容でした。

ポーランド(0) – (2)エクアドル

ポーランドは、パスミス・マークミス・連携ミスが目立って、正直いいとこなしでした。コソフスキーが入ってからの70分過ぎになって、ようやくかみ合い始めましたが、時すでに遅し。ポストに阻まれた2本の惜しいシュートも、運に見放された感じでした。
 イタリアよりももっと力強いカウンター攻撃が見られると期待してたんですが、決定的なパスを出したい時に人がいなかったり、ぽっかり空いた左スペースに入り込むのが遅れたりというのは、残念ながら致命的かもしれません。
エクアドルは、無意識もしくはファイティングスピリットのせいでしょうが、ちょいとファウルが多かったように思います。イエローには至らないにしても、「ええんかなぁ」みたいなシーンもけっこうありました。
 また、元来、両センターバックが上がってきてのサイドからの展開が得意なようですが、それもなかなか見られませんでした。1点目を生み出す直前の上がりで「なるほど」という場面はありましたが、特に前半は縦パスだけの大味な展開が多かったように思います。まぁ、ポーランドのカウンターを考慮してのことだとは思いますが。

ということで、第1節を終えた時点でのA組抜け国予想は、ドイツとコスタリカかなぁ。ポーランド、がんばれ!

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祝開幕!

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 いよいよ始まりましたー!!!
 先ほどオープニングセレモニーがありました。歴代王者達の勢揃いは興味津々でしたが、セレモニー全体としてはなんとなくジミでしたねぇ。まぁ、サッカーや開催国の文化に関係ないお祭り騒ぎをするよりは、すっきりしてて良かったかもですが。
 今回もさまざまなファンタスティック・プレーが生み出されることでしょう。街には、寝不足のお父さん達が増えて、飲み屋さんも売り上げが下がっちゃう、かな?
 一次予選を一回りしてみないとなんとも言えませんが、今の時点で優勝争いを少しだけ考えてみました。
 まずブラジルっていうのは、誰が見ても揺るぎないところでしょう。でも、それじゃディープインパクトの単勝1.1倍みたいで面白くないので、以下のチームに着目したいと思います。
・イングランド
・ポルトガル
・オランダ
 ブラジル以外ではイングランドが最右翼でしょう。ポルトガル・オランダは伏兵っぽいけど、いずれも超攻撃的なチーム。充分に優勝は狙えます。それぞれにスターもいるしね。特にポルトガルのフィーゴには、前回無念の涙を飲んだだけに要注目です。ブラジルは、なんとなくですが、今回優勝は逃すような気がしてます。
 あとは、着目というか応援してるのは以下。
・スウェーデン
・ポーランド
・ドイツ
 初出場組では、ウクライナかな。ドイツは開催国だし、カーンがサブキーパーになったとは言え、その大いなる粘り強さで、なんとか上位進出を果たしてもらいたいと思ってます。
 
 昼夜逆転生活が、まもなく始まろうとしてます。燃えますぜ!

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漫画水滸伝1

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 日本人にとって、漫画は大きな財産である。これは水滸伝という中国文学の訳本においても同様で、幾種類かの優れたテキストが刊行されている。
 前回は、小説によるお気に入りテキストを紹介したが、今回から数回にわたって、漫画で知ることができる水滸伝を紹介しよう。
横山光輝 水滸伝(潮出版社:本編1〜7巻+外伝)

 言わずとしれた横山光輝氏の水滸伝である。横山氏の中国関係の作品としては「三国志」「項羽と劉邦」「史記」等が有名だが、水滸伝もそれらに並ぶ。日本において水滸伝に触れる直接的なきっかけは、吉川水滸伝によるという人が最も多いと言われるが、おそらくこの横山水滸伝も5指に入るだろう。かくいう私も、実はこの横山水滸伝がきっかけでこの作品にのめりこんでいった。21歳の時だ。以後、ヒマがあると何回も読み返した。全8巻とは言っても、横山作品だけにセリフも多くなく、一日もあれば余裕で読み切ってしまう。
 別項で触れるが、水滸伝の原作には70回本・100回本・120回本の3種類が存在する。これらは、完結に至るまでの推移をどこまで描くかによって分類される。
 横山水滸伝は、7巻というごく短いストーリーの中で、最も長い120回本を手本として描いており、しかも入門書としては最もわかりやすいストーリーになっている。ただし、削除・簡略化の部分が相当数ある。初版が昭和44年で、漫画は子供達が中心に読む時代だったことも考慮されたのか、日本人の道徳観になじめなかったり、子供達にとって好ましくないと思われる残酷・官能なくだりは、バッサリ切り落とされている。いたしかたのないことだろう。
 絵のタッチも横山節そのものであるが、三国志や徳川家康等の他作品と比べても、よりいっそう子供向けな感じもする。
 水滸伝中最もおもしろいとされるくだりは、「武十回」といって行者:武松を描いたくだりである。ここは、お色気あり、大立ち回りあり、知的推理ありと、非常に生き生きとした10回分の説話だ。また、当時の中国社会を考察するに重要な価値がある描写にもなっている。しかし、横山水滸伝の本編には、この「武十回」はおろか、武松さえも登場しない。それを、外伝の方で独立してストーリー化しているのがなんとも心憎い。
 さらに、水滸伝の中でもわりと地味な存在である混世魔王:樊瑞・八臂那タ:項充・飛天大聖:李袞の三傑に的を絞って、横山氏ならではのフィクションを展開しているのも興味深い。この三人は、120回本の後半で歩兵の特殊部隊として活躍の場が多いが、108人が集結するまでの70回本ではほとんど出番がないだけに、なかなか見応えがある。
 現在では文庫化もされているので、「細かい部分はいらないけど、大まかな流れを知りたい」という向きにはおあつらえ向きではないだろうか。
——————————————————————————————
・行者:武松<ぎょうじゃ:ぶしょう>
 天傷星/第14位 歩兵軍頭領
・混世魔王:樊瑞<こんせいまおう:はんずい>
 地然星/第61位 歩兵軍将校
・八臂那タ:項充<はっぴなた;こうじゅう>
 地飛星/第64位 歩兵軍将校
・飛天大聖:李袞<ひてんたいせい:りこん>
 地走星/第65位 歩兵軍将校
※文中に出てくる108人の好漢は、注釈で簡潔な説明を加えます。
 以下凡例。
・あだ名:名前<あだ名のよみ;名前のよみ>
 宿星名/108人中での席次 主な役職
※八臂那タの「タ」=「くちへん」+「託」のつくり
(以降、このカテにおいてネット上で表記できない漢字は、文中ではカタカナ表記し、注釈で部首に分けて説明します。)

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モトノリアン・ブルー?!

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 天気がいいと、ちょいとお散歩に出たくなりますねぇ。
 家の近所に小高い丘があるんですが、そこに登ると風も光も心地いいので、気分転換にちょくちょく行きます。地平線の見える丘、ってなわけではないですが、四方空が見渡せて、少しだけ「地球は丸いなぁ」と感じたりします。

 雲一つない青空のときは、さらに気持ちいいですね。夜には満点の星が、元旦には初日の出が拝めます。
 別の方向へ歩いていくと、貯水池にかかる橋がメガネ橋になっています。故郷の鹿児島にも、似たような橋がいっぱいありました。

 四季の移り変わりって、思った以上に素直なんですね。今の季節、夜になるとカエルの鳴き声がそこらじゅうに響きわってます。田んぼからは多少距離があるはずなんですが、けっこう届くもんなんですねぇ。もう少しすると、虫たちの大合唱の中で心地いい眠りにつけることでしょう。
 こんな自然の中、「ロバのパン」ならぬ「走る給食当番」で揚げパンを買い、新曲のモチーフを書き連ね、好きな本にどっぷりつかる今日一日でした。

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土方隆行<ひじかた たかゆき>

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 僕はギタリストであるにもかかわらず、自分の中で、いわゆるギタリストのヒーローが存在しない。もちろん、好きなギタリストは一杯いるのだが、若い頃に多くの人が思う「こんなギタリストみたいに弾きたい」とか「このギタリストの生き方に感銘した」とかいう思いがなかった。どちらかと言うと、楽曲に共感したり、アンサンブルのすごさ・グルーブのカッコ良さにハマったりすることが多く、アイドルはバンドばかりだった。若い頃は、なにかとギターのフレーズをコピーすることも多いものだが、むしろリズムセクションがどうなってるかをひもとくことが多かったように思う。
 ある種特異な僕のギタリスト観だが、このギタリストだけは、素直に「すごい!」と思う。それが土方隆行だ。

MARGINAL LOVE

 僕が土方氏の存在を知ったのは「マライア」というバンドだ。日本のプログレッシブロックの草分け的バンドで、20歳前後の頃わけのわからないままにハマっていき、「MARGINAL LOVE」や「RED PARTY」を繰り返し聞いていた。その「MARGINAL LOVE」のどアタマに流れる、奇っ怪なギターリフのインパクトたるや! 今でも自分で曲を書くときに、そのフレーズが出てきてはアタマにこびりついて離れない。困ったもんだ…。それが土方氏との出会いだった。
 さてその土方氏だが、ソロアルバムとしては「Smash The Grass」「Atomic Rooster」「Full Moon」の3枚をリリース。さらに’83年には、プロジェクトとして「NAZCA」を結成。こちらも3枚のアルバムをリリースしている。
 また、スピッツ・河村隆一・ゴスペラーズ・エレカシ・TOKIO等を始め、数え切れないほどのバンドやソロアーティストをプロデュースしていることでも知られる。
 土方氏のギターは、よく「超絶技巧」と言われるが、僕はそうは思わない。たしかに、長年にわたるスタジオワークの経験を積んでいるのでテクニックはずば抜けているが、むしろファンキーで爆発的な肉体派の部分と、メロディアスで日本人的な繊細さを同居させていて、それを同時に表現できる希有なギタリストだと思っている。影響を受けたギタリストの一人がジェフベックとのことだが、僕はその通りだと思う。それに、楽曲とそのアレンジのセンスがすばらしい。
Smash The Grass
 この「Smash The Grass(グラスを砕け)」は、僕の中でもトップクラスに位置するFavorite Albumだが、そんな土方氏の魅力があますところなく散りばめられている。フェイドインで始まるファンキーなカッティング、それが最高潮に達したときのブレイクに響く「グワシャッ」と砕けるグラス音。直後の強烈なブラスセクションとリズム隊に身体が揺れている頃には、すでにこのアルバムの虜になっている。2曲目の間奏では、8本のギターだけによるバロック調の重厚なアンサンブル。当時はMIDIさえも世の中に出ていないアナログ全盛期なので、「レコーディング方法自体が不明だ」とアドリブ誌上に書かれていたことを思い出す。
 いたいけで純粋な少女がダイナマイトを抱え、そこに差し込む一条の光、というジャケットも意味深だ。
 全8曲と、現在にしては非常に少ない曲数だが、腹一杯になることもなく、空腹感もない。聴き終わった頃には、妙にホッとした気持ちになる。これは僕だけかもしれないが、このアルバム、もちろんファンキーだしプログレッシブだしサイケデリックなのだが、全体的に中世的な雰囲気が漂っていると思う。モノクロームの古いヨーロッパ映画を見ているような感覚にさえ陥る。

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しあわせな時間

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 昨日、20年来のFavoriteバンド「AB’Sのライブを見に行った。
 
 仕事がら、おつきあいや打ち合わせ・取材等でいろんなアーティストのライブを見に行く機会が多いが、ちゃんと自分でチケットを予約し、開場時間に入って、自分の本当に好きなライブを見に行くのって、何年ぶりだろう。ちょっとだけドキドキしながら、若い頃のワクワク感を隠しきれない気分で、渋谷のライブスポット「KABUTO」に入った。
 開場時間をほんの少し過ぎただけなのに、観客はかなりいる。ぐるりと見渡しても、自分と同世代の人たちがほとんどだ。間違っても中高生はいない。
 大好きなドナルドフェイゲンのBGMが流れる中、メンバーが無造作にステージに入ってきた。
 自分のアイドルがすぐそこにいる。25年ほど前、スペクトラムのファイナルで武道館に行き、だだっ広いステージで光を放っていたあの人たちが、手を伸ばせば届きそうなところにいる。そんなミーハー的な気分も交えつつ、曲はスタートした。
 メンバー5人とも、すでにいい年だ。そりゃそうだ、自分も45歳になろうとしてるんだから。そのいい年こいたおっちゃんたちが、実に楽しげに嬉しそうに演奏している。超一流の演奏がそこにあるが、そんなことより、曲に、雰囲気に、どんどん引き込まれていく。幸せな気持ちになっていく。
 曲間のMCも非常に楽しく、80人ほどのギャラリーと、日本を代表する名うてのミュージシャンが、実に屈託のない、和やかな空気に包まれた。腹の底から笑い、身体全体で興奮した。

会場で購入した「Single」

 昨年リリースしたアルバム「NEW」全曲を、その順番通りに演奏。曲数はわずか10曲。MCで、曲紹介やこれまでの生い立ち(?)・業界裏話等を交え、世代的にはそんなにかわらないんだなぁということを再認識した。あっという間に時が流れた。
 アンコールでは、「今日が誕生日の人のために」と、オリジナルアレンジの「Moon River」を、なんとアカペラで歌い上げた。メンバー全員がボーカルもやり、曲の至る所でコーラスを盛り込んでいるAB’S。絶妙のコーラスワークだった。最近ぽっと出のアカペラユニットなんかより数百倍も心にしみた。
 2回目のアンコールでは、曲目を用意してないということで、1曲目を再演。さらに盛り上がり、しわせな時間は通り過ぎた。
 言葉にするのももどかしいくらい、ほんとに最高だった。心を解放して音楽に接するって、何年ぶりだろう。じんわりとしたここちいい余韻が、終電の中まで残った。

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