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「編集」とは、実のところ何をしているのか(2)〜1枚の写真の裏側には膨大なボツの山がある〜

編集の業務の中で、ふだんの生活に役立ちそうなことを書いてみたいと思います。

前編「編集」とは、実のところ何をしているのか(1)はこちら

本の企画にゴーサインが出たあと、実際の本の形になるまでに、編集者の手もとには膨大な素材が集まります。

ちょっと列挙してみても……

  • 取材をメモしたノート
  • 取材を録音した音声データ
  • 場合によっては同時に撮影したビデオ
  • 下調べに使った本やウェブなどの資料
  • 取材相手の著書や作品
  • 取材時に撮影した膨大な写真(多いときは数千から数万点)
  • 著者やライターさんから送られてきた文字原稿や手書きの図版
  • イラストレーターさんに描いてもらったイラスト

(多分もっとある……汗)。

これらを整理分類して、1冊分の文字原稿と、写真、イラスト・図版などをまとめます。
これを単に「原稿」といったりもしますね。
この原稿一式をデザイナーさんに渡し、デザインをしてもらいます。

原稿一式とともに、編集者は台割(だいわり)と呼ばれる、ページの振り分けを書いた紙と、レイアウトのイメージを描いたラフをデザイナーさんに渡します。

台割は、本の設計図というべきもので、「●ページに○○の内容が入る」という指示になります。また、ラフは「文字と写真をどのように組み合わせるのか」編集者のイメージをデザイナーさんに伝える上で大切なものです。

デザイナーさんは、高度な技能と輝くセンスで、編集者の汚い手書きのラフ(私の場合…)より数万倍すばらしいデザインに仕上げてきます。
(毎回驚かされます。それが楽しみであったりもするわけですが(笑))

これをプリンタなどで出力したものをゲラといいます。

このゲラという言葉、galley(ガレー…中世ヨーロッパで使われていた手こぎの大型帆船)が語源になっています。
今はデザインにパソコンを使いますが、昔は鉛でできた活字を一文字ずつ組んでいました。この活字を並べていた盆状の板がガレー船に似ていたことからその名がつき、それを使って試し刷りした出力見本を「ゲラ刷り」と呼んでいたものが、さらに短くなって「ゲラ」となったんだそうです。

ゲラが出てくると、見た目には「おお!ほぼ完成!」のように見えるんですけれども、まだまだここから険しい道がつづきます。

というか、おそらく商業的な活字メディアと、個人ブログを含めたセルフメディアとの違いはここから先にあるといってもいいでしょう。

ゲラは著者、インタビュー先、関係者、校正を専門に行っている校正者さんなどによって事実誤認や誤字脱字をチェックする校正にかけられます。

場合によっては、本の企画趣旨と照らし合わせて、ページ構成をごっそり変更するような赤字が入る場合もあります。

特に、趣味や実用系の書籍だと、まったく知識のない人が読むことも想定に入れてつくるので、その業界では有名な事柄であっても一般的に知られていないものはひとつひとつ説明します。

「知っていることが前提」風な中身のゲラだと、

  • 初出なのでゆっくり説明したい
  • イラストで図解したい
  • ここの意味が分かりずらい

みたいな赤字で真っ赤っかになります(汗)。

いろんな人からの校正をまとめた初校の赤字。ゲラが真っ赤っかに染まっている。

そういった、校正の赤字が入ったゲラが各所から帰ってくると、これらを再びまとめ、つじつまを合わせ、デザイナーさんに修正を依頼。

なぜつじつま合わせが必要かというと、例えばAさんの赤字に「この写真をトル」と書いてあっても、Bさんの赤字には「写真の説明を追記したので、別紙原稿を挿入してください」というように相反する赤字が入っている場合があるからです。

Aさんの赤字を優先させるのか、Bさんの赤字を優先させるのか、そもそもその項目が必要かどうかなど、本全体を見渡して編集者が判断します。

こうした修正を何度も繰り返して、本の全体像が定まっていくのです。
時には著者や監修者、資料提供者、番組制作側などから「こだわり故の修正依頼」なんかも飛んできて、本全体にわたる大手術を施すことさえあります。
当初の構成案や、最初のゲラ(初校といいます)とは全然違うものになることも少なくありません。

最終的な完成品はたった1つですが、その裏には日の目を見ることのなかった制作物が存在しているのです。

表紙の写真1つとってみても、複数のデザイン案をもとに、膨大なカット数の写真が撮影されています。

その中から、表情や目線、雰囲気、色合いなど、もっともふさわしいものを選んで、それ以外はすべてボツとするのです。

この写真すごいな!と思う感動の一枚の後ろには、数万枚の写真がお蔵入りになっているかもしれません。

プロのフォトグラファーであってもそうなんです。

ですから、皆さんが写真を撮るときは、どうぞ自信を持ってバシバシとシャッターを

きってみましょう。

膨大なボツの山の中に、キラっと光る原石がきっと入っているはずです。

 

 

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