ナカキョーの文庫解説に感激
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
西芳照『サムライブルーの料理人』(白水社)を読む。
サッカー日本代表専属でワールドカップにも2回帯同しているシェフの話で
当然のように面白いが、気の毒なのはこの西さんというシェフがもともと
Jヴィレッジという総合スポーツ施設に勤務している料理長だということ。
Jヴィレッジは、「日本サッカー協会・Jリーグと東京電力がパートナーシップを結び、福島県楢葉町に建てられたもの」という。
つまり原発を建てた見返りに、東京電力がつくった数多ある施設やシステムの一つなのだ。
しかもここがサッカーのみならずテニス、トレーニングジム、ホテルなどを備えた日本初の総合スポーツ施設で、サッカーのブラジル代表なども来日時はここで合宿していたという。
本書は震災の直前に書き上げられたものなので(出版は4月)、
この施設を絶賛するところから話が始まっている。
むろん今は20キロ圏内で廃墟と化しつつあるのだろうが、
東京電力というのがいかに巨大な「旦那」だったのか痛感させられる。
さて、本書の中身はおもしろい。
選手は私よりずっと下の年代であるにもかかわらず、食事は和食が中心で
ともすれば私の両親の世代と同じくらい伝統的というか保守的な米食。
意外なようだが、イチローや松井も足繁く日本食レストランに通っているようだし、
どうも日本のアスリートは一般人以上に和食好きの傾向があるのかもしれない。
結局のところ、日本の一般家庭では、スポーツをやっている育ち盛りの少年少女が腹一杯食べるためには米食にならざるをえないのだろう。
外国のサッカーの代表はどんな食事を食べているのだろう。
誰かレポートしてくれないものか。
☆ ☆ ☆
『メモリークエスト』の文庫解説をお願いしていた中島京子さんから原稿が届いた。
日本を代表する小説家と数年来私が応援し続けている作家である。
やっぱり見る目がちがうし、文章の書きぶりもちがう。
鋭さと温かさが微妙なバランスでとけあっていて、感激だ。
中でも私のことを「和食における出汁成分みたい」と書いてあるところが笑ってしまった。
ナカキョーらしいとぼけたユーモアで、いや、これはもう家宝です。
こちらは7月7日頃発売なので、実際にお読みください。
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Jヴィレッジといえば原発作業員の待機宿泊場所になっているところですよね。
廃墟どころか、数百人の作業員が粉塵まみれで体を洗うこともできずコンクリの廊下で雑魚寝する、地獄の飯場として活況を呈しているはずです。
今はもう少しマシになってきていればいいんですけど・・。