モガディショで宮田珠己
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
ソマリランド&ソマリアでは、いろいろな理由で暇な時間がひじょうに長かった。
とくにソマリアの首都モガディショでは、一人で外に出るなど論外で、
かつての中国大使館を改造した要塞のようなホテルにこもっていなければならない。
そこからソマリランドに帰るフライトが延期され、でももう兵隊を雇うカネがなく、
丸2日ほど、文字通り籠城せねばならかった。
ひじょうに暇である。
でもここは電気が来ていれば無線LANが使える。
ここにはソマリア暫定政権の大臣や国会議員、それに海賊国家プントランドの政府高官や
知事などが泊まっている。もしくは住んでいる。
モガディショでは、自宅に住めるのは十分な数の武器と民兵を持っている戦国武将系の政治家だけで、非戦国系の政治家は自分の身を守るために、要塞ホテルに住まわざるをえない。
だから、当然無線LANくらいの設備はあるわけだ。
私は海賊系の政治家に、1日10ドルする無線LANのパスワードを教えてもらい、
「やった、タダでネットが見れる!」と喜んだ。
で、何を見ていたかというと、宮田部長のウェブ連載「日本全国津々うりゃうりゃ」だ。
これが面白いのである。
私は仲間うちの本(もしくは文章で)も、面白いと思わなかったら、絶対に紹介しない。
「うりゃうりゃ」は宮田部長の近年の作品の中では、いちばん味が出ていて、くだらなくて、奥が深いのか浅いのかわからなくて、ぐっとくる。
とくにパチンコの「海物語」にハマッているところにゲラゲラ笑い転げてしまった。
しょっちゅう銃声が聞こえているのだが、「それはそれ、これはこれ」なのだ。
まさか、モガディショでタマキングに浸るとは、人生わからないものである。
ちなみに、妻・片野ゆかが集英社のウェブで連載している「ゼロ!」も今のところとてもいい。
こちらはソマリランドで読んでいた。
犬猫の命を救うために戦う熱き公務員たちの物語。
犬を見ればとりあえず石を投げつけるソマリ人には決して理解できない話で、
これまた場違いだったが、文章は面白ければどんな状況でも楽しめるということを
再確認させられたのだった。
関連記事
-
-
電話不携帯のやめられない快適さ
帰国して拝受した本、第3弾。 『忘れられない一冊の本』週刊朝日編集部(朝日文庫)。作家や映
-
-
ドンガラさん、15年ぶりの緊急来日
私がかつて翻訳したコンゴ文学の名作『世界が生まれた朝に』(小学館、絶版)。 その著者であるエマ
-
-
妻がブータンに夜這いに…
今朝、妻がブータンに出かけた。 7月に引き続き2回目だが、今度は取材で二週間行くという。 「何やるの
-
-
個人的2011年ミステリ・ベストワンはこれだ!
最近の海外ミステリはとにもかくにも猟奇連続殺人事件が多い。 「サイコパスもの」とでもいうのか。 私
-
-
ぶったるんでるのか、それとも…
最近どうにも体調がわるい。 3,4年ぶりに腰痛が再発したのを皮切りに、これまた5年ぶりとも6年ぶり
-
-
「酒飲み書店員(中略)大賞」に選ばれた!?
最近人づてに聞いたのだが、拙著『ワセダ三畳青春記』が「第1回 酒飲み書店員共同企画文庫ベストセラー
-
-
タイの懐メロを熱唱してしまう
こちらに来て初めて飲み会に行った。 「アジアの雑誌」編集長の夢野狂作夫妻、同誌で辺境レポー
- PREV :
- 心身がついていかない
- NEXT :
- 加点法の傑作「ジェノサイド」



Comment
AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
お疲れさまです!昨日「VOW23」と「雪男は向こうからやってきた」を読みました。角幡さんには「こなかった」が、「来た」人たちの世界を垣間見た、と言うことかと。タイトルがすごく意味深長な作品です。