日本はフライ級ミステリの宝庫?
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
独裁政権下の小説を読みつづけている。
最近はオレン・スタインハウアー『極限捜査』(文春文庫)を読んだいたのだが、
設定は面白いにもかかわらず(スターリン死亡直後の東欧某国の警察官が葛藤する)、
あまりに重厚でギヴアップしてしまった。
ディフェンスの巧いスーパーへヴィー級ボクサー同士の試合を見ているようだった。
もっと動きのあるものを!と思って、今年評判の日本ミステリ、
柳広司『ジョーカ・ゲーム』を読んでみた。
いやあ、ビックリした。
どうしてこんなに軽いのか。
重力がおかしくなったような錯覚がしたくらいだ。
もっとも最初こそ軽さに戸惑うが、軽快な打ち合いが小気味よい。
こういうフライ級の小説はもしかしたら日本の十八番なのかもしれない。
そうそう、これも大日本帝国という独裁国家におけるスパイミステリという意味で
今の私の読書の傾向に沿っている。
関連記事
-
-
自意識が森に溶けていく
以前、本の雑誌の杉江さんが「すごいドキュメンタリーですよ!」と NHKハイビジョンでブラジルの先住
-
-
あなたの本職は何ですかと訊かれた
3月に、大野更紗さんが「わたくし、つまりnobady賞」という謎の文芸賞を受賞し、 私もその授賞式
-
-
角幡唯介はノンフィクション界の村上龍
昨日は東北から帰った直後だったせいか、いつになく「正論」を述べてしまった。 現地に一週間ほど行って「
-
-
週末イラクで壮大に脱力?
月曜日、朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」に掲載用に下川裕治氏と対談した。 下川さんとは初対面。
-
-
また「テレビみたい」と言われるんだろう
日曜日の朝刊のテレビ欄で知ったのだが、 「ウルルン」の後番組として「地球感動配達人」とかいう番組がは
- PREV :
- 謎の猿人ナトゥー
- NEXT :
- 5分で振り返る今年の出来事