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「激しくおもしろいブログ100」

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

 先週、突然見知らぬ人からメールが来た。
「あなたのブログは『激しくおもしろいブログ100』に選ばれました」という。
 書店で英会話のアンケートに答えたあと、「おめでとうございます。あなたは100人限定特別割引コースに当選しました」という葉書が届いたのを、思わず思い出してしまった。
 でも、こっちは金を払う必要はないので、どうも詐欺ではないらしい。
 メールによれば、これはライブドアパブリッシングなる出版社から(ホリエモン・グループか)三月末に単行本として発売されるんだという。
 要するに、ブログ・ガイド本なのだ。
ネットでの情報が氾濫しすぎてみんなが困っているので、それを紙媒体が整理整頓して、人々に「便利な情報」として提供する。
 本末転倒もいいところだ。
 前々から、「インターネットは発達すればするほど不便になる」と思っていた。
 インターネットは物理的制限がないのが圧倒的なメリットとされているが、実際はそれが最大のデメリットでもある。
 端的な例では、このブログもそのために始めたのだ。
 昔は「高野秀行」とヤフーの検索に打ち込めば、同姓同名の将棋プロ棋士と合わせても数十件しか出なかったが、今では千件を突破している。
 これではせっかく私の本や名前を知って、もっと読みたいと思った読者や、仕事を依頼したいという編集者がネット検索で正しく包括的な高野本情報にたどりつけないではないか。
 いまだに「高野くん、将棋もプロなんだってね。すごいねー!」なんて、感心されるし。そんなわけないでしょう!
 それでHP設立の必要性を感じたのだが、いきなりは手間がかかるので、場ツナギに立ち上げが容易なブログをやろう…。それが、このブログの始まりなんです。
 ネット情報の氾濫を防ぎ、正しい「高野秀行情報」を提供するために立ち上げたブログを、今度はブログ情報の氾濫を防ぎ、正しい「おもしろブログ情報」を提供する本で紹介するわけで、ほんと、わけがわからない。
 でも、その本を買った人は本の情報を頼りにブログを見る。そして、私のブログを見て、紙媒体である著書を買う(そうあってほしい)。
 なんだか、めちゃくちゃ面倒くさいぞ。
 人間は進化しているのか退化しているのかわからないが、一つ言えることは「ブログ100」に掲載を許可してしまったので、当分はこのブログを続けなければいけないということだ。
 こっちも面倒くさい。

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Comment

  1. nimura より:

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    めんどくさいと言わず、続けてください。
    楽しみにしていますんで。

  2. 小林 純 より:

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    すんげ〜おもろいブログなんで、選ばれたのもうなずけます。
    面倒かもしれませんが、今後もよろしくです。
    毎朝、最初に開けてますもんで。

  3. タカノ より:

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    いえ、もちろん続けますよ。
    面倒というのは言葉の綾です(笑)。

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