*

シリア・イラク国境地帯の驚異

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

ユーフラテス河沿いに進み、イラク国境近くの町にいる。
シリアの他の場所は砂漠ばかりだが、この河沿いだけはずっと緑で
豊か。しかし、大問題に悩まされている。
ドライバー付きのワンボックスカーを雇ったのだが、
このドライバーはおそらく年は60半ば、頭はすっかり禿げ、残った髪も真っ白。
ものすごく融通がきかず、神経質。
私たちが河を見たいと何度言っても、「そんなに河を見たがるのはおかしい」「遺跡を見るべきだ」と主張、どうしてもこっちの話を聞かない。
遊牧民のテントを見つけて、森が「止めて!」と言っても答えは「ノー」。
自分の知らないことや不得手なことは絶対にやろうとしない。
朝から晩まで一日中、言い争いが絶えず、車内は緊張感が漂っている。
だいたい、どうしてドライバーが雇い主の注文を拒否するのだろう。
「私は東大の考古学の××教授と××教授と一緒に仕事をした」が口癖だが、
運転手やってただけだろうが。
昼飯を食おうにも、「ここは清潔なレストランがない」と拒否。
こっちはそんなの気にしてないのにさー。
昨日は結局昼飯を食い損ねた。
きっとアッパーな学者や観光客ばかり相手にして
年を食ってしまい、いまさら私ら若造の言うことなど聞けないのだろう。
20才も年上ならしょうがないよね。
…なんて、みんなと話をしていて、ふと彼に年を聞けば「44歳」というので腰が抜けるかと思った。
同い年じゃないか!
向うも私が20才くらいの学生と思っていたらしく
びっくりしていた。
「年の差20」という認識だけは一致していたのだ。
毎度のことながら中東の人の老け具合には驚かされる。
ていうか、少しはこっちの言うことにも耳を傾けてほしい。
※メンバーの様子
織田君…旅をいちばんエンジョイしている。だいぶ旅行にも慣れて、
現地の人とのやりとりも堂に入ったもの。
スエッチ(末沢)…例によって柳に風、でも彼もけっこう生き生きしてきた。
森…彼だけがずっと体調がわるい。
写真もあまりよいものが撮れないらしく、部屋に閉じこもっていることが多い。
大丈夫だろうか。

関連記事

no image

霊能者、超能力者におねがい

先日、図書館教育ニュースという、学校図書館の壁に貼り出す写真新聞の取材を受けたのだが、 なにせカラー

記事を読む

no image

今明かされる「野々村荘秘話」

  新国劇の島田正吾が亡くなった。  「新国劇」など、私には何の関わりもないと思うだろうが、多少の縁

記事を読む

no image

異文化の二日酔い

何でも面白かったり気持ちよかったりすると歯止めが効かなくなるのが 私の悪癖だ。 「ほどほど」でいられ

記事を読む

no image

マイク・ノックのニュー・アルバムを試聴してみよう!

オーストラリア・ジャズ界の大御所にして、今でもバリバリ最先端の音楽を作りつづける義兄マイク・ノックが

記事を読む

no image

極東へ向かう

中東というのは日本から遠いとつくづく思う。 イランもそうだったが、シリア、ヨルダンでも、 現地のネッ

記事を読む

no image

こういうときこそ日常

あいかわらず地震のニュースはひどい。 でもあまり悲惨な映像を見続けていると精神的に参ってしまうので

記事を読む

no image

タマキングにカヌーを習う

先週の金曜日、またしてもタマキング(宮田珠己)と一緒に川へ出かけた。 私は来年初めにメコン川を二ヶ月

記事を読む

no image

他社の本を宣伝する出版社って…

今注目を集めているポプラ社の文芸ウェブサイト「ポプラビーチ」をたまに眺めているが、 いろいろな意味

記事を読む

no image

続・「クレイジージャーニー」とすしざんまい

昨日、ブログを書いたあと修正しようとしたけど、私のIT力の限界か、二度とログインできなかった。

記事を読む

『謎の独立国家ソマリランド』電子書籍版、ついに発売!

『謎の独立国家ソマリランド』が発売されてから早1年9ヶ月あまり。 ついに満を持して電子書籍

記事を読む

Comment

  1. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    森さん大丈夫かなぁ?頑張ってね!

  2. negi より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB6.5; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; Creative AutoUpdate v1.10.10)
    森さん心配ですね…
    とりあえず流れにゆだねて、ゆっくり体を休めてくださいね

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年5月
    « 3月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
PAGE TOP ↑