朝青龍ミステリー
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
木村理子『朝青龍 よく似た顔の異邦人』(朝日新聞出版)を読む。
スポーツ選手に密着したルポものではなく、モンゴル文化を専攻する東大の先生が書いた本だ。
正直言って、構成は粗く、本自体の完成度は高いとはいえないが、
そんなことはどうでもいいくらい、著者、木村さんのモンゴル体験は圧倒的に深く、そこから説明されるモンゴルと日本の文化比較は面白いの一言に尽きる。
朝青龍が起こした数々の「事件」がモンゴル人気質という角度からするすると解明されていくのは
上質なミステリーを読んでいるようだ。
その他、著者の木村さん個人の判断で、あやうくモンゴル人が大相撲でなく、新日本プロレスに流れていたかもしれないという「秘話」や、モンゴルには世界のウランの10%があると言われているなど、知られざる話も満載。
本書を読んで、ネットでもテレビでも新聞、雑誌でもなく、やっぱり「本」はいいと思った。
だって、モンゴル人を知る人にはこれほど自明なことが、一般のマスコミでは全く伝えられないからだ。
本書は読みやすくて文字数も少ないから1時間もあれば読めてしまうが、
それでも一時間、自分からその世界に没頭する書籍でなければ、
ちゃんとしたことは伝わらないのである。
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