送ってはいけない
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
昨日、東北ツアーから戻った。
ボランティアに行ったつもりだったが、結局「行かなかったよりか少しマシ」程度の
貢献しかできなかったような気がする。
それよりむしろ「勉強させてもらった」という感がつよい。
いつもながら、「現地」というのは遠くで想像するものと全くちがう。
書きたいことは山ほどあるが、ともかく今すぐお伝えしたいことをいくつか。
まず、「不要なモノを送ってはいけない」ということ。
私は南三陸町で物資の仕分けを二日間やったのだが、
莫大な援助物資を受け取るのに精一杯で、被災者に分配や供給が著しく滞っていた。
次から次へとトラックが全国から到着するから荷下ろしをしなければならず、
それだけで一日が過ぎていく。
自衛隊も物流業者も当然協力しているが、彼らは倉庫の中に入ったり
物資の仕分けには参加できないから、どうにもならない。
本部には死ぬほど物資があるのに、そこから2キロ離れた集落に行くと、入り口に
「水とカップラーメンを下さい」と手書きの紙が貼られていた。
配る暇と労力がないのだ。
もし丸一週間、南三陸町に何も援助物資が届かなかったら、ずいぶん作業は楽になり、
在庫もはけて、
各避難所や被災者のところにモノが行くことだろう。
これは南三陸町の場合だけで、他の被災地はわからない。
場所と日時によって、状況は常に変化していくからだ。
ただ一つ言えることは、確実に要らないというモノはあって、
それを送るのは被災者と関係者の負担を増やすだけだ。
私が見た中では;
・焼き肉のタレ(肉がない。調理する燃料もない)
・さつましょうゆ(九州以外の人には甘すぎる)
・乾パン(被災後一週間経てばもう不要)
などが顰蹙を買っていた。
いっぽう、喜ばれたのは「たくわん」。
被災後1ヶ月も経って、漬け物が入荷したのは初めてという。
意外な盲点らしい。
カップ麺もいまだに需要は高い。
また衣類の仕分けもしたが、
半分以上は捨てていた。
「東北のみなさん頑張って!」とか「ひとりじゃない!」とマジックで書かれた段ボール箱の衣類も、全部捨てた。
もちろん、その応援の言葉も被災者の人たちは目にしない。
それでも頑張って残していたのだ。
本当のところ、衣類が届いたとき、3回に1回は箱を空けずに全部捨てるのが現実的だろう。
なんせ千人ほどの被災者のために、衣類が一日に大きな段ボール30箱も届くのだ。
それも男ものと女ものと上着と下着と靴下が全部ごったまぜになり、
毛玉がついたりしわでよれよれになったりしているものばかり。
ここはゴミ処理場かいなという感じだ。
「なんでも着るモノがあればありがたい」という状態は被災後三日か四日で、あとは送るとしたら「原則、新品」だと思う。
被災者の人たちは精神的に参っているのだから、そこに他人が着古したものが山ほど来ると、げっそりするだけだ。
新品なら嬉しいし、ビニールの包装やタグが付いていると、男物か女物か子供ものかもすぐわかるし(古着ではその判別すら厄介)、サイズや素材もわかりやすく、被災者やボランティアにとって
ひじょうに便利で楽だ。
冬物はもう間に合っているから、春物、夏物限定で新品、それも自分が買って着たいようなものだけを選んで、急がずに送るのがベストだと思う。
ブランドものなら新古品でもOKだろう。
質の良い商品を送るというのも「心の支援」なのだ。
あと、いくら新品で自分が気に入っていても、個人的な趣味の押しつけはよくない。
たとえば阪神タイガースファンが、黄色に黒のど派手な虎応援Tシャツ(新品)を200枚くらい送っていたが、そんなの恥ずかしくって着られるかって話だ。
99%廃棄処分だろう。
杉江さんも浦和レッズの真っ赤な応援Tシャツ千枚差し入れとかは是非謹んでほしい。
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Comment
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確かに、実際に現地から戻られた高野さんに言われて、今更ながらに思い出しました。
阪神淡路の際も、現地で活動なさった方から同じコトを聞きました。
『不要なモノ、捨てるつもりのモノを送ってきたんじゃね〜の?これ・・・』
というような段ボールをたくさん目にしたと。
送る人の気持ちよりも、実際に役立つモノを欲している。
それが現実なんですね。
といっても、僅かな義援金しか援助できない私には、必要なモノを送ることさえ出来ていないのですが。
本当にお疲れ様でした。
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この話はすっごく重要ポイントだと思います。何が不要なのか、てことは報道されませんからね…大変参考になりました。
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古着は送らない、ゴミになるだけって一般常識かと思ってましたが
送る人がいるんですね。
漬物、確かに盲点ですね。
お疲れさまでした。
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ボランティア活動 お疲れ様でした。
被害は比較的少なかったものの、自宅が被災地にある身として感謝いたします。
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うーん。それは・・阪神ファンによる在庫処分でしょうね。
優勝を見越して作りすぎちゃったんでしょう。
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私も東京で物資仕分けをしました。古着は困り者ですね。
受け取った団体もその場で捨てるわけにもいかないし(産廃扱いになる?)
企業から新品が大量に届くのが、(仕分ける人にとっては)一番
楽だったです。 でも中には靴のインソールばかり大量に送ってくれる
企業もあって、「長靴が無いのにインソールだけ送ってどうするんだ」と
顰蹙を買っていました。