*

不思議で贅沢な春の晩

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


以前、コンゴ(旧ザイール)の障害者バンド「スタッフ・ベンダ・ビリリ」を日本に呼び、
そのライブに私を招待してくれた方が、
今度はまた別のアフリカのアーティストを日本に呼ぶことになったようで、
先んじて私にCDを送ってくれた。
バラケ・シソコ&ヴァンサン・セガール「チェンバー・ミュージック 〜コラとチェロとの室内楽」
なんとも聞き慣れない長い音楽家名とタイトルだが、フランスでは大ヒットになっているという。
一言でいえば「コラとチェロのセッション」である。
西アフリカ・マリの伝統弦楽器コラの第一人者とフランス人のチェリストがクラシックともジャズとも環境音楽ともつかない、不思議な音楽を奏でている。
アフリカは人も音楽も、おおむね陽気で明るいが、私が訳したドンガラさんの『世界が生まれた朝に』のように実はひじょうに哲学的ともいえる静的な部分もある。
このCDでも存在の奥の奥みたいな、不思議な静けさが堪能できる。
チェロと奥深さと摩訶不思議というつながりで、坂本弘道の名盤「零式」も続けて聴いた。
筍の煮物を肴に日本酒を傾けながら、贅沢な春の晩である。

バラケ・シソコ&ヴァンサン・セガールは5月31日から一週間ほど日本で公演を行うようです。

関連記事

no image

『「本の雑誌」炎の営業日誌』は「脳内三国志」だ!!

土曜日の夕方、昼寝をしていたら、杉江由次『「本の雑誌」炎の営業日誌』(無明舎出版)が届いた。 これは

記事を読む

no image

だから「吸うな」「飲むな」

 金曜日、アメリカで日本の小説やノンフィクションを翻訳出版しているバーティカルという出版社に売り込

記事を読む

no image

誘拐は困る

アフリカ・中東の紛争地取材の超ベテラン、大津司郎さんに8年ぶりくらいで会う。 もう60歳くらいのはず

記事を読む

no image

私は魔境に生きた

本の雑誌の杉江さんに勧められ、 島田覚夫『私は魔境に生きた』(光人社NF文庫)を読んだ。 ニューギ

記事を読む

no image

震災のリアルを超える傑作

本屋大賞を受賞した『謎解きはディナーのあとで』という本を私はまったく見たことも聞いたこともなかった

記事を読む

no image

おもしろくないことがおもしろい

キタ帰国の二日後、つまり6日から9日まで沖縄に行ってきた。 10年以上前、大連に短期留学をしたときさ

記事を読む

no image

タイの黄金のバーミヤン

バンコクから入り、西のラッブリー県というところに行った。 観光客はほぼゼロだが、なぜかバーミヤンみた

記事を読む

no image

びっくり!

 昨年11月に何度か上映会を行ったが、そのときこのブログを通じて、 私に直接「上映会を見たい」とメー

記事を読む

no image

この地獄を見よ

丸善ラゾーナ川崎店のエンタメノンフフェアに触発されて 仕事もそっちのけで読みまくっている。 この二

記事を読む

no image

また増刷

「異国トーキョー漂流記」(集英社文庫)の増刷が決まった。 これで三ヶ月連続で増刷だ。 運がよすぎるの

記事を読む

Comment

  1. 小林 純 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_5_8; ja-jp) AppleWebKit/533.20.25 (KHTML, like Gecko) Version/5.0.4 Safari/533.20.27
    これは大いに興味があります。むかし、マリの宮廷音楽師の息子とかいう(コラの宗家みたいなものか?)トゥマニ・ジャバテ氏と共演したことがあり、以来、コラには随分惹かれております。
    是非、聴きにいきたいです。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年9月
    « 3月    
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30  
PAGE TOP ↑