入管が素晴らしかった件
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
木曜日、アブにつき合ってアメリカ大使館へビザを申請に行った。
車両内でアブとはぐれてしまった満員電車、厳重なセキュリティのため
入るのに30人待ちの大使館、そして中に入っても、
「モハメド・オマル・アブディン・モハメドという名前の、どれが名字でどれがファーストネームなのか?」と職員に繰り返し訊かれ、
その度に「だから、スーダンでは、名前の付け方がちがっていて、自分の名前、お父さんの名前、お祖父さんの名前、ひいお祖父さんの名前と書いていくんです」
「で、どれが名字ですか?」
「だから…」
申請が終わったときには二人して疲労困憊。
だが、せっかくここまで来たので、頑張って品川の入管に移動した。
24日に生まれた娘・彩(アヤ)ちゃんのビザをとらないと、生後に3週間の赤ん坊が不法滞在者になってしまう。
入管はとにかく悪い評判ばかりだが、実際には以前に比べて著しく改善されている。
ビザの申請の窓口など、ひじょうに丁寧に個々の外国人と対応していて、
彩ちゃんの申請も本当は当日受け取りができないのを、「またここまでいらっしゃるのはお父さんも大変でしょうから」と職員の人が融通を利かせてくれ、
その場でビザを出してくれた。
アブは在学証明を忘れていたが、それも後日郵送で可という柔軟さ。
「5年前と全然ちがう」とアブも驚いていた。
被災地の現場でも実感したが、日本人は日本在住の外国籍の人に対して着実に理解を深めていると思う。
「失われた二十年」とか言うけれど、経済以外の文化や生活の質などの面ではずいぶん成熟してきたものだ。
疲れ果てたけど、彩ちゃんも無事日本滞在の許可が下り、
アブに寿司とビールをおごってもらって、とても幸せな気分になった。
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