船戸与一は不死身
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
日本冒険小説協会の内藤陳会長が昨年末に亡くなり、その追悼イベント
「内藤陳帰天大宴会」というものが行われ、私も出席した。
北方謙三をはじめ、大沢在昌、佐々木譲、谷甲州といった大御所、
陳さんの店「深夜+1」でバーテンをやっていた馳星周、
平山夢明、柴田哲孝などの「気鋭の若手」
(ここも高齢化が進んでいるので、50歳前後の全盛期バリバリが若手になってしまう)
もいたらしい。
他にも有名な作家は何人もいたのだろうが、顔がわからないし、挨拶のマイクもよく聞き取れなかったため、誰がいたのか確かなことは不明である。
私は文壇に無縁だし、パーティにもめったに行かないから仕方ない。
驚いたのは、船戸与一の姿があったこと。
船戸さんも普段、こういう文芸パーティの類には一切でない。
でも船戸さんは日本冒険小説協会大賞をなんと6回も受賞しており、よくは知らないが、
陳さんとも長いつきあいなのだろう。
それもさることながら、船戸さんは2年半前に「余命1年」を宣告されていたのだ。
肺に拳くらいの大きさのガンが発見され、
「こりゃ、もうダメだ」と思ったという。
私は病院にお見舞いに行ったのだが、悲壮感は皆無で、
「おう、何でも遠慮なく聞いてくれ」とまるっきり平常心だった。
「まあ、誰でも死ぬときは来るしな」と他人事のようである。
船戸与一のことを本当に凄いと思ったのはこのときだ。
生きるハードボイルドなのだ。
ところが、というか、なんというか、船戸与一、死なないのである。
新刊も出しているし、海外取材にも出かけている。
その話は聞いていたものの、今日、水割りのグラスを片手に平然と歩き回っているのを見て、あらためて驚いた。
抗がん治療で髪の毛が抜けたせいだろうか、ニットの帽子をかぶっているところがちがうが、あとは以前とまったく変わりない。
「余命がずいぶん延びてますね」
驚きのあまりつい失礼なことを口走ってしまったが、御大はやはり気にかける気配もない。
「自覚症状も一切ない。ただ抗がん剤の副作用がひどかったな」
とけろっとしていた。
船戸与一は不死身である。
精神も身体も常人とはまるでちがうのだ。
かくうえは『満洲国演義』全10巻をぜひ完成させ、7回目の日本冒険小説協会大賞をとってほしい。
それが陳さんへの最高の贈り物にもなると思う。
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Comment
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ブログの内容と関係のない話で大変申し訳ないのですが、日頃アジア及び世界各国から日本に来ている方々とご親交が深い高野さんにぜひお伺いしたいことがありコメントさせて頂きます。
大阪にて飲食店を経営されていたネパール人の男性が、先月16日未明に、20代の男女4人に暴行され殺害されるという痛ましい事件が起こりました。
私自身お恥ずかしい話ですが、昨日の日曜日にインターネットで見るまでその事件を知りませんでした。
事の発端は加害者のうちの一人が、すれ違い様に被害者のネパール人の男性ら3人のうちの誰かに足を引っかけられてこかされた(加害者の供述)ことが暴行を加える原因だったようです。
もし仮にその供述が本当の事だったとしても、私にはそれしきの事で人一人を暴行して死に至らしめることが出来るやつらに同じ事をしてやりたい気持ちでいっぱいですが、高野さんはこの事件に関してどの様なご意見をお持ちでしょうか。
そして事件後もし高野さんが日本在住の外国、とくにアジアから来られた方とこの事件についてお話しておられましたら、その方々はどの様におっしゃっていましたか?
突然このような事を不躾にお伺いして申し訳ございません。
しかしぜひ高野さんのご意見をお聞きしたくコメントさせて頂きました。
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私も今日初めてこの事件を知りました。
私の意見はあなたのご意見と同じです。
誰だってそうでしょう。
わざわざ外国人に訊くまでもありませんよ。
加害者は刑務所なんかに入れず、カトマンズの繁華街の真ん中に放り出してやればいいと思います。
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早々のご回答、誠にありがとうございます。
高野さんのご意見も私と同じだと知り、改めてああいうやつらは一人残らず駆逐しなければという念が深まりました。
被害者が日本人外国人に関係なく、この様な事件を聞く度にどこか脳と神経が破壊されていく思いがします。
加害者たちは全員20代前半のようですが、こういった事件は成長過程における教育や経済的背景を考慮して酌量の余地を与えるようでは、絶対に駄目だとも思っております。日本人の民意はこうだというのを示す為に、本当に全員ネパールに送るべきですね。
外国人に聞くまでもない、それは当然でしたね。自分自身も知らず先に述べていた様に国籍なんて関係ない事ですね。
今一度ご回答いただいた事に厚くお礼を申し上げます。貴重なお時間を私などの質問に割いて下さいまして本当にありがとうございました。
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ネパール人殺害事件犯人のブログのWEB魚拓です。
http://megalodon.jp/2012-0123-0121-58/www.dclog.jp/en/2191108/233317618
文章を読むと、同じようなことをすでにやっていたみたいですね。
経済が悪化して、同様の事件が起きることを危惧します。
はじめまして。
船戸さんの健康状態をずっと心配していました。今日、たまたま高野さんのブログ記事を読み、ほっとしました。
さすがは船戸さん、不死身なのかもしれません。
『満州国演義』の完結を願っています。
高野さんの『ミャンマーの柳生一族』に描かれた船戸さんとの珍道中が大好きです。