名探偵なき大巨篇ミステリ
公開日:
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
最近小説が読めなくなっていると前に書いたが、
とくにミステリはダメだ。
なにしろリアルでは原発や放射能というミステリ巨篇が進行中で、
これに太刀打ちできる物語はない。
本来「謎」が好きな私は、ついつい原発と放射能の謎に引き込まれ、
スリルも満点であるし、ツイッターやメール、ネットで流れてくる情報の間を彷徨い
楽しんでいる。
昨日はまず反原発側。
元原発技術者菊地洋一さん中部電力靜岡支店で浜中原発を即刻停止を訴えたという映像を見た。
東海大地震で直下型が来れば原発の構造上、福島が津波で水をかぶったのとは
比にならない壊れ方をし、東京を含め関東も終わり、日本も終わる!とものすごい憤りと必死さで訴えている。
これだけ聞くとものすごく恐ろしいのだが、
菊池さんが激しく批判している東大医学部の稲恭宏教授の講演の様子をやはりユーチューブで見ると心持ちは突然変わる。
こっちは医学の立場から、現在福島の放射線がいかに微々たるもので、健康上の問題がないか、とうとうと語っている。
急速に安心してくる。
私のような素人はどっちが正しいのかさっぱりわからないのだが、
面白いのは菊池さんも稲教授も、怒り心頭に達しており、
「自分こそが真実を伝えねば」という使命感に燃え上がっていることだ。
ついでに言うと、二人とも「原子力保安院は自分の言うことに耳を貸さず、話にならない」と罵倒している。
実際には原発の構造と放射線の危険というのは、別々の問題であり、
浜岡原発が東海地震であっけなく壊れてしまうのも、
現在の福島の放射線漏れがまったく問題ないのも両方正しいかもしれない。
あるいは大どんでん返しで、保安院だけが唯一正しかったとか。
ミステリなら「驚愕の結末!」というやつだが…。
誰かこの謎を絶対中立の立場から解きほぐしてくれる人はいないのだろうか。
ホームズや御手洗潔のような名探偵が。
もし誰もいないなら俺がやってやろうじゃないかという「間違う力」がむくむく湧き起こり、温度が急上昇して危険になってきたので、プールに行って冷却した。
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AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; en-US) AppleWebKit/534.16 (KHTML, like Gecko) Chrome/10.0.648.205 Safari/534.16
そう言えば、今回の震災で洪水(津波)が発生し、小学生のランドセルが流されたわけですが、高野さんの友人の節約家の母上は、屋根裏のランドセルを送ったのでしょうかね?
まさに、数十年に一度のタイミングだったはず。
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よく憶えてますね、そんなこと。
ていうか、どうして知ってるんですか?
言ったっけかな…?
まあ、忘れて下さいな…。