*

ブックストア談は凄い!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


「異国トーキョー漂流記」を大売りだししているユニークな書店「ブックストア談・浜松町店」へ行き、御礼の挨拶をしてきた。
当初、失礼にも「物好きな小さい地元の本屋なんだろう」と思っていた。
 行ってみてびっくり。
 でかいのだ。
 聞けば、「浜松町・新橋付近で最大規模」というではないか。
 この界隈は私の生活圏から最も遠いので、全然知らなかった。
「異国トーキョー」のコーナーは、入り口の真横にあった。
 なるほど、ここにこれだけ積んで、しかも書店員の強力な推薦看板があれば気をひくだろう。
 実際、やって来る人が次から次へと本を手にとり、立読みをしている。
 若い女性は、手にとると、すぐにレジに直行した。
 本を書きはじめて早16年。その間、出した本は文庫化・翻訳も含めると、延べ16冊になるが、目のまえで自分の本が買われていくのを見たのは初めてのことだ。
 しかし、もっと驚いたのは、このように大々的に売り出されているのは、私の本だけではないってことだ。他にも、大売出しの棚は十も二十もある。しかも、それらは有名作家の本やベストセラーが多い。
 そういう強敵を押しのけて、「異国トーキョー」は快進撃を続け、なんと五月の月間総合売上げベスト1になってしまったという。
 文芸も文庫もビジネス書もハウツーものもぜーんぶ含めて1位だ。
 私の本を取り上げてくれたのは中野さんという生まじめそうな若い書店員さん。
「まあまあ売れていたし、自分で読んでも面白かったので、コーナーを作ってみましたが、こんなに売れるとは正直、思いませんでした」と実に素直なご感想。
 この書店は、小さくはなかったが、ユニークだという想像はあたっていた。
 品揃えが豊富なだけでなく、独特の棚作りをしている。
 「結婚関連本コーナー」にはバージンロードとウェディングドレスがあつらえていたりして、すごくおもしろい。色とりどりの折り紙を切り張りして、絵や文字で宣伝しているコーナーもある。
 学園祭のような楽しいノリが店内に横溢しているのだ。
 考えてみれば、二十代の若い店員が別に売れ筋でもない本を「自分が気に入ったから」という理由でコーナーを作れてしまうのだ。
 上の人たちも若い情熱を野放しにしているという証拠であり、なぜこんなアンチ管理社会的な書店が、日本の会社員のメッカみたいな浜松町・新橋エリアにあるのか不思議なくらいだ。
 「ムベンベ」や「アマゾン」「ワセダ三畳」など、私の他の文庫もすべて平積みになってるし、さすがアンチ管理社会の本屋だ。
 「ムベンベ」にはこれまた中野さんの手書きのポップが立っていた。かわいいナマズの絵まで描かれていた。
 「このナマズ、誰が描いてくれたんですか?」と訊いたら、中野さんが表情も変えずに、「私です」と答えた。
 ありがとう、中野さん。
 今度は他の本もまとめて「高野秀行フェア」をやってください!
【訂正とお詫び】
本文中、「五月の月間総合売上げベスト1」とありますが、正しくは「文庫部門ベスト1」でした。この場をお借りしましてお詫びと訂正にかえさせていただきます。(管理者 記)

関連記事

no image

何も知らない

NHK BSの「週刊ブックレビュー」の収録で赤坂のスタジオへ。 夏休み冒険特集とかで、冒険家の大場

記事を読む

no image

クールだけど超目立つ

 『謎の独立国家ソマリランド』、ついに昨日からAmazon.comで予約受付が開始された。

記事を読む

no image

出発

昨日、関係のない映像を観ていたおかげで 結局、かぎりなく徹夜に近くなってしまった。 死ぬほど眠い。

記事を読む

連投初戦で同志発見?!

先週の木曜日から月曜(昨日)まで、5日間で4回の飲み会。 しかもほぼ全てが深酒。 まるで昔の稲尾

記事を読む

no image

中国40年の狂気

また外出。 町のあちこちで運動会の練習をしている。 「フレー、フレー、赤組!」なんて今でも言ってる

記事を読む

no image

この地獄を見よ

丸善ラゾーナ川崎店のエンタメノンフフェアに触発されて 仕事もそっちのけで読みまくっている。 この二

記事を読む

no image

珍しく円城塔氏と気があった、と思ったのだが……「本の雑誌」上半期ベスト1特集

「本の雑誌」8月号が届いた。今回の特集は「2012年上半期ベスト1」で、私も書いている。題して「超人

記事を読む

no image

計算ができないのか?

野々山さんのご指摘で気づいたが、 前回の日記で換算した部数計算がまるっきりまちがっていた。 日本に換

記事を読む

no image

踊るダルビッシュの謎

斉藤祐樹が日本ハムに入団したため、以前にも増してダルビッシュ有のニュースが多い。 で、思い出したの

記事を読む

グラスワイン100円!! 超激安隠れ家アフリカレストラン「GOMASABA(ゴマサバ)」

以前、知り合った在日アフリカ人の二人が元浅草にレストランをオープンしたというので、 先週、『移

記事を読む

Comment

  1. やまねこ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows 98; .NET CLR 1.1.4322)
    NHKビルマどうろの放送日はいつなのでしょうか?
    取材の詳しいことは後日と言う事で今か今かと待ってるのですが・・・

  2. macocci より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.0.3705; .NET CLR 1.1.4322)
    今日もブックストア談に行ってきましたよ。
    仕事関係の書籍を漁りに行った筈なのですが、
    足が向いたのは高野さんの書籍が置いてあるコーナーでした。(^^;>
    仕事でストレス溜めてる私にとっては気分転換にもってこいの本ばかりなんですよね。
    お次は極楽タイ暮らしでも。
    ちなみに、「世界が生まれた朝に」は、小学館に問い合わせたところ、
    どこも在庫切れで重版予定も無い状態だそうです。
    Amazonなどのネット書店でも手に入りません。
    残念・・・古本屋か図書館探すしかないようですね。
    中野さん「高野秀行フェア」をやってください!
    って言ったら出てくるのかな〜?

  3. エダ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
    すごい!
    写真の様子に感動しました。
    大ベストセラー作家並の扱いではないですか。
    高野ファンである私が感動したくらいだから
    本人はもっと感動したことでしょう。
    中野さんエライ!惚れたぜ!
    (女性なんですかね?)

  4. りーだー より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
    ををっ! すばらしい!
    こんな書店が増殖しますように!
    TVとかで取り上げてくれれば、高野ブーム到来! なんですがね。

  5. のなか悟空 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
     高野君、当たり前です!
    むしろ遅いくらい。ボクは太鼓判を押します。文章としての完成度も高く、ユーモアのセンスもよく、なにより不可解な芸術を素直に受け止めている。
     ボクがこれまで読んだ本に中でもトップクラスのいい本でした。おめでとう!

  6. のなか悟空 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
     あっそうそう! 担当者が中野さんというのが、オイラの野中の逆でこれまたGOOD!

のなか悟空 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑