元気が出てしまう(?)自死の本
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最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
いわゆる「野暮用」ってやつで、仕事に専念しているわけでもないのにともかく忙しくて
ブログを更新できずにいた。
当然書きたいことはたまっているが、まずは最近読んだ中でイチオシの本。
木谷恭介『死にたい老人』(幻冬舎新書)。
仕事もプライベートも充実した人生を送り、また現在の激しい少子高齢化を憂う
83歳の作家が、「もはや楽しみもないし、社会のために死のう」と決意する。
…と書くとなにやらかっこいいが、人生に未練がなくなった直接の理の一つが「愛人といても勃起しなくなったこと」だったり、「今まで誰もちゃんと記録を残していない断食死に挑戦しよう」という山っ気だったりして、出発からして悲壮感や重々しさは皆無。
もともと妻が買ってきた本で、手にとってパラパラとめくりだしたら、
その面白さに釘付けになってしまった。
(今も本は妻が取材にもっていってしまったから手元にない。以下は記憶のみで書くので
間違いもあるだろうが、だいたいこんな感じである)
心筋梗塞で倒れて、このままじゃ断食死ができないと救急車を呼んだり、
断食を始めると空きっ腹に薬を飲むことになり、胃が痛くなって途中で止めたり、
ツッコミどころは満載。
それでも一ヶ月以上、ほとんと水だけで過ごしたようだから貴重な記録だ。
断食ではときどき波のように「飢餓感」が襲ってくるが、それ以外はわりあい我慢できる程度らしい。
著者がいちばん苦しんでいるのは「暇なこと」。
毎日、3回食事をするということで、いかに人が一日にめりはりをつけているか
時間を費やしているか著者の木谷さんは実感している。
といっても、読書など集中力を必要とすることや散歩など体力の要ることはできないので
いちばん楽なのはテレビを見ることなのだが、
テレビではどのチャンネルものべつまくなしに食い物を映していて見るのが苦しい。
意外にも救いの神(とは言ってないけど)は大震災。
食べ物は出てこないし、誰が見ても心が震える映像の連続で、
「はっきり言って自分の断食よりこっちのほうがよほど関心がある」とまで断言。
ほとんど断食のことを忘れ、以後は原発行政や民主党に対する怒りが断食死への思いより強い口調で述べられ、
「私は民主党のように公約を違えたくないからやっぱり断食を決行するんだ」と
自分の断食死への執念まで民主党に対する反感に支えられていて
わけがわからない。
自死という、これ以上深刻なことはないテーマでありつつ、
これほど生命力にあふれ、世間の常識から自由気ままな本も珍しい。
久しぶりにエンタメ・ノンフィクションの快作を読んだ思いで、
期せずして元気が出てしまった。
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Comment
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僕の父方の祖父は、84才まで生き、その歳になったのを機に
「わしはもう十分生きた。あとはもうええ。もう飯は食わん。本と水だけもってこい。」
と家族に言い、本当に水しか口にせず、20日後に往生しました。
明治の気骨というか、頑固の固まりというか、こんな逝き方もあるのかと感心したものでした。
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ええーっ、ほんとにそんな断食大往生を遂げた人がいたとは!!
最後まで「本と水」というのもかっこいい。
どんな本を読まれていたんでしょうね。
あこがれるような「漢(おとこ)」ですね。
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そーかー。
オレも、もう夢叶っちゃったし、いつ死んでもいいか。
まあ、50まで生きられればいいや。
ぐらいに思ってました。
大して役にたつ男でもないし、この辺が潮時かなあ。
でも、逆に別の欲も出る。
子供が生まれ、成人するまでは、死ねないな、とか。
ダラダラでも生きてれば、また夢もある。
この先人達の境地に達するには、
まだまだ未練がありそうです。
なにより、オレの生命力が許さない。