島国チャイニーズと沖縄系ブラジル人
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
読了してから時間が経ってしまったが、野村進『島国チャイニーズ』(講談社)は
万人にお勧めの良書である。
在日中国人といえば、「犯罪」「違法」「反日」という言葉を連想しがちだが、
実際にはそんな連中はごく一部で、多くはとてもまっとうに、
一生懸命働いたり勉強したり言葉や文化の壁に悩みながら日本の生活になじもうと努力している。
日本に来る中国人のほとんどは日本に憧れ、日本が好きで日本に来る。
そして、日本が気に入りそのまま留まる人もいれば、日本の文化や学問を抱いて国に帰る人もいる。それもまた、ごく普通の人の営みだ。
どれもこれも当たり前のことなのだが、在日外国人の普通の生活やリアルな気持ちについて書くノンフィクションはひじょうに少ない。たいていが「在日外国人が起こす問題」か「在日外国人の抱える問題」になる。
「問題」は実は文章を構成するのにひじょうにラクで企画も通りやすいからだ。
そこをあえてチャレンジする書き手が野村さん以外にもっともっと出ていいと思う。
私が「おとなの週末」で連載している「移民の宴」も実はそういう意味で「意欲作」なのだが、
今週発売の号では沖縄系ブラジリアンのパーティで楽しく酔っ払っている。
これをチャレンジといえるかどうか、我ながら微妙だが、
カイピリーニャを飲みながらゴーヤ・チャンプルーというのはめったにできない体験です。
関連記事
-
映画「ホテル・ルワンダ」を見るべし!
試写会で、映画「ホテル・ルワンダ」を見た。 1994年、ルワンダで三ヶ月で数十万人が虐殺されるという
-
草食系夫のサバイバル術
『草食系男子の恋愛学』にはずいぶん反響がきた。 NONOさんらのコメントでは「今もてるのは草食。俺た
-
山口晃「親鸞」書籍化を熱望!
『ヘンな日本美術史』(祥伝社)を読んで以来、山口晃に嵌ってしまったとブログやツイッターに書いたと
-
ヒンディー語と春風亭昇太
トルコの怪獣取材もいいが、忘れちゃいけないインド・ウモッカ探索行。 そう、凝りもせず今年の11月末か
-
猫又とペシャクパラング
TBSラジオの「安住紳一郎の日曜天国」という番組に出演。 アフガニスタンのペシャクパラングについて話
-
『メモリークエスト』見本とどく
初めてのことだが、2日連続で新刊の見本がとどく。 今度はお待ちかね、『メモリークエスト』。 カバー
-
ソマリランドで今、話題になってること
今、やっと日本でもソマリアの飢饉がニュースになってきたようだ。 では、こっちではどうかというと、ほ
-
今月のエンタメノンフ文芸部はすごい
今月は宮田珠己部長の「日本全国津々うりゃうりゃ」(廣済堂出版)と 内澤旬子副部長の「飼い喰い」(岩波
- PREV :
- 落語界の奇才、小説もいけるのか!
- NEXT :
- 私にとって最大最後の秘境はアメリカ