*

今年からノンフィクション作家

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

みなさん、明けましておめでとうございます。
今年は何をするか。
まずは肩書きを変えることにした。
正確には去年の暮れからブログのタイトルを微妙に変えていた。
以前は「辺境・探検・冒険」だったのが「辺境・探検・ノンフィクション」にし、
「辺境作家」を「ノンフィクション作家」に改めた。
私が辺境ライターと名乗り始めたのは十数年前、初めて現在の妻と出会ったときである。
それまでは普通にフリーライターと名乗っていた。
「変わったことを職業にしている人」をテーマに取材をしていた彼女が私のところにも取材に来た。
原稿を書いたあとで、「フリーライターではインパクトがないから『辺境ライター』にしていいか」と言う。
「別にいいですよ」と答えた。たしかにこっちの方が「人とちがうことをしている」ことがわかりやすくなる。
結局、そのまま辺境ライターと名乗り、でもあまりパッとしないので、
さらに五年後くらいして、勝手に「辺境作家」と底上げをしてみた。
辺境ライター・作家という肩書きにして十数年過ごしてわかったことは
「人とちがうことをしている」のは十分伝わったものの、「一体何をしているのか」は
全く伝わらなかったことだ。
毎回、新しい人と会う度に「辺境作家って何ですか?」と訊かれ、それについて答える。
このやりとりに飽きたし、インタビューやラジオ・テレビ、講演会、対談などでは
ただでさえ限られた時間なのに、肩書きの説明に五分も十分もかかって勿体ないったらない。
「辺境作家」だけではわかりにくいということで、「辺境冒険作家」とか「辺境探検作家」などとするときもあるけれど、なおさら「作」の存在感が薄れ、
「冒険家」「探検家」と誤解されてしまう。
作家でもライターでもいいが、私はとにもかくにも物書きなのに。
「情熱大陸」や「ようこそ先輩」などから出演のオファーがときどき来るが、そういうときも「何か辺境で冒険みたいなことをしている人」という括りで企画されている。
それもまた間違いなので、オファーを受けられずにいる。
だって、私ができることと言えばサバイバル術でも動物生態学でもなく、
取材(調査)をして文章を書くことだけなんだから。
というわけで、今年から「ノンフィクション作家」。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろおかしく書く」というモットーも変更しようかな。
「誰も書かない本を書く」にするか。
もっともやることは何も変わらない。今まで高野本を読んでくださっている方はご安心を。
前置きが長くなったが、今年はこんな予定です。
3月末 『異次元国家ブータン』(現在「小説すばる」で連載中→集英社刊)
6月末 『ヒーロー参上!』(現在「青春と読書」で連載中→集英社刊)
秋以降 『移民の宴』(現在「おとなの週末」で連載中→講談社刊)
そしてこの1月からweb本の雑誌で『謎の独立国家ソマリランド』の連載を開始する予定。
今年もよろしくお願いします!

関連記事

no image

島国チャイニーズと沖縄系ブラジル人

読了してから時間が経ってしまったが、野村進『島国チャイニーズ』(講談社)は 万人にお勧めの良書であ

記事を読む

no image

ああ、間違えた

どうやら大変な間違いを犯してしまったらしい。 なんとしたことか、某社の依頼で「生き方本」を書いてしま

記事を読む

no image

完璧な探検記

 わけあって、今さらながらアルフレッド・ランシング著『エンデュアランス号漂流』(新潮文庫)を読んだ

記事を読む

no image

岡崎市のクライミングジムPlay Mountain

早大探検部時代に一緒にムベンベ探査を思い立ち、副隊長として参加した高橋洋祐から 「岡崎市でクライミ

記事を読む

no image

79人はちと多いのでは…?

上智大学の講義は、先週、実質的に第一回目で マレーシアでジャングルビジネスを営む二村聡さんにお越しい

記事を読む

no image

エイリアンの日々

このところすっかりオカルトづいているので 最近は地球上で生活している異星人に興味をもち、 そういう人

記事を読む

no image

謎の猿人ナトゥー

作家の古処誠二さんが、「藤岡弘の最高傑作」と絶賛するミャンマーで猿人ナトゥーを追う DVDを本当に送

記事を読む

no image

もう一人の「高野秀行」との出会い

ご存知の方も多いと思うが、将棋の棋士に私と同姓同名の「高野秀行五段」という人物がいる。 ネットで「高

記事を読む

no image

来たれ、ポロロッカ!

昨日、『困ってるひと』に重版がかかったという知らせが届いた。 発売後たった6日のことだ。 よく「発売

記事を読む

no image

珍しく円城塔氏と気があった、と思ったのだが……「本の雑誌」上半期ベスト1特集

「本の雑誌」8月号が届いた。今回の特集は「2012年上半期ベスト1」で、私も書いている。題して「超人

記事を読む

Comment

  1. hu より:

    AGENT: KDDI-SN3T UP.Browser/6.2_7.2.7.1.K.6.210 (GUI) MMP/2.0
    ソマリランド楽しみです!ブータンは国王来日のタイミングに合わせられたら最高でしたね……
    まああの爽やか夫妻に盛り上がっていた日本でいきなり「夜這い大国」じゃ、国際問題になっていたかもなので、このタイミングがベストですが

  2. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    あけましておめでとうございます。こないだの西川一三さんの話、懐かしかったです。年の瀬には雪男捕獲騒ぎが起きたりして、どうなることやらと思ってましたが、今年もよろしくお願いします。

  3. ゆきこ より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1) AppleWebKit/535.7 (KHTML, like Gecko) Chrome/16.0.912.63 Safari/535.7
    高野さま
    あけましておめでとうございます。
    初めてコメントさせていただいています。
    私も早稲田大学の卒業生です。
    当然初めて読みました高野さんのご本は「ワセダ三畳青春記」。
    以来、高野さんのご本のとりこです。
    最近、メモリークエストも拝読いたしました。
    探していただきたい方いるのですが・・・チェンマイ大学の先生をされていた方なのですぐに見つかってしまいそうです。
    きっと選んではいただけないですね(笑)。
    今年もたくさんの著書を楽しみにしています。
    それでは腰をお大事に、素敵な一年を☆
    今年も数冊の

ゆきこ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑