*

ソマリアのワークショップで怪しまれる

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

日本エネルギー経済研究所・中東研究センターが主催するソマリア問題のワークショップというやつに行ってきた。
ビルマ勉強会みたいな20人か30人のこぢんまりした会合とばかり思い込んでいたら、
経団連会館の会議室がびっしり埋まっていた。
200人か300人いたのではないか。
講師は東大の先生、中東研究センター所属の研究者、エチオピアの日本大使館に勤務しソマリア問題を担当していた女性などで、話題はソマリアの現状、内戦、海賊、イスラム過激派のアル・シャバーブなど多岐にわたっていた。
一つ一つは私にとってひじょうに興味深かったのだが、ソマリアの予備知識がほとんどない人にはかなり難しい内容だったのではなかろうか。
今のところ、ソマリア情勢をわかりやすく教えてくれるような入門書、概説書の類は、日本には一冊もない。もしかすると、世界中でもないかもしれない。
早く私がソマリランドとソマリアについてのエンタメ・ノンフィクションを書かねばと
強く思った。
ワークショップ(というか事実上は普通の講演会)終了後、講師の先生方にご挨拶に行ったのだが、みなさんに怪訝な顔をされた。
それもそのはず、差し出した名刺は「ソマリ語国際TV ホーン・ケーブル 東京支局代表」などと書いてあるうえ、みんなが黒っぽいスーツを着用している厳かな場所に
私ひとりだけ、ユニクロの水色のシャツとジーンズ、くたびれたデイパック。
「なんだか知らないけど、インチキ臭い奴が来たな…」と思われているにちがいない。
現地で怪しいコネをつくって、事情通面をしてる自称ジャーナリストみたいな。
私だって自分が講師だったらそう思っただろう。
ますます「早く本を書いて出さなきゃ」と強く決心したのだった。
(来週あたりから連載開始します)

関連記事

no image

草食系夫のサバイバル術

『草食系男子の恋愛学』にはずいぶん反響がきた。 NONOさんらのコメントでは「今もてるのは草食。俺た

記事を読む

no image

休みをとって職場へ?

金曜日はジュンク堂書店新宿店にて、宮田珠己部長とトークイベント。 (司会は杉江さん) 例によって宮

記事を読む

no image

あの映画は何だったのか

名前はよく知っているし、名場面や音楽も知っているような気がするが、 実は一度もちゃんと見たことがない

記事を読む

no image

イラン行き

もう半年以上も日本滞在が続いていて鬱屈したせいだろう、 発作的に今月23日からイランへ行くことにした

記事を読む

no image

タイの黄金のバーミヤン

バンコクから入り、西のラッブリー県というところに行った。 観光客はほぼゼロだが、なぜかバーミヤンみた

記事を読む

no image

天地明察

冲方丁(うぶかた・とう)『天地明察』(角川書店)を読了。 いやあ、素晴らしい。 新しい日本独自の暦

記事を読む

no image

本の宴会

妻の大学時代の友人たちが集まる飲み会があり、私も混ぜてもらった。 場所は、やはり妻の友人で、本マニ

記事を読む

no image

未知の未知動物マリンダとは?

右絵:目撃者によるスケッチ。 彗星のごとく、私の前に現れた未知動物「マリンダ」の続報をお伝えするのを

記事を読む

no image

佐藤圭作監督『人間椅子』

私の学生時代からの数少ない探検部以外の友人である佐藤圭作が、 今度、商業映画監督としてデビューする

記事を読む

no image

家宝、誕生

新刊「ミャンマーの柳生一族」のおどろおどろしい表紙に笑った人も多いだろう。 「昔の東映時代劇みたい」

記事を読む

Comment

  1. BUZZ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB7.2; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    久々に笑わせていただきました。伊勢丹バンコクの紀伊国屋には「極楽タイ暮らし」が沢山置いてありましたよ。既にご存知だと思いますが。

  2. hu より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0; BOIE9;JAJPMSE)
    アマゾンで探してみました。これが唯一の現地ルポみたいだけど、評価を見ると散々な内容みたいです。
    http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BD%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%A8%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%9F%E5%9B%BD-%E4%B8%8B%E6%9D%91-%E9%9D%96%E6%A8%B9/dp/4901350552/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1328232386&sr=8-3
    あまりにも評価がひどすぎて、逆に読んでみたい。「二十歳のバイブル」みたいな感じでしょうか。
    後は有名著者のここらへんですかねー。ソマリア沖を航行しただけで、上陸はしていなさそう。
    http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%8D%E8%82%96%E3%83%BB%E5%AE%AE%E5%B6%8B%E3%81%AE%E3%80%8C%E6%B5%B7%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%82%BD%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%B2%96%E5%A5%AE%E6%88%A6%E8%A8%98%E3%80%8D-%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%81%A7%E8%AA%AD%E3%82%81%E3%82%8Bfamily-book-%E2%80%95%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%9C%80%E6%96%B0%E6%99%82%E4%BA%8B%E8%A7%A3%E8%AA%AC-%E5%AE%AE%E5%B6%8B/dp/4870319489/ref=sr_1_4?ie=UTF8&qid=1328232386&sr=8-4
    これなんかはソマリアに行ってすらなさそうな本。
    http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BD%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B5%B7%E3%81%A7%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E6%B2%88%E6%B2%A1%E3%81%99%E3%82%8B-%E5%B1%B1%E5%B4%8E-%E6%AD%A3%E6%99%B4/dp/4584131465/ref=sr_1_5?ie=UTF8&qid=1328232386&sr=8-5

  3. hu より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.1; Trident/5.0; BOIE9;JAJPMSE)
    あ、なんだか荒らしみたいになっちゃいました・・削除して下さい・・。タイトルだけ書きます。
    ソマリア ブラックホークと消えた国 下村 靖樹 (単行本 – 2002/3)
    不肖・宮嶋の「海上自衛隊ソマリア沖奮戦記」 (家族で読めるfamily book series—たちまちわかる最新時事解説) 宮嶋 茂樹 (単行本 – 2009/9)
    ソマリアの海で日本は沈没する 山崎 正晴 (単行本 – 2009/3/26)

  4. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.0; WOW64) AppleWebKit/535.7 (KHTML, like Gecko) Chrome/16.0.912.77 Safari/535.7
    あ、下村君がソマリアの本を出していたんだ!
    下村靖樹君は、九十年代にルワンダで会い、よく一緒に飯を食っていました。
    ジャーナリストには不向きじゃないかと思わせるくらい、心優しい人です。
    でも、それっきり会っていません。
    今、元気かなあ。
    彼がソマリアの本を出しているとどこかで聞いたのに、忘れていました。
    今アマゾンで注文しました。
    huさん、思い出させていただき、ありがとうございました!

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • RT : 北尾トロさんの新刊『人生上等!未来なら変えられる』読了。刑務所出所者を雇用する社長の半生に迫る本。悪の限りを尽くす暴走族総長から売人時代、獄中話に震撼しまくり。誤解を恐れずに言えば、主人公は今現在も過去と地続きの世界に生きる方。それを嘘なく温かく描… ReplyRetweetFavorite
    • 素晴らしい本でした!アウトサイダー青春記としても傑作ですね。こんなふうに一つの言語と真摯に深く向き合えるなんてマジで羨ましい。あと、やっぱり本当に凄い人や作品は制度の外(辺境)から出てくることを再認識しました。 https://t.co/JHWcSBWzfA ReplyRetweetFavorite
    • で、今気づいたんですが、「千葉ルー」の著者名を間違えてました。「斎東鉄腸」と書いてしまったけど、「済東鉄腸」でしたね。失礼しました。訂正します。 ReplyRetweetFavorite
    • 「千葉ルー」で思い出したのだが、私の知人は「千葉に何年も住んでいて日本語も話す言語研究者で今は故郷に帰っているルーマニア人」だった。彼女も「千葉ルー」だな。済東鉄腸さんのことを知っているかも。 ReplyRetweetFavorite
    • ハックは奴隷じゃなかったですね。すみません、間違いました。 https://t.co/S39LyxaidJ ReplyRetweetFavorite
    • 斎東さんはもっぱらネットやSNSを利用してルーマニア語を習い、「ひたすら現地で実践」という私の語学とは真逆に見えるが、そのやり方は手に取るようにわかる。ネットを通していながら、斎東さんも「現場主義」なんだと思う。 https://t.co/406lKPRFVW ReplyRetweetFavorite
    • 発売当初からずっと気になっていた話題作、斎東鉄腸著『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話』通称「千葉ルー」(左右社)をようやく読んだのだが、予想を上回る興奮と感動にとらえられた。言語と文学をこんな… https://t.co/CbvWvyPHWa ReplyRetweetFavorite
  • 2023年4月
    « 3月    
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
PAGE TOP ↑