*

超オススメのこの本とこの雑誌!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


来週の土曜日(3月4日)から20日まで、ソマリランドとソマリアに行くことになっている。
たかだか二週間程度の旅なのに、その前にやっておくことが多くて多くて参っている。
諸悪の根源は原稿が書けないこと。
先週は6日間で一行も書けなかったし、今週はまた一昨日と昨日で一行も書けていない。
これだけ書けなければ時間がいくらあっても足りない。
この仕事を二十年以上やっていて、どうしてこうなんだろう。
駆け出しのライターみたいだ。
そんなわけで、内澤副部長の待望の新刊「飼い喰い」(岩波書店)も出発前に読めそうにない。
ただ、冒頭部分を20ページくらい読んだ感じでは、ひじょうにいい。
名著「世界屠畜紀行」や講談社エッセイ賞を受賞した「身体のいいなり」は手探りで書いているという感があった。
それはそれで内澤さんの「ゆらぎ」が出ていていいのだけど、今回のは芯がビシッとして
簡潔で、かつ読みやすい。
取材(体験)内容が十分に咀嚼され、周辺取材が完璧にできてないとこうは書けない。
うーん、完成度高し。
副部長、また一段ステップを上がってしまったんだなあと下から仰ぎ見る気持ちだ。
おそらく、これもノンフィクション賞を受賞する名著になるのだろう。
私が読めないので、みなさん、代わりに読んでください。

もう一つ紹介したいのは
タイ発のアングラ月刊誌「アジアの雑誌」4月号
以前「Gダイアリー」を作っていたスタッフが独立して発行しているものだが、
実に充実した内容で、号を重ねるごとにどんどんよくなっている。
今回の見所は、これまで旅行者の立ち入るのが難しく情報が少なかったインド東部の旅
(「インパール作戦」のインパールを訪れている)と、東南アジアで広く信じられている「女の首に内臓がぶらさがっているお化け」の探求。
今月号だけ読んでも十分面白いが、上の二つは3号続けての短期集中連載なので
さかのぼって読むとなおいいだろう。
旅雑誌は絶滅の危機にあるが、この雑誌だけは生き残るにちがいない。
他に代替物がないからだ。
しかし、タイやその周辺はいい。
私は最近ソマリと在日外国人に忙殺され、東南アジアにはとんとごぶさただが、
やはりあのゆるやかな世界には癒される。
次回はなんとしてもタイに行きたい! とおもうのだが……

関連記事

no image

だから「吸うな」「飲むな」

 金曜日、アメリカで日本の小説やノンフィクションを翻訳出版しているバーティカルという出版社に売り込

記事を読む

no image

ツアンポー峡谷の謎

最近は気温こそ相変わらず高いが、湿度が低いせいか 外にいても日陰なら涼しい。 今日はなぜかJR高尾

記事を読む

no image

名画と辺境

半分壊れたパソコンを辛抱して使っていたが、 この度やっと新しいものを買った。 今度は奮発してDVD

記事を読む

no image

アブディン(マフディ)結婚

古い友人で、スーダンから来た盲目の留学生のアブディンが このほどめでたく結婚し、私もお披露目のパー

記事を読む

no image

NHK「きょうのお料理」

立て続けに珍しいインタビューを二つ受けた。 一つは朝日新聞の受験生向けサイト。 テーマはパニック力

記事を読む

no image

ポルターガイストで訴える

「未確認思考物隊」の第5回と第6回のテーマは「心霊」だが、 おかげさまで両方とも私のリポート出動はな

記事を読む

no image

熊の爪跡

「台風の爪跡」とか「戦争の爪跡」とか、 よく「爪跡」という言葉を目にするが、じゃあ、実際の爪跡はど

記事を読む

no image

風呂と泥酔でリフレッシュを!

ヤマザキマリの傑作風呂漫画『テルマエ・ロマエ3』(ビームコミックス)を読んだ。 第1巻には爆笑し、

記事を読む

no image

『怪獣記』がいよいよ…

トルコの怪獣ジャナワール探しの本がようやく手を離れた。 写真にカラーとモノクロがあり、しかも章ごと

記事を読む

no image

イスラムと仏教

土曜日はイスラム地域を研究している若手研究者の会合に参加させていただく。 研究地域は多岐にわたってお

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑