*

漫画探偵、登場!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


浦沢直樹の担当編集者やプロデューサーを務め、
リチャード・ウーなる筆名で異色在日外国人漫画「ディアスポリス」の原作も書いている
長崎尚志が知らないうちに活字の世界にも参入していた。
その初めての長篇ミステリである「闇の伴走者: 醍醐真司の猟奇事件ファイル」(新潮社)を読んだが、
期待にたがわない面白さだった。
上質なミステリであるのはもちろんだが、むしろ読みどころは主人公が「漫画編集者」ということだろう。
ある巨匠の遺した謎の遺稿をめぐる事件で、この漫画探偵は漫画の背景のスピード線や
スクリーントーンの種類などからそれが描かれた年代を割り出したり、誰に影響を受けた人間が描いたのかなどをつきとめていく。
まさに漫画探偵なのだ。
「ほんとうにスジ(ストーリー)が書けた漫画家は手塚治虫、白土三平、藤子不二雄、
梅図かずおの4人しかいない」とか「いくら編集者が協力しても漫画は漫画家のもの」とか、
「編集者には二種類いる。才能があるやつとそれを妬むやつ」とか、
登場人物がそこかしこで気になる発言をし、
漫画評論としても読めて、実に興味深い。
次作も早く書いてほしい。私は絶対読むぞ。

関連記事

no image

私の名は紅

前から気になっていたケン・フォレットの世界的ベストセラー『大聖堂』を読み始めたのだが、 物語はとく

記事を読む

no image

「クロ高」英語版届く!

私が熱狂的な「クロ高」ファンだということは意外に知られていない。 クロ高とは、少年マガジンで連載し

記事を読む

no image

おすすめ文庫王国2010

この前のエンタメノンフ忘年会で杉江さんに「おすすめ文庫王国2010」をいただいたので それを読んで

記事を読む

no image

『困ってるひと』ついに発売

大野更紗『困ってるひと』(ポプラ社)がついに発売となった。 今アマゾンで見たら、180位である。

記事を読む

no image

ラジカル加藤、現る!

「ワセダ三畳青春記」にちょっと書いたが、探検部の二つ上の先輩で 「ラジカル加藤」という人がいた。 仮

記事を読む

no image

2011年個人的ベストテン発表!

2011年はあんまり本が読めなかった。 1月に犬が死んで一時的にペット・ロスになり、それがやっと少し

記事を読む

no image

「日本人作家、怪獣を目撃」トルコ紙

私の謎の物体目撃について、「アナトリア通信」という通信社を介し、トルコの全国紙のうち「ザマン」「イ

記事を読む

no image

なんといってもインド

ちょうど映画「スラムドッグ・ミリオネア」がアカデミー賞を受賞した日に その原作であるヴィカス・スワ

記事を読む

no image

撮影会はないのか

もうここ半年くらい、ずーーーっと思いつづけていることがある。 自分の泳ぐ様子をビデオに撮影してみる方

記事を読む

no image

2009年の小説ベスト1

ここんところ仕事で行き詰っているのに、いや、だからこそ、 大作の小説を読んだ。 アミタヴ・ゴーシュ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年5月
     1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031  
PAGE TOP ↑