アホは伝染する
公開日:
:
高野秀行の【非】日常模様
「みらぶ~」命名者の仲野徹先生がイギリスの科学誌「ネイチャー」に論文を発表されたと新聞記事で読んだ。
「受精卵が体内の各器官の細胞に分化する際、精子と卵子の遺伝子の役割が消される現象「リプログラミング」について、卵子に含まれる遺伝子「PGC7」が重要な役割を果たしていること…」とかで、もちろん私には何の話か見当もつかないのだけど、ネイチャーに論文が載るということ自体が凄いことなので、きっと凄いことなのだろう。
仲野先生の専門は新聞記事によれば「幹細胞学」であるが、ご本人曰く「いろんな細胞はどうやってできてくるのだろうか」学、だそうだ。こっちの方が断然わかりやすい。
ツイッターのプロフィールによれば「めざすはお笑い研究者」とのことで、たしかにネイチャーに記事を書きつつ、「みらぶ~」の命名も同時にやれる人など他にいない。
仲野先生には『生命科学者の伝記を読む』(秀潤社)という著書があり、私もデスクの横に置いて、ときどき拾い読みしている。
いろんな著名研究者の伝記を解説した本という、それ自体が珍しいうえ、「細胞工学」なんていう専門誌に連載したとは思えないくらい、ふんだんにお笑いが盛り込まれている。
例えば、P.89では「光は波である」と発表し、またロゼッタ・ストーンの解読もやっていたというトーマス・ヤングという天才科学者を紹介しているのだが、なぜか冒頭では「賢さは伝染しないが、アホさはかなりの伝染性を有している」と仲野先生は述べ、以下、まる1ページをその「考察」に費やしている。
さらに、アホ第二法則として「アホさは無限であるが、賢さは有限」という仮説も披露している。一体何の本なのかわからない。次回はぜひこの二つの法則について、ネイチャー誌で発表してほしい。
こんなアホな、いや凄い先生が私たちエンタメノンフ文芸部の連中を応援してくださるというのは誠に素晴らしく、宮田部長も「今後も先生のご期待に応えて、マジメにならないように精進します」と声明を発表している。
関連記事
-
-
イランの料理をみくびっていた
日曜日、「おとなの週末」で連載開始する「移民の宴」の第2回取材で、 イラン人のベリーダンサー、ミーナ
-
-
高野はぐれノンフィクション軍団に新メンバーが加入
前作『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎)で新田次郎文学賞を受賞した川内有緒(
-
-
2012年に読んだ本ベスト10
毎年恒例の「私が今年読んだ本ベスト10」。私が読んだ本だから、今年出版のものとはかぎらない。 とは
-
-
斉藤由貴とギアナ高地
今さらだが、クドカンこと宮藤官九郎脚本のドラマ「我輩は主婦である」を見ている。 斉藤由貴扮する早稲田
-
-
プレステの取材を受けた途端こうなった
火曜日、プレイステーション関係の媒体にインタビューを受けた。 インタビュアー(編集者)の人にいつ頃出
-
-
顔写真なしでよかった
『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)の 全作業が終了した。 今回、講談社文庫に初めて入る
-
-
高野本の未知なる領域
ここ最近最も驚くべき、かつ(それが本当なら)実に嬉しいことがあった。 大竹まことのゴールデンラ
-
-
5分で振り返る今年の出来事
大晦日なので今年を5分だけ振り返ってみた。 今年よかったこと。 ・『辺境の旅はゾウにかぎる』を刊行で
-
-
シリア・イラク国境地帯の驚異
ユーフラテス河沿いに進み、イラク国境近くの町にいる。 シリアの他の場所は砂漠ばかりだが、この河沿いだ
- PREV :
- 略して『みらぶ~』!
- NEXT :
- 高野秀行プロデュース第2弾! エンタメノンフ最終兵器登場。
Comment
この記事とはぜんぜん関係ない話ですが、ソマリランドの首都ハルゲイサに、コカ・コーラが工場を建てたそうです。コカ・コーラ社、すごいです。
http://ameblo.jp/africabusiness/entry-11265041833.html
「みらぶ~」も「飼い食い」も実にマジメ本だと思いましたが「うりゃうりゃ」は実にアホですね。
3月にソマリランドに行ったとき、もうありましたね、現地産のコーラ。ボトルにアラビア語でなくソマリ語で書いてあったので感銘を受けた記憶があります。