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鼠にも刺青を彫る?!――『バタス 刑務所の掟』

公開日: : 最終更新日:2012/07/17 高野秀行の【非】日常模様

藤野眞功『バタス 刑務所の掟』(講談社)を今頃読んだ。2010年に出たとき、本屋で立ち読みしたが、なんとなく買わないまま過ごしてしまったのだが、最近になって知り合いの編集者が勧めるので読んでみたところ、ひじょうに面白かった。

その刑務所に19年ぶち込まれていた日本人の話をノンフィクションに構成しなおしたものだが、仕事は丁寧で緻密。善悪にとらわれず事実関係にだけ注目するというスタンスも買える。だから、とても客観的に刑務所のとんでもなさが浮かび上がってくる。

フィリピンの刑務所はスゴイとは噂には聞いていたが、出所さえしなければ、所内で何をやってもいいという。みんな、普通に仕事をしているし。ていうか、仕事をしないと食えないのだ。それで密造酒をつくったり、覚醒剤やマリファナを売ったりしている。

中はギャングたちに仕切られている。何をするのもカネ次第。要するに、フィリピン社会の縮図なのだ。ギャングの構成員たちはみんな、所属先を示す刺青を入れているが、それは誰かが殺害されたとき、どこのギャングに所属しているかわかるようにするため。

まあ、それは古今東西の地下組織がやってきたことだろうが、ペットで買っている犬や猫、鼠にまで刺青を彫るというのは笑った。そうでないと、他のやつに食われてしまう可能性があるし、また自分の組織のペットが勝手に食われたら、食ったやつを殺して報復することもあるのだ。

彫り物が入った鼠というのは一度見てみたい気がする。

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    • 単行本の原稿が終わったら急に本が読めるようになった。まだエピローグ書いてないから気を許す段階じゃないんだけど。でも久しぶりに読書の喜びを味わっている。 ReplyRetweetFavorite
    • 今まで野村監督に特に興味がなかったんですが、加藤さんの本を読んで、すごく好きになりました。人間味にあふれた策士というところ、でも言うことは決して奇をてらわないとか。あと、やっぱりサッチー、スゴい(笑) https://t.co/FrRQVs2IX8 ReplyRetweetFavorite
    • あ、そうだったんですね。名監督の知られざる一面を描いているし、著者ご本人の青春記風でもあり、『嫌われた監督』を彷彿させました。落合夫人とサッチー夫人もよく似てるし(笑)いや、面白かったです。 https://t.co/66kmDl74FN ReplyRetweetFavorite
    • 先月から自分の単行本原稿が佳境に入り、読書が全くできなくなっていた。他人の文章が頭に入らない。なんだけど、今日一息ついたあとで、なぜか加藤弘士著『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)を一気読みしてしまった。あまりにも自分の仕事と関係がなかったのがよかったのかも。 ReplyRetweetFavorite
    • 単行本を一冊書くのはエベレスト登山にも似ている。頂上に近づけば近づくほど一歩進むのが辛くなる。でもようやく『イラク水滸伝』本文の最終稿を書き終えた。あとはエピローグと参考文献、写真のセレクト、地図の作成、ゲラ校正、専門家への確認……頂上までまだけっこうあるな…。 ReplyRetweetFavorite
    • 文庫1位が久生十蘭!そそられる!! https://t.co/OWK4Bvakwo ReplyRetweetFavorite
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