*

「人類最高の食品」、それはカロリーメイト

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

 先日、ヤングチャンピオン誌で連載している辺境バカ話コラムで、「背徳のカロリーメイト」というのを書いた。
 コンゴへ怪獣探しに行ったとき、ジャングルの湖のほとりで村人に食糧が盗まれたりして、飢餓に近い状況に陥った。
 食べるものはサルとかゴリラとかヘビばかりだし、そんなとき、大塚製薬に提供してもらったカロリーメイトが「文明の味」って感じでむちゃくちゃ旨かった。
 よくみんなで「これは人類史上最高の食品なんじゃないか」とか「成田に帰ったら、まず真っ先に売店に行って、ドリンクのカロメ(われわれがつけたカロリーメイトの愛称)と固形のカロメを山ほど買おう」「そうだ”カロメ定食”だ!」と盛り上がっていた。
 その様子をぜひ大塚製薬でCMに使ってほしかった…。
 そんな内容である。(何が「背徳」なのかというと、それは恐ろしいオチなのでここでは書けない)
 ちなみに、同誌では「カロメ定食」の写真まで、編集の杉山君がおそらく自分のデジカメで撮影して掲載した。
 そして、本日。朝っぱらから宅配便が巨大な段ボールを運んできた。
 なんと大塚製薬からの「御礼」であった。
 「書いてくれてありがとうございます」とのことである。
 正確に言えば、私はコラムの中でカロメをひたすら賞賛していたわけではない。でも、雑誌の見開きをいっぱいに使い、ひたすらカロメ、カロメと連呼するなんて、記事広告以外には考えられない。
「ドリンクと固形でカロメ定食」なんて、大塚製薬の広報の人も夢にも思いつかなかっただろう。
 
 届いた段ボールを開けたら、固形カロメの箱が90箱(チーズ味、チョコレート味、フルーツ味)、ドリンクが24缶、ゼリーも24個。
 一人では持ち上がらないくらいの膨大な量である。
 私は呆然としてしまった。
「あー、これがあのとき、コンゴのジャングルにあったらなあ…」と思ってしまったのだ。 いや、ほんと、あのときのオレたちに届けてやりたい!
 こんな量はとても一人で食べきれるもんじゃないし、近々本格的な遠征計画もない。
 試しに新潟の被災者ボランティアセンター本部に問い合わせたところ、「人手も物資も間に合っている」と婉曲にお断りされてしまった。
 そんなわけで、これからは外出のおりにはザックにカロメを詰めて、カロメの宣伝普及活動もかねて地道に配って歩こうと思う。ご希望の方はお声をかけてください。
あー、そうそう、大塚製薬のみなさん。今からでも遅くはありません。
 われわれを使って、CMを作ってみませんか。

関連記事

no image

今度はUFO…

「未確認思考物隊」は毎週放映である。 しかも私はレギュラーで、毎回現場レポートに行かねばならない。

記事を読む

新連載開始?

今、すでに五誌(紙)で連載していてアップアップなのに 今度は「本の雑誌」で新連載を開始してしま

記事を読む

no image

謎の国際ボランティア特殊部隊@浦安

後輩Kとネパール人のクマルという国際統合失調症コンビを引き連れ、 浦安市の被災地へボランティアに行っ

記事を読む

no image

『怪獣記』本日発売

本日、『怪獣記』(講談社文庫)発売。 見所は森清の単行本未収録(もしくは単行本時にはモノクロだった)

記事を読む

no image

『神に頼って走れ!』カバー案できる

今年1月から3月にかけて行った自転車お遍路旅日記『神に頼って走れ!』が 集英社文庫から来年3月に発売

記事を読む

no image

日本はよい国

天気がいいので、相模湖から城山まで山をぶらぶらする。 途中の休憩小屋で酒が売られているのを見て感激

記事を読む

no image

最終的にはパッション

宮田部長の『だいたい四国八十八カ所』(本の雑誌社)が重版になったそうだ。 このすさまじい出版不況下

記事を読む

no image

未確認思考物隊の新テーマ

保江邦夫『武道VS物理学』(講談社α新書)はあまりに凄い本だった。 癌を患ったひょろひょろの世界的

記事を読む

no image

意識が

「婦人公論」の書評コーナーでインタビューを受ける。 本を出すたびに、こういうふうに反響がくるのはあ

記事を読む

no image

ある天才編集者の死

集英社文庫で私の担当を長らく務めていた堀内倫子さんが急に亡くなられた。 茫然自失である。 堀内さんは

記事を読む

Comment

  1. NONO より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
    カロメ。コンゴの時はあんまり思い出ないなあ。
    支給されたものはすぐ食べちゃった気がする。
    ただ、その「背徳」はオレもやっいて、皆に隠れて、「オイルサーディーン」を1回喰ったことがある。
    むろん、隊の食料を盗んだワケじゃなく、自分で買ってザックの奥にしまってたものだけど。
    だけど、カロメにはその後、やたらお世話になっている。
    大塚製薬はとっても気前がよく、長江航行遠征の時にも、ごっそりもらって、航下中の昼飯はすべてカロメだったのだ。
    好評だったか不評だったかは、あえて述べません。
    この夏、大出恋でロクにメシが喰えなかったオレの、山行中のお昼は、常にカロメとチーズとトマトだった。
    正直に言うとオレはカロメ、結構好きなのである。
    あの不味くて、ただひたすら栄養の補給のみ、という機能性が良い。
    「あーあ、みんな今頃、美味いもん喰ってるんだろうなあ。
     暖かいカノジョの手料理かなんかとかさ。
     オレにも幸せくるのかなあ」
    そんな悲壮感に浸りながら、ボソボソと水だけで喰うカロメは、身体に染み渡って最低限のエネルギーになっていく、そんな気がするのだ。
    あ、だけど、高野君、そのいっぱい貰ったカロメ、オレに送ってくれなくていいです。
    もっと物悲しく、切なくなるから。

  2. 小林 純 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.17; Mac_PowerPC)
    カロリーメイトといえば、去年の今頃、妻に多量に買わされていました。
    体調をこわしており、かかりつけのお医者さんから
    「とりあえず体力つけるなら、カロリーメイトでいいんだよ。あとラーメンとかね。」
    と言われた妻はフルーツ味のドリンクと酢豚(ラーメンじゃないけど高カロリーそうな中華ではある)を僕に多量に要求したのでした。
    数日後、ついに入院し、その入院先で意識を失って生死の間をさまよったとき、ナースステイションに中華デリバリーと8本ものカロメ
    缶が差し入れられていました。他人様にまで要求していたとは。
    「これで元気になろうとしてたんか。」
    涙を流しながら、ひたすらその差し入れを食べました。
    カロメを見る度、それを思い出して胸キュンになってしまう僕でした。

  3. 二村 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.0; Mac_PowerPC)
    カロリーメイト。
    実は僕、わりと日常的に食べてます。
    キオスクで買ったりして、日本ではバッグにほぼ常備。
    固形のフルーツ味は結構いけます、ですが、あのぽそぽそ感は
    毎昼食べるにはやっぱりきついかなー。
    女性との思い出が続いた後で、恐縮ですが、
    朝のジムワーク2時間前に食べるものとしては、かなり理想的な
    食品として重宝してます。
    かー、俺パワーエリートみたい!(自己陶酔)

  4. 匿名 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
    はあー、みなさん、どうかしてますねえ…。
    カロメの話題で高らかに「演歌」をうたいあげるNONOさん。
    生死の境をさまよったあと(いったいどうして?!)、病院で泣きながらカロメを食ったという小林さん。
    カロメを食ってジムワークをするのが「パワーエリート」だと思い込んでいる二村さん。
    でも、これらのコメントを読むだけで、カロメがいかに「非常食」かよくわかりますね。
    もしかしたら、食べると非常識になるだけかもしれないけど、
    各人がこれほどまでに強烈な思いいれを持つカロメはやはりスゴイ食品なんですね。

  5. NONO より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
    異議アリ!
    オレは演歌じゃなくて「70年代フォークソング」だ。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑