*

読書気功療法!!

公開日: : 最終更新日:2013/04/03 高野秀行の【非】日常模様

『幻の楽器・ヴィオラアルタ物語』について途中まで書いたら時間がなくなり、そこでぶつ切りになってしまった。

いや、これはもうめちゃめちゃすごい本だ。

クラシックという大メジャーな世界で、百年前は一世を風靡し大量生産もされたのに、今では誰もその正体を知らない謎の楽器が存在するなんて誰が想像できようか。

東京のある楽器店の片隅でその不思議な楽器を見つけた著者は、
その楽器の正体を探す旅に出るのだが、文章は大宅賞を受賞した中村紘子『チャイコフスキー・コンクール』並みに流麗で、かといって下町をこよなく愛す気さくな人柄の著者だけに、ヨーロッパのとりつく島のない高踏な雰囲気はなく、そしてなによりも謎の中にひそむさらなる謎という展開がたまらない。

ラストは感動と興奮で背中にビーンと光の束のようなものが下から上へ走り抜けた感じがした。
気づくと腰が楽になっていた。

読書気功か?!

この本を読めたことで、私のギックリ腰の苦しみはプラスマイナスゼロになった。
冗談抜きでそう思う。
それくらい面白く美しく感動的な本である。

関連記事

no image

顔写真なしでよかった

『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)の 全作業が終了した。 今回、講談社文庫に初めて入る

記事を読む

ここで問題です。

朝日新聞社で角幡唯介と対談。 読書週間特集で「探検・冒険の本」を私たち二人が紹介するというのが

記事を読む

no image

わが読書人生史上、最高に驚いた出来事

宮田部長の『スットコランド日記 深煎り』(本の雑誌社)を読んでいた。 例によって、四国のお遍路だと

記事を読む

no image

ブータンはチベットではない

日本で入手できる唯一のブータン映画ということで、 5000円近くも出して「ザ・カップ 夢のアンテナ

記事を読む

no image

日本の冬

会社員を辞めて山岳ガイドになった後輩と一緒に箱根の山を歩いた。 ただ普通に山歩きをするだけのつもり

記事を読む

no image

ユーラシア大陸を超えて

ポルトガルのリスボン在住の言語学者・小坂隆一氏と 二時間以上、Skype(スカイプ)で話をする。 ス

記事を読む

no image

在日外国人支援ボランティア

世界中の人たちに二十五年もお世話になりつづけている。 そろそろ何か恩返しをしなければと思い、 在日ア

記事を読む

no image

溝畑宏とイビツァ・オシム

木村元彦作品読書週間が続いている。 次に読んだのは『溝畑宏の天国と地獄 大分トリニータの15年』(

記事を読む

no image

ランニング復活記念に立ち会う

月曜日の晩、チェンマイ門の近くにある日本人ゲストハウスの庭先で開催されたライブを見に行った。

記事を読む

no image

難病のソナタ

大事なことを忘れていた。 「困ってる人」第12回「わたし、生きたい(かも)」が更新された。 難病女子

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年12月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑