ギラギラと輝く船戸ワールドの原点
公開日:
:
最終更新日:2014/08/27
高野秀行の【非】日常模様
知り合いである大学の先生が仕事の忙しさを「まるで障害物競走のよう」とたとえていたが、
私もまさにそのとおり。
しかも走っている部分がいくらもなく、障害物をぴょんぴょん跳んでばかり、ときにはひっかかって転倒している。
さて、言い忘れていたが、船戸与一の出世作にして名作『山猫の夏』が小学館文庫から再文庫化(もしかしたら再々文庫化?)され、私が解説をおおせつかった。
20年ぶりに読んだ本書は、冒頭からびっくりするほどの熱量で、ブラジルの焼け付くような大地に
身も心もひきずりこまれてような気がした。
ギラギラと輝く船戸ワールドの原点といってもいい。
こんな文章を書ける若い作家はいないだろうし、今後も出てこないのではないか。
ぜひ渾身の船戸ワールドを堪能し、そのあとで私の解説を食後酒として(?)味わっていただければと思います。
関連記事
-
-
タイ人による驚くべき被災地支援
在日タイ人の被災情報がないかと成田のタイ人ワット・パックナムに行ってみた。 同行者は後輩のKとU。
-
-
友人がちゃんと難民になる
フランスへ逃れてから難民申請をしていたルワンダ人の友人から 「やっと正式な難民認定を受けた」という喜
-
-
「同志」タマキンさんに会う!
宮田珠己ことタマキング(逆か)と会う。 タマキンさんの『52%調子のいい旅』が幻冬舎文庫から出ること
-
-
トルコ・ワン湖の怪獣
> タカさんというUMA(未確認動物)ファンの方から、今話題となっているいろいろなUMAを紹介
-
-
酔って記憶をなくします
野宿泥酔の翌日は二日酔いにもならず、心身とも妙に快調。 そして翌々日、つまり今日も絶好調。 身体か
-
-
モガディショで宮田珠己
ソマリランド&ソマリアでは、いろいろな理由で暇な時間がひじょうに長かった。 とくにソマリアの首都モガ
-
-
日本のゲバラ、ここにあり。
新宿K's Cinemaで長谷川三郎監督のドキュメンタリー映画『ニッポンの嘘』を観た。 なんと今年
- PREV :
- 新連載開始?
- NEXT :
- 高野はぐれノンフィクション軍団に新メンバーが加入
Comment
記事と関係ないコメントを失礼致します。
読んでいるブログで高野さんの本が一斉にレビューされていて、なかなか面白かったです。
http://arabic.kharuuf.net/archives/1532
最近高野さんのことを知ったらしいですが、凄い勢いで全制覇しようとしています。
このブログの人も結構変な人です。
高野さんありがとうございます。
私はずーっと船戸与一先生のファンできた者ですが、不思議だったんてすね。
あんだけ血飛沫と、情念が弾け飛ぶ世界を描きながら、あの方の書く小説がいつも透明感を漂わせていることに。高野さんの柳生一族を読んで、先生の大人ぶりは解ったが、ますます混乱しました。
この度、徹夜で一気の再読後に、山猫の後書きを読んで、納得しました。凄くリアルに。
になみに大したこっちゃねえ…懐かしい。
昔、不夜城の馳さんがバーテンするバーで、早稲田の学生が船戸先生の作品を盗作だと言ったことあります。
書いた短篇が、豊浦志郎のルポの盗作だと。
奥で飲んでいた先生が、相手にしのいで、「大したことじょねえさ」と。
ファンの私は問題の本と短篇を調べ、尊敬してた先生が盗作したと幻滅しました。
後で調べたら、豊浦氏は先生のペンネームの一つでした。
ガキを、の言うことにいちいち動じる気がなかったのでしょうが、
高野さん含め、モノを作る方は、自己顕示欲強いと思うのです。
若造に盗作などと言われたら怒るでしょう?
あの晩を思いだしました。でも、ひょっとしたら照れていたのかな?とも思います。
山猫は船戸先生自身の投影な気がしました。
明るいニヒリストとして。